地方創生 〜アフターコロナの新しい形〜

政府や自治体、大学も取り組み 実装に入った地方創生

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企業版ふるさと納税 優れた活用事例を表彰

 2月1日、内閣府は東京・大手町の日経ホールで「企業版ふるさと納税に係る大臣表彰」を行った。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、今年はリモートで、受賞団体が取り組みをプレゼンテーションするとともに、審査員からは評価ポイントについてのコメントも寄せられた。

■挨拶

一億総活躍担当 まち・ひと・しごと創生担当

内閣府特命担当大臣(少子化対策 地方創生) 坂本 哲志氏

 政府は2014年に地方創生を最重要政策課題の一つとして掲げた。「第1期まち・ひと・しごと創生総合戦略」を定め、19年12月には第2期の総合戦略を策定。このたびの新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて昨年12月に改定版を策定し、新しい地方創生の実現に向けて政府一丸となって取り組んでいる。

 企業版ふるさと納税は、新たな民間資金の流れを巻き起こし、地方創生の取り組みを深化させることを目的として16年度に創設した制度だ。20年度の税制改正では、税の軽減効果を最大約9割に引き上げるなど大幅に充実させた。さらに昨年10月には、企業版ふるさと納税の人材派遣型も創設したところであり、より一層の活用が期待されている。

 本日は企業版ふるさと納税の活用促進を図る一環として、特に顕著な功績を上げ、他の模範となると認められる活動をした企業や地方公共団体を表彰する。この表彰は18年度から実施しており、今回で3回目だ。

 地方公共団体部門として埼玉県深谷市、岐阜県飛騨市、岡山県瀬戸内市を、企業部門として株式会社鹿児島銀行、株式会社ホクリクを受賞団体として決定した。本日の表彰を契機として、末永く地方公共団体と企業の間でパートナーシップを続けていただきたい。

 本日ご覧いただいている企業、地方公共団体の皆様においては、受賞団体の各取り組みを範として、本制度を一層積極的にご活用いただきたい。企業版ふるさと納税制度のますますの健全な発展と、地方創生の進展を祈念する。

■表彰式&プレゼンテーション


●受賞団体とプレゼンテーター

埼玉県深谷市 市長 小島 進氏 (地方公共団体部門)

岐阜県飛騨市 市長 都竹 淳也氏 (地方公共団体部門)

岡山県瀬戸内市 市長 武久 顕也氏 (地方公共団体部門)

鹿児島銀行 専務取締役 菊永 富広氏 (企業部門)

ホクリク 代表取締役 野口 研二氏 (企業部門)

社会貢献で地域活性を

 小島 深谷市は2019年度から、企業版ふるさと納税を活用した「郷土の偉人渋沢栄一顕彰×継承プロジェクト」を開始した。本市出身である渋沢の功績を知らしめ、ゆかりの施設を整備し、観光振興や地域活性化に結び付けるものだ。大河ドラマ館の企画・運営や旧渋沢邸の整備活用事業、展覧会・講座の開催などに取り組んでいる。

 新たな挑戦として「深谷ねぎのまちから日本の農業を変える3つのプロジェクト」も立ち上げた。アグリテックによる産業集積や、野菜がテーマの誘客促進、地域通貨導入推進による地域経済の活性化を図る。

 私が積極的に事業をPRするほか、企画課と事業担当課が協力・連携して寄付の募集活動を実施。寄付だけではない企業との長期的なパートナーシップを構築していきたい。

 都竹 飛騨市には宇宙物理学の研究施設「スーパーカミオカンデ」等があり、小柴昌俊博士、梶田隆章博士という2人のノーベル賞受賞者を輩出している。そこで道の駅「宙ドーム」を一部改修して、展示施設を整備することにした。

 多くの方々に理解してもらいながら事業を進めるべく、企業版ふるさと納税の活用を選択した。時間をかけて企業経営者らに丁寧にアプローチした結果、17社から約1億5000万円の寄付を集めた。「企業の思いが形となって残り、子どもたちに夢を与えられる」とのうれしい評価もいただいた。

 現在、市内に大学を設置するという構想が進んでおり、その支援にも企業版ふるさと納税を活用する。これからも本制度を活用し、地方創生やSDGsの実現を図りたい。

 武久 瀬戸内市は、備前刀の最高峰の国宝「山鳥毛(やまとりげ、通称:さんちょうもう)」を生まれ故郷の長船に里帰りさせる「山鳥毛里帰りプロジェクト」を実施した。

 瀬戸内市長船町を中心とした地域は、全国一の日本刀の生産量を誇っていたが、近年は製作技術の保存・継承の危機にあった。そこで山鳥毛を購入し、備前長船刀剣博物館で活用して地域振興を図り、また刀鍛冶の作刀意欲と技術向上につなげようと考えた。

 購入費用の5億円は、企業版ふるさと納税やクラウドファンディングにより調達すべく18年11月に開始。企業版ふるさと納税においては、約3億1200万円を集めた。私自身ビラ配りや企業訪問を行い、応援団の皆さん方が自らPRに努めていただいたことで、大口の寄付につながった。

 菊永 当行は地元に根差す地域金融機関として経営理念の一つに地域貢献を掲げている。日置市とは12年に包括的業務協力協定を締結。大手メーカーが工場撤退して多くの雇用が喪失されたことから、新産業創出の相談を受け、地方創生に取り組んできた。

 企業版ふるさと納税がスタートした16年以降、子育て支援事業や観光PR事業への寄付を実施。寄付だけなく、イベント会場の紹介など、地方公共団体の取り組みを側面から支援している。

 野口 17年に北海道東川町を訪問して、5年にわたって2億5000万円の企業版ふるさと納税の寄付をしたいと申し出た。当社と同町は縁もゆかりもない。きっかけは、町内の大雪旭岳源水源泉を訪れ、湧水に感動したこと。人口増加のために知恵と努力で現状を打開すべく一生懸命まちの方々が取り組んでいることを知り、寄付を決めた。

 その中で当社がお願いしたのは奨学金制度の充実だ。17年には5人だったところ、20年には134人に奨学金を受け取っていただいた。賃金が上がってこない中、企業が教育を支援することで、それぞれのご家庭や子どもに社会への希望が生まれてくる。住民に「町に協力しよう」という雰囲気が生まれてきており、それが今後東川町をより良くする原動力になると期待している。

■審査委員コメント

トラストバンク 会長兼ファウンダー 須永 珠代氏

日本政策投資銀行 常務執行役員 熊谷 匡史氏

京都産業大学 学長特別補佐・法学部教授 山田 啓二氏

官民協働の取り組みも

 須永 地域が活性化してきていることと、トップセールスの重要性を感じた。深谷市は、地域全体の総合戦略として渋沢栄一という軸があり、企業版ふるさと納税をうまく活用している。飛騨市もスーパーカミオカンデや大学など、未来に通じるところに企業版ふるさと納税を活用して投資しているところがすばらしい。

 瀬戸内市は情熱と行動で目標を達成している。鹿児島銀行は、銀行の業務だけでなく、地域の商社的な役割をしており、良い事例だ。

 コロナ禍で厳しい状況ではあるが、企業版ふるさと納税などを活用し、知恵と創意工夫で乗り切ってほしい。

 熊谷 深谷市が、若手起業家や起業を志す人などを対象に行っている「渋沢未来塾」で、寄付企業が、事業活動と社会貢献の両立の重要性について発信する点が良いアイデアだ。鹿児島銀行は、構想段階から地方公共団体と連携。グループを挙げて地域支援の姿勢を打ち出した。

 地域への共感で寄付に動いたホクリクの高い志に敬意を表する。企業版ふるさと納税にはこうした想定外を生み出す力がある。

 企業版ふるさと納税は、資金支援のみならず、地方公共団体と共にプロジェクトをつくることも可能だ。多くの企業に関心を持っていただきたい。

 山田 税の軽減効果が最大約6割から約9割になったことを機に、企業版ふるさと納税の裾野が一気に広がり、セカンドステージを迎えた。企業のCSR、ESGの指標としての役割も飛躍的に拡大してきた。

 そうした中、地方公共団体がいかに施策の魅力をアピールできるかが重要になってきている。関係性のない企業から寄付をもらうためのアピールは難しいが、熱意をもって行うことで、施策自身が大変よいものになっていくということを受賞団体から感じた。

◇ ◇ ◇

■企業版ふるさと納税概要

 2016年度に創設された企業版ふるさと納税は、国が認定した地方公共団体の地方創生プロジェクトに対し企業が寄付を行った場合に、法人関係税から税額控除する仕組み。

 2020年度税制改正では、税の軽減効果を最大約9割まで引き上げるとともに、地域再生計画の認定手続きの簡素化など、大幅な見直しを行った。

■企業版ふるさと納税(人材派遣型)概要

 企業版ふるさと納税の仕組みを活用して、専門的知識・ノウハウを有する企業の人材の地方公共団体等への派遣を促進することを通じて、地方創生のより一層の充実・強化を図るため、2020年10月13日に「企業版ふるさと納税(人材派遣型)」を創設した。

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