地方創生 〜アフターコロナの新しい形〜

暮らしがまちを変える 実装に入った地方創生 具体的事例から考える持続可能な経済循環

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 進む高齢化、人口減少は日本が直面する課題であり、地方ではより深刻さを増している。日本経済新聞社とUR都市機構は2月1日、東京・大手町の日経ホールで日経地方創生フォーラムを開催。「地方都市再生の実現に向けて」をテーマに、識者が講演・議論した。なお、本フォーラムは新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から一般の来場を中止し、ネットを通じて会議の模様を配信した。

■基調講演

小諸版ウエルネス・シティ ~小諸からはじめる地方の時代~
長野県小諸市長 小泉 俊博 氏

未来つくる人材が集結

 長野県東部に位置する小諸市は、ワイン製造が盛んで、医療体制が充実している等の特徴がある一方、人口減少は深刻だ。「小諸版ウエルネス・シティ」は、課題解決の施策であり、「健康に限定されないウエルネス」「ウエルネス・サードプレイス」を軸に、選ばれるまちを目指している。

 自宅でも職場でもない「サードプレイス(第3の場所)」展開では、地元名産の味噌や日本酒、ワインなど、醸造文化を生かしたツーリズムがある。近隣自治体と連携し、千曲川ワインバレー特区でのプレミアムワイン振興にも取り組む。

 生活基盤整備の展開である「ネットワーク型コンパクトシティ」は、都市機能をまちの中心部に集約し、居住を誘導して歩いて暮らせるまちづくりを目指している。これは国交省が推進する地方都市リノベーション事業第1号にも採用された。デマンドタクシーを展開中だが、午前中に利用が集中する等の課題も見えてきた。関係人口と定住人口の創出も大事なテーマになる。様々な特典が付く「小諸ふるさと市民」や、ふるさと納税などで関係人口創出に努めている。

 今日では、未来をつくるユニークな人材が小諸に集まってきた。昨年12月には無添加化粧品会社の工場が竣工したほか、世界レベルのジャパニーズウイスキー蒸留所の建設も決まるなど、選ばれるまちとしての進化が始まった。サードプレイスを意識した小諸版ウエルネス・シティを旗印に、アフターコロナを見据えたまちづくりに取り組んでいる。

■基調講演

官民連携による福山駅周辺の再生
広島県福山市長 枝広 直幹 氏

まちの再生、官から民へ

 福山駅周辺の再生への取り組みは2016年に行政主導でスタートし18年にビジョンを策定。働く・住む・にぎわいが一体となった福山駅前という概念を共有し、官民連携で取り組むことを基本方針とした。

 駅北側の福山城と南側の中央公園を核に居心地が良く歩いて楽しいまちを目指している。良質な民間投資を呼び込むためデザイン計画では、人が集まる6拠点とそれをつなぐ通り周辺をウォーカブルエリアに設定。民間の取り組みでは、まちづくり会社が3社設立。空き物件を活用したリノベーション事業、三之丸町地区の旧大型商業施設の再整備も進める。行政主体では、福山城築城400年記念事業として天守の復元、中央公園の公募設置管理制度(Park―PFI)導入等を行う。また大型商業施設(エフピコRiM)の再生では大規模投資を伴わないリノベーション手法を選択した。

 URとの連携では、デザイン計画の具体化の検討を行っている。URが土地を取得し、建物は民間が取得してリノベーションを施す取り組みや、ウォーカブル都市実現に向けた実証実験も連携して行った。

 まちの再生は、行政主導でビジョンを分かりやすく示すことで民間の動きが活性化する。方向性を決める枠組みと志のある民間プレーヤーの発掘、マッチングできる枠組みもポイントになる。今後は行政主導から民間主導へ転換し、新たな民間投資を呼び込み、駅前広場の機能見直しにも着手したい。

■共催者挨拶

UR都市機構 理事長
中島 正弘

まちづくり 共に考える

 URが地方創生というテーマでシンポジウムを開催して3年目になる。今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響もありリモートでの開催となったが、一方で、より多くの人にオンライン視聴してもらう良い機会となった。

 URと共に地方創生に取り組んでいる長野県小諸市および広島県福山市の両市長は、リーダーシップを発揮され、市民と連携して地域の活性化を進めており、基調講演は大変参考になった。

 パネルディスカッションのテーマである「空間」「人」「IT」に関する議論は、団地経営に携わるURにとっても大変参考になるものだった。URの団地経営は成熟し、まちづくりという局面に入っており、この議論を今後の団地経営にどう生かすかが重要と認識している。

 地方都市の再生に向けて、我々は市長や市民と共に考え、一緒に勉強して進んでいくという気持ちで取り組んでいきたい。そのなかで、地元のプレーヤーを見つけ、力を発揮してもらうことが何よりも大事なこと。これからも地方都市再生のために力を発揮していきたい。

■プレゼンテーション

地方都市再生の実現に向けたURのまちづくり支援
UR都市機構 地域活性化推進役 堀井 伸也

新たなニーズ見据えて

 URでは、人々の暮らしを支えるまちづくり・住まいづくりを進めてきた。

 小諸市を含む「地方再生コンパクトシティ」のモデル都市の支援をはじめ、福山市では「地域経済の活性化」に向けて、地域に人と投資を呼び込む環境整備に取り組んでいる。長野県では、「公・民・学が連携」した「信州地域デザインセンター」への参画を通じて県内市町村を支援するなど、地域の状況や特性に応じて、様々なツールを駆使しながら、地方都市再生を推進している。

 また、コロナ禍によるライフスタイル・ワークスタイルの変化に伴う新たなニーズを今後のまちづくりに反映すべく様々な試みを重ねている。

 URは、国の政策との連動、地域経済の活性化、多様な主体との連携に加え、コロナ禍による変化も見据えながら、地域の皆様と共に考え、行動し、時には悩みながら、全力でまちづくり支援に取り組んでいく。

■パネルディスカッション

 地方都市・地域の現在地点からのまちづくり ~多様化する時代のヒト×IT×空間のマネジメント~

●パネリスト

ハートビートプラン取締役/日本都市計画家協会 理事 園田 聡 氏

アクセンチュア・イノベーションセンター福島センター共同統括 
マネジング・ディレクター 中村 彰二朗 氏


青梅市/あきる野市五日市タウンマネージャー 國廣 純子 氏

●コーディネーター

UDCイニシアチブ 理事 三牧 浩也 氏

多様なニーズに寄り添う

 園田 都市の魅力を上げるには公共空間の質の向上が重要だ。コロナによるテレワークは、生活圏域の質を見直す機会となった。これからの都市計画は利用者の潜在的なニーズを把握し、誰が活用するのか想定してから空間の在り方を考えることが必要だ。

 中村 震災復興を目的に会津若松市に移住、スマートシティ化に取り組んでいる。IT(情報技術)人材育成から地方創生、生産性向上へとテーマが移行してきた。コロナを機に分散が進み、住民のビッグデータ共有、データに基づく政策決定への移行がカギになる。

 國廣 青梅市は都心から50キロ離れた西多摩エリアにあり、昔ながらの建物が残る町だ。大企業の事業所撤退などの逆風もあったが、公民連携の中心市街地活性化協議会を軸にまちづくり組織設立や空き店舗対策に取り組み、あきる野市五日市では渓谷暮らしを訴求した事業を展開中。市街地再生には仕組みやイメージづくり、エリアマネジメントが重要となる。

 三牧 UDCは公民学連携プラットフォームで、まちに関する多様な主体が連携し合いプロジェクトを進めている。効果的に公共空間を活用する上でのポイントを聞きたい。

 園田 広場は住民の生活動線を観察して造る必要がある。既に訪れる動機がある場所に付加価値を与えることが要である。

 國廣 青梅では市街地の駐車場で毎月マルシェを開催している。同世代が楽しげに事業に関わる場所に開業する流れが出てきている。

 三牧 コロナの影響でサイバーとリアルの関係に変化が出てきた。リアルの価値も再認識されている。

 中村 スマートシティでは市民の情報などのディープデータが重要になる。まちのPRでは相手が望むコンテンツを提供すべきだ。会津若松市では地域プラットフォームを構築し産官学民が連携して運営しているが、まちづくりの中心はあくまでも市民である。

 園田 空間活用は評価指標が難しい。経済以外の価値をどう評価するかは課題となっている。例えば豊田市の駅前広場では活動の多様性を数値化した。

 三牧 人を巻き込み、育てる上での工夫はあるか。

 國廣 地元住民の当事者意識の醸成と、移住者や来訪者を増やすためのマーケティングは明確に分けるほうがいい。青梅市では町の噂とSNSの情報がかみ合い、正確な情報がシェアされるようになってきている。

 中村 スマートシティでは人が中心になる。地域をみんなでつくる「デジタル民主主義」の考え方がカギになる。情報ポータル「会津若松プラス」には昨年度約8万9000人がアクセスした。15分圏内の情報がすべて手に入るようなサイトである。

 三牧 地域住民が本当に知りたい情報を提供することがポイントになる。

 園田 空間利用では新しいコミュニティーとの関わりも増えている。例えば路面が硬くて人が寄り付かなかった場所はスケーターにとっては価値のある場所となった。また、空間利用の合意形成では、利害を持つ人を選定し範囲を分割したほうが合意を早く得やすい。

 三牧 官民連携によるまちづくりと、URへの期待について聞きたい。

 園田 官民の双方が得意分野を発揮することが大事。URのような中間支援は立ち上げの部分で必要だと感じる。

 中村 会津ではデジタル環境が整ってきた。まちづくりのリアルな部分を担うURのような組織と連携する時期にきた。

 國廣 地域主体による投資のスキル面で課題があるため第三者機関の支援に期待している。

 三牧 様々な人が対等な立場で関わることのできる新しいガバナンスの仕組みをつくる上で、URへの期待も大きい。

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