90日で成果をだすDX入門

DXに近道なし 事業再定義し顧客体験の追求を Kaizen Platform CEO 須藤 憲司

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 この連載では書籍『90日で成果をだすDX入門』(日本経済新聞出版)をもとに、現在企業にとって喫緊の課題となっているDX(デジタルトランスフォーメーション)推進について解説します。DXが必要になった背景や推進にあたって最も大切にすること、その進め方などを2回にわけてご紹介します。今回は後編です。

データはいったい誰のものか?

 デジタル技術が個人をエンパワーメントする以上、扱う「人」が何よりも重要です。たとえば、アメリカのトランプ大統領は、かつてないほどにSNSを熟知した政治家の一人でしょう。数々の問題はあれど、結局は個人が国家をデジタルでハックすることさえ可能なのだと学びました。

 SNSを運営するFacebookはもとより、Amazon.com(以下、Amazon)やGoogleなどプラットフォーム企業のパワーが強くなっているという話は、すでにみなさんご存じの通りです。その背景には、サービスの利用によって取得したデータが、それぞれの企業に帰属し、再活用できる点が大きかったといえます。

 ところが、EU諸国で適用されたGDPR(EU一般データ保護規則)は、この状況を大きく変えました。詳細はここでは省きますが、本来的に個人のデータは企業のものではなくユーザーのものであることを明示したのです。いわば「ユーザー主権主義」の立場を取ったともいえるでしょう。

 GDPRが「データはユーザーのものである」と認めたとき、それに逆らえる概念はありません。非常に強固かつ普遍的な考え方で、外界から影響されない「ロバスト性(頑強性)の高さ」を感じさせます。

 国家はもとより、プラットフォーム企業も、ユーザー主権主義に変わっていく。この流れは止められません。どの国家も、どの企業も、ユーザー主権主義を認めざるを得ないと思います。これまで、データを持つ企業が強くなりすぎたことに、国家が反発した例ともいえます。

 ユーザー主権主義になったとしても、プラットフォーム企業が弱体化するかというと、決してそんなことはないはずです。むしろ、私はより強くなっていくと考えています。この議論はここでは脇に置いておきます。大事なのは、変わりゆく「ユーザー主権主義」について、多くの日本企業がもっと理解しなければならないことです。

「囲い込み」はもう行えない

 日本企業の経営会議に、私も参加する機会がしばしばあります。そこでよく出る話題が顧客の「囲い込み」です。私はその言葉を聞くたびに、こんなふうに発言するようにしています。「この中で囲い込まれたい人がいたら手をあげてください」と。みなさん、すごくキョトンとした顔をされるのです。

 つまり、自分は囲い込まれたくないにもかかわらず、なぜ他人を囲い込めると思ってしまうのでしょうか。そして、苦労して囲い込んだとしても、そこで何をしているのでしょうか。せいぜいが、セール情報やポイント獲得のダイレクトメールをたくさん送ったりするくらいが関の山のはずです。まさに「釣った魚に餌をやらない」ような施策です。

 そういった場所へ、これからのユーザーは自らのデータを預けたいとは感じなくなってきます。つまり、ユーザーは囲い込めないどころか、ユーザーから選ばれ続ける会社にもなれていないのです。ユーザー主権では、ユーザーに対してすぐに、簡単に退会していく手段を提供しなければならないのですから、現在保有している会員基盤もあっという間に減っていくことを想定しておく必要があります。これが「ユーザー主権主義」による変化の本質です。

 「ユーザー主権主義」になって難度が増したこともあります。それは良い顧客体験を設計しないと、ユーザーと接点を持ち続けることができなくなることです。

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