日経SDGsフォーラム

街づくり 水と緑と共生 豊かな自然環境、イノベーションの源

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 三井不動産の企業理念を象徴するのが、英語の「&(アンド)」をデザインしたロゴマークだ。「共生・共存」「多様な価値観の連けい」などの意味が込められているという。SDGs(持続可能な開発目標)の考え方は早くから同社の経営に根づいてきた。自然や地球環境と共生・共存しながら、便利さや快適さとともに潤いや趣のある街づくりをめざす。

日本橋再生計画 SDGsに直結

 三井高利が1673年に呉服店を開いて以来、東京・日本橋は三井グループにとって特別な場所だった。日本の中心と言われた頃の輝きを取り戻そうと三井不動産が1990年代後半、官民地元一体で始めた再生計画。その第3ステージが昨年、スタートした。

 軍艦ビルとも呼ばれ威容を誇った野村証券の旧本社建物。そこも含めたエリアに高層ビルが建つ。2021年度に着工、25年度に完成する予定だ。日本橋川の上を走る高速道路の地下化も見すえ、川岸も整備、川を楽しめる魅力ある場所にするという。

 「残しながら、蘇(よみがえ)らせながら、創っていく」。日本橋再生計画のコンセプトはSDGsの考え方につながる。ふるく平安時代からあるという福徳神社の再建はその一つの象徴だろう。境内で静かに手を合わせる人がいる。雑木林に囲まれた広場では、子ども連れや会社員がくつろいでいる。最新の高層ビルのはざまにこうした空間をあえて置き、人の絆や自然との共生を感じながら、豊かに過ごせる街をめざした。

 「新型コロナウイルスの感染拡大でわかったのはオープンエアー、外の空気の大切さ」。菰田正信・三井不動産社長はそう話す。街に水と緑をどう取り込んでいくか。こうした視点は街づくりでますます重要になる。東京ミッドタウン日比谷(東京・千代田)では6階に空中庭園をつくり、仕事もできるようにした。日本橋に新たにつくる高層ビルにも大きな庭を配置するという。川辺の整備が進み、水都・日本橋が再興されればより潤いが増すだろう。

 豊かな自然環境のなかで暮らし働いてこそイノベーションにつながる。日本橋から電車を乗り継ぎ40分余りの場所にある柏の葉スマートシティ(千葉県柏市)では、「環境共生」「健康長寿」に加え「新産業創造」をテーマに掲げる。再生可能エネルギーを活用し地域での創エネをめざす一方、国立がん研究センターと協力して手術後のリハビリができる宿泊施設などを整備する。一方で専門家によるスタートアップの支援体制やネットワークも築き、豊かな未来の創造に向けて産業を育成していく。めざすのは世界の課題を先取りして解決する街だ。

 革新と伝統、開発と環境、こうした価値観をどう連携させていくか。SDGsの視点を抜きに今後の街づくりはあり得ない。

(編集委員 橋本隆祐)

 「&」の理念、多様な価値観つなぐ――
 企業ロゴの「&(アンド)」マークは創立50周年の1991年に採用しました。「開発」と「環境」など一見すると対立する考え方を両立、共存させていく。そんな思いを込めています。三井不動産の経営理念にはサステナビリティー(持続可能性)の思想が深く根付いています。

 不動産会社の役割は、その時々の社会や人々のニーズに街づくりを通して応えていくことです。高度成長時代、都心部に人や機能が集中するなかでいち早く超高層ビルを建て、貿易立国に向け港湾に近い土地が必要になった際には、臨海部の埋め立て開発を手がけました。
 日本はいま成熟社会を迎えています。モノが充足し便利さや快適さが満たされると、人は何を求めるでしょうか。例えば歴史や文化です。日本橋の再開発ではそうした点を意識し、一つ裏通りに入ると江戸の町家の雰囲気を感じられるような趣のある街づくりに努めました。
 東京駅近くの八重洲の方まで開発地域が広がっています。日本橋川の上を走る高速道路が地下に入って完成と考えると、約半分が終わった段階でしょうか。かつて五街道の起点で日本の中心だった日本橋を「未来に続く街道の起点」として世界に発信していきたいです。
 新型コロナウイルスの感染症は企業に様々な課題を突きつけました。当社も抗菌や非接触、換気機能などを活用し、感染防止に全力を尽くす一方、大事なパートナーであるテナントの方々、最前線でウイルスと戦う医療従事者の方々への支援に努めました。
 企業は利益を追うだけでなく、地域住民とも連携し社会的な責任を果たしていく必要があります。そうしてこそ企業も持続的に成長できると考えています。

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