楽しい職場学

まね・型・メモ オフィスの笑いは語学のように学べる 西武文理大学サービス経営学部専任講師 瀬沼文彰

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 コロナ禍には、笑うことそのものがリスクとなってしまった。対面のコミュニケーションでは、マスクをしていても笑うと飛沫感染のリスクがある。大笑いはなおさらだ。また、ビジネスマンにとってオフの場で、よく笑う場、それは居酒屋だと思うが感染リスクの高さから自粛要請の対象となってしまった。

コロナ禍こそオフィスに笑いを

 本当に笑いは不要なのだろうか。これまでもこの連載で論じてきたように、笑いは、働く際の楽しさを生む。人間関係の潤滑油として活用もできる。各自のモチベーションを上げたり、絆を形成したりする。心理的距離安全性を高めたり、個人のストレスの発散につながったり、場合によっては生産性やイノベーションとも関連する。コロナ禍でテレワーク時やオフィスワーク時にストレスをためるビジネスパーソンは少なくない。こんなときこそ、安全・安心を心がけた笑いを組織のなかでいかしたい。

 しかし、「笑いをもっと自分の組織に取り入れよう!」と思っても、「笑いのスキルはセンスの良しあしで決まっている」と考えてしまう人が多いのではないだろうか。

 元芸人の立場として、また、コミュニケーションの研究者として断言したいが、笑いもコミュニケーションもセンスでは決まらない。意識することで笑いのセンスは磨かれるもので、努力をしている人としていない人とでは差が出るものだ。

 むろん、これから組織を退き、お笑い芸人を目指すのであれば、センスも多かれ少なかれ必要かもしれない。だが、磨いてみることで笑いは、日常生活や職場で活用することができるようになる。本連載では、「お手本はよしもと新喜劇 笑いの共創が生む組織活性化」(2020年2月5日付)で、笑わせることよりも、日常や相手の話のなかに面白さを見つけることの必要性について論じた。

 その重要性は改めて主張しておきたいが、組織や日常生活、オンラインの場で笑いを操るためには、他にはどんな方法があるのだろうか。今回は、笑わせる力やセンスを上げるための3つの学び方を提案してみたい。

シャドーイングの要領で

 まずは、コミュニケーションは、言語の習得がそうであるように、模倣が第一に重要になる。書くというコミュニケーションである文章も見本をまねることの重要性はこれまでにも様々な作家が述べている。語学でもそうだろう。近年はネーティブの話をなぞるシャドーイングは語学力向上のための近道として定着してきている学び方だ。私が、大学の授業で担当しているプレゼンテーションもうまい見本となる人を見つけまねる。演じられる学生からガラっと変わっていく傾向にある。

 笑いのスキルも同じだ。テレビであれば録画ができる時代、1人決めたら、話し方、テンポ、オチの言い方、たとえ方、ボケ方やツッコミ方、その際の表情、手ぶり身ぶりなど何度も見てその人の特徴をまずは研究することが重要だ。その際、笑いの前後に注目しがちだが、その人の笑いとは関係のない話や周りの人の話の聴き方などもしっかりと研究できるとよりよい。いまの時代は、YouTubeもあり、巻き戻しや繰り返し見るなど手軽に研究できるという意味では非常に恵まれている。文字化してみたり、特徴をまとめてみたり、誰かとそれを一緒にみて議論してみたりしてもいい。

 笑いということで、芸人をまねることも重要だが、必ずしもテレビに出演している芸人である必要はない。テレビには出ない落語家もいいだろう。個人的には、自分の年齢に近い落語家の話し方や間の取り方はとても参考になり、学ぶことが多い。図書館に行けばDVDなども多く貯蔵されているはずだ。コロナの感染リスクが下がってきたら生の寄席に笑いに行くのではなく、所作などを研究しに行くのもいいだろう。とにかく研究してまねられるところを日常生活や職場や新しい人との出会いの際に、少しずつ取り入れていき、自分なりにPDCAのサイクルを回してみることからはじめると、徐々に変化に気づくことができるはずだ。

 また、必ずしも有名人である必要はない。職場にいる笑わせ上手、ユーモアセンスの高い上司や同僚でもいいだろう。その場合、研究すべきことで忘れてはならないのが、その人のまじめなモードのときの話し方やあいさつの仕方や初対面の人への話し方や周りへの気遣いである。

 笑いのセンスは、個人の能力として語られる傾向にある。その面も否定はしない。しかし、笑いは誰かとの関係性のなかで生まれることが多い。嫌いな人がどんなに面白いことを言ってもきっと多くの人は笑わない。どんな関係性を普段から周りの人と築けているかは笑わせられるかどうかと大きく関わる。芸人は、そんな部分を非常に気にするため、芸そのものよりもあいさつこそが重要だということは芸人時代、私も徹底してたたき込まれた。

 隙間時間に見るテレビや動画サイトで楽しみながら、自分にとっての見本探しから始め、笑いを学び、組織で活用することを目指してみてはどうだろう。

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