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まね・型・メモ オフィスの笑いは語学のように学べる 西武文理大学サービス経営学部専任講師 瀬沼文彰

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笑いのパターンを覚える

 次に面白いことを言えるようになるための方法として紹介したいのは、お笑いを生むためのメソッドを理解することである。

 お笑い芸人は、基本的には、ネタ作りから始まる。お笑いの養成所では、ボイストレーニングやダンスなども取り入れているが、メインはやはりネタ作りで、それに対してダメだしを構成作家やテレビ関係者からもらえる。

 ネタ作りは何のために行うのだろうか。それは、「引き出しづくり」である。笑いのパターンの引き出しを作ること、その引き出しにたくさんの笑いのパターンを入れることで、それをアドリブに応用する。

 何気ない話の際にオチを付けたり、自分のエピソードを上手に構成してすべらない話のように見せたり、プレゼンのなかに内容と関連した笑いを取り入れたりする。これらを実践するためには、まずは、引き出しにたくさんの笑いのパターンを入れることが第一歩となる。武術などで言えば、型を覚えてそれを応用していくということになるだろう。笑いでも型はとにかく大切だ。

 では、ネタ作りを推奨するのかといえば、そうではない。さすがに、働きながら日々お笑いのネタ作りは時間的なコストもかかり、あまり現実的ではない。おすすめしたいのは、小噺(こばなし)に触れていくことである。

 特に、ジョークなどが活字化されているものがよい。小噺やジョークは、Web上で検索すれば無数に出てくる。あるいは、図書館などで調べてみると書籍としても様々なものがまとめられ出版されている。語学で言えば、これもコーパスを活用する方法と似ているように思えてならない。ちなみに、私のおすすめは、立川談志が世界中から集めた1012話のジョークが収録されている書籍『家元を笑わせろ』である。

随分酔ってるね。歩いて帰れるかい
お巡りさん大丈夫です。車がありますから
(p.226)

先生、近ごろ物忘れがはげしくて……
いつごろから……
……何の話ですか?……
(pp.313-314)

朝刊、朝刊、32ペニー!
新聞を買った男が、
おい、新聞には20ペニーと書いてあるじゃないか
あなたは、新聞に書いてあることはみんな本当だと思っているようですネ
(p.550)

 文章で読んでも、面白さは伝わりにくいかもしれないが、文字は暗記と相性がいい。こうした短めの小噺に複数触れていくことで、自分のなかに「笑いを作るための方程式」ができあがってくる。

 その方程式が取引先での名刺交換の際や、何気ない会話、飲みの場、オンライン会議での雑談などでアドリブとして応用する手助けとなる。もちろん、パターンを理解しているとプレゼンのように事前に考えを練る際に笑いを混ぜてみることも可能になるはずだ。

 このジョークの良い面は、笑いのパターンを知ることでもあるが、日本の身内ウケの笑いのパターンを乗り越えていく点でも重要だと私は考えている。日本では、どちらかといえば、親しくなってから、その人のこと(その人のキャラ)を理解してから笑いが生まれることが圧倒的に多い。実は、お笑い芸人もテレビを通じて身内空間を先行して作り、自分を知ってもらい、その後、笑いを作ると指摘されることもある。

 つまり、あまり親しくない人に向けて、一緒に笑うための冗談というのは少ないということだ。欧米では、笑いを活用して自分の性格をアピールしたり、知らない他者との共通事項を探ったり、共通点を明らかにして親しくなっていくために活用されている。しかし、日本ではビジネスで利用できそうなことなのにそれらがあまりない。そのため、本稿で紹介したように誰にでも分かりやすい小噺や冗談を暗記し、話のオチや構成に応用・利用してはどうだろう。誰かと距離を縮めるためには分かりやすく、「今笑うところだ」と理解できる笑いが通用しやすい。また、笑いそのものも、身内ウケ以外に適応するためのアップデートをするためには、冗談のパターンを知ることでそれを自分の話にいかすことから始めてみてはどうだろうか。

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