SDGs時代のパーパスブランディング

Dove・AXE…欧米ブランド、ジェンダー平等へ10年の歩み ブランドストラテジスト 大橋久美子

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 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会前会長の森喜朗氏による女性軽視発言をめぐる騒動では、マジョリティー側にいる多くの日本企業の経営陣は森発言の何が問題だったのか腹落ちしていない方が多かった。そんな方々のことを、グローバルと比較した時に恥ずかしい、古すぎるというのは簡単だ。

 とはいえ、今日本人からみるとジェンダー・フェミニズム先進国と思われるアメリカやイギリスも、この領域に関して、ものすごく進んでいたわけではない。正直、10年以上前だったら、森発言はここまで海外でも批判を浴びなかったかもしれない。第4波フェミニズムと言われる2012年以降、数々の炎上も起こり、あっという間にブランドに取って取り組まざるを得ないテーマになっていった。

 今回のコラムで伝えたいことは2つ。日本のジェンダー意識は確かに遅れている。それは事実として受け止める必要がある。だけれども、そんなに悲観することはない。私が常々思っているのは、欧米だってこの10年で急速に変わってきたのだから、日本も急に変わるんじゃないかということ。

 実際、日本ではこの1年で急速にブランド側の意識変化が見られ始めている。森発言への批判を受けて、この変化は爆発的に加速していくと予想されることから、改めて欧米企業がこれまでジェンダー・フェミニズムにどう取り込んできたか振り返りたい。女性らしさだけでなく男性らしさというステレオタイプにもチャレンジしてきたブランドたちを紹介する。

■「画一的な美しさ」へのチャレンジ―――Dove (スキンケアブランド)

 女性むけのパーパスブランドのはしりがユニリーバのDove。細くなければ、白い肌と艶々煌(きら)めく髪でなければ……そんな非現実の美しさを押し付けられた女性たちは「自分は美しくない」と感じて自己肯定感をなくしてしまうのに対し、Doveは「あなたはあなたのままで美しい。あなたに足りないのは自信だけ」という自信を促すことをパーパスとしている。

 2013年の「リアルビューティー スケッチ」のキャンペーンはご存じの方も多いだろう。米連邦捜査局(FBI)の似顔絵捜査官が描いた、本人が語った特徴をもとに描いたものと、第三者が語った特徴をもとに描いた二枚の女性の似顔絵が明らかにするのは、「あなたは、あなたが思っているより美しい」ということ。

 最近のDoveは、「MyBeautyMySay(自分の美しさは自分が決める)」と、よりポジティブなメッセージへシフトしているが、一貫して自分らしいありのままの美しさを応援するということは変わらない。コロナ禍においては、医療従事者をたたえ応援する“Courage is beautiful (勇気は美しい)”というムービーを公開するとともに、医療用資材を無償提供。Doveらしい支援を行っている。

■「女の子らしさ」へのチャレンジ―――Always (生理用品ブランド)

 生理用品ブランドのAlwaysが、“Like A Girl”というメッセージを打ち出したのは2014年。

 思春期までは “女の子らしく”という言葉を“自分らしく”という意味に捉えていた女の子たちだが、思春期をすぎると、世間が思う“女の子らしく”という型に自分を無理やり当てはめてしまう。スポーツをやめてしまったり、理数系の勉強をやめてしまったりするのもその頃。Alwaysは“Like A Girl ―女の子らしさ”という言葉にあった侮蔑的な意味に着目し、ちょうど生理が始まる時期でもある彼女たちをその呪縛から解き放ち、ありのままの自分で自信を持って過ごすことを応援、理数系の勉強やスポーツの継続をサポートするような活動を継続的に行っている。

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