SDGs時代のパーパスブランディング

Dove・AXE…欧米ブランド、ジェンダー平等へ10年の歩み ブランドストラテジスト 大橋久美子

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

■恐れを知らない少女―――ステート・ストリート・グローバル・アドバイザース(金融会社)

 NYウォール街の「チャージングブル」。何かに体当たりして攻撃しようとする雄牛は、「ウォール街の力」「アメリカの力」といったマッチョな価値観を象徴する存在だ。2017年3月8日。国際女性デーの日に、その雄牛の前に「フィアレスガール(恐れを知らない少女)」の像が設置された。雄牛をたじろぐことなく真正面から見つめる健気な少女の姿は、役員比率や給与の不平等の残る男性優位な金融業界において、自分を信じる力によって未来が切り開けるのだと女性たちを勇気づける象徴となったのだ。多くの観光客がこの場所を訪れ、「フィアレスガール」とともに写真を撮り、その様子はSNSやニュースを通じ世界中に広がっていった。そして女性たちをポジティブにエンパワーするとともに、話題を喚起し、「性別の多様性を実現するために女性役員・要職の比率が高くしている企業に投資する投資信託」の株価指数の増加も牽引したのである。まさにブランドが、ひとつの銅像を通して、世界を変えたのだ。

■お金のパワーを女性たちに―――Ellevest(女性向け投資顧問)

 これまでの投資プラットフォームは、男性による男性のためのものだった。アメリカでも、お金の話を女性がするのは下品とされているということもあり、女性たちは自分から問いかけるよりも、男性のファイナンシャルアドバイザーの知見をベースとした一方的なアドバイスを受けることになるわけだが、しかし、女性は、男性よりも長寿だし、賃金やキャリアのあり方も違うため、そのアドバイスに違和感を持つこともある。そのため、女性たちはますます投資に消極的になってしまう。

 お金はパワーなのに、女性たちがそのパワーを使いこなせていない。Ellevestは、女性のお金という課題を解決するためのブランドとして誕生した。女性のキャリア・退職のプランと合わせて、より多くのお金を手にすることができるようにするAIソリューションを提供している。“Ellevest was built by women, for women. The financial industry wasn’t(Ellevestは女性によって、女性のために作られた。金融業界は違ったので)”という、ただただターゲットが分かりやすいメッセージが印象的。そして女性ためのインベストメントという意味を込めたブランド名(フランス語の彼女であるElle + investmentのvestから)も分かりやすい。

ブランドは未来を変えるために立ち上がる

 2016年、ユニリーバは、全ての性的ステレオタイプを広告から排除すると決定。「今の消費者の思考回路に迎合するのではなく、世界をより良い場所にしていくために広告の力を使いたい」と、当時のチーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)だったキース・ウィード氏は語った。

 日本企業のジェンダー・ダイバーシティに関する意識は今後急速に変わる。いや変えていく必要がある。ブランドも、個人としても、「今の思考回路に迎合」してはいけない。ステレオタイプは有害なものであり、未来のためにならない。私たちは、次世代のためにより良い未来を作ることへの責任がある。特に、マジョリティー側の方々に、そして、企業価値を上げていきたい経営陣の方々に、その認識を持って、時代の変化をリードする自覚を持っていただきたいと思う。

大橋 久美子(おおはし・くみこ)
Office Story Branding(ストーリーブランディング)代表。博報堂、J. Walter Thompson(JWT)、LIFULLを経て、ブランド戦略立案を行うブランドストラテジストとして独立。 JWT時代にはブランディングモデル“Brand Nurturing”を開発、多くの日本企業のブランド戦略構築に導入した。 現在は消費者インサイトと未来創造をつなき企業価値を上げるための新たなモデル開発や戦略立案活動を行っている。女性エンパワーへの活動により、2019年campaign Asia誌 Women leading change Vision leader部門のシルバーを獲得。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。