SDGs時代のパーパスブランディング

Dove・AXE…欧米ブランド、ジェンダー平等へ10年の歩み ブランドストラテジスト 大橋久美子

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生理現象のオープン化でタブー打ち破る

 体毛や月経は普通の生理現象なのにもかかわらず、女性は身だしなみとしてムダ毛処理したツルツル肌を求められ、経血も隠さなければならない。自然現象なのにないもののように隠さなければならないことに対するチャレンジは次第に高まり、ニューズウイーク誌が「生理の年」と評した2015年には、経血がついたスウェット姿の写真を削除したインスタグラムや、タンポンへの課税に対して、女性たちがNOという声を上げ出した。

 こうした生理現象のタブーを打ち破り自然なものとして受け入れること促すブランドが増えてきた。

 女性用シェーバーブランドBillieは「ムダ毛はそらなくたっていい、でも剃らなきゃいけない時にはBillieがある」というメッセージを発し、生理用品ブランドのBodyformは「Blood Normal(経血は普通)」とセンセーショナルに打ち出し、ドイツではなぜかぜいたく品の位置付けで消費税率19%となっていたタンポンを書籍として7%の税率で売り出す「Tampon Book」が登場。男性優位の社会の中で理解が得られず葛藤していた女性たちから、これらは強い共感を獲得した。

 この1、2年で、日本でも、「日経ウーマンエンパワーメント広告賞」のアンステレオタイプ広告賞を獲得したユニ・チャームのソフィ(生理用品ブランド)や、貝印などの大手企業が生理現象をオープン化するためのメッセージを発信し始めた。貝印は昨年8月に「ムダかどうかは、自分が決める。#剃るに自由を」というコピーと、女性モデルがワキを堂々と見せる驚くべき広告で、あっという間に女性たちに拡散した。実はこの女性はバーチャルモデルだという裏話とともに。

男性も「男らしさ」からの解放を

 男性用デオドラントブランドのAXEは、男らしさを再定義するための広告を行った。

 男なのに痩せてていいの?男なのにスポーツが下手でいいの?男なのに男性を好きになっていいの?男なのに落ち込んでもいいの?男なのにピンクを着ていいの?これらは全て、現実的に検索エンジンで質問されているものだという。それだけ多くの男性たちが、自分は世の中の「男らしい」の基準に合っていないのではないかと不安に感じているということなのだ。押しつけられた「男らしさ」の基準なんて必要ない、自分らしくあればいい、ということをAXEは伝えている。

 今、「男らしさ」「男らしくあらねば」という思いが、女性を苦しめているのはもちろんのこと、実は男性自身をも抑圧していること、つまり「男性らしさは毒である(Toxic Masculinity)」という理解が広がり始めている。ジェンダー平等やフェミニズムというと女性の権利だけを主張しているように思われていたかもしれないが、ありとあらゆる人々がジェンダーによる不自由さから解放され、自分らしく生きられること、それがジェンダー平等が目指すことなのだ。そして、森発言に代表されるように、日本はこのToxic Masculinityからの脱却が急務だと思う。

■女性たちを解き放つ―――THINX (生理用ショーツ)

 女性ならではの体の悩みをイノベーションで解決するフェムテックビジネス。日本でも近年フェムテックの話題は増えており女性の起業の形としても注目されているが、アメリカではTHINXの創業者Miki Agrawal(ミキ・アグラワル)はもはや著名人であり、起業を目指す女性たちにとって憧れの存在でもある(現在はセクハラで訴えられてTHINXを離れたが、社会起業家として様々な活動を行っている)。

 THINXは、これまでの生理用品の常識を全く破った、洗えば何度でも使えて、一日中交換の手間がいらないショーツ。女性たちは生理の煩わしさから解放されるとともに、捨てることの罪悪感からも解放される。

 米ニューヨークのメトロというオープンな場所でのデザイン性あふれるポスター広告は「生理のある女性(あるいは生理のある人)のための下着」というシンプルなコピーで、自然なことを堂々と語りたいというメッセージを打ち出した(トランスジェンダーの「男性(もともとの体は女性)」を広告に出していることも、共感を集めた)。

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