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オンライン飲み会を盛り上げる「ノリ」の正体とは 西武文理大学サービス経営学部専任講師 瀬沼文彰

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 オンライン飲み会で盛り上がるために重要なこと――それは「ノリ」であろう。そんな単純なこと?と思われるかもしれないが、誰でも一度は聞いたことのある「ノリ」とはそもそも何だろう。まずは、本稿を読み進める前に1分ほど是非考えてみてもらいたい。

 考え始めると、「ノリ」とは何かはなかなかの難題であることに気づく。盛り上がるためのヒントとして、最後に、「ノリ」の意味を考えてみることで、オンラインの飲み会を盛り上げるためのヒントとしてみたい。

 社会学者の小川博司は、『音楽する社会』(勁草書房、1988年)のなかで、音楽を出発点に「ノリ」とは何かを考察した。小川によれば、「『ノリがいい』とは、音楽のコミュニケーションへの参加者が内的な時間の流れを共有していると感じている状態」である。これを踏まえれば、何気ない飲み会のような場の会話も、参加者たちの流れに乗ることがノリなのだろう。

共通点見つけ共感を

 さらに、小川は、ノリの条件を以下の2つと考えた。1つ目は、幼児が音楽にノレるような共感能力である。とはいえ、1歳児くらいでは、音楽にノってもそれにすぐに飽きてしまう。そのため、共感能力だけではなく、そのものに対する「素養」が重要だと論じた。「素養」とは、その物事に対しての知識や技術だと言い換えてみると分かりやすそうだ。飲み会では、周りがあまりにも知らないことについての会話がNGなのはここと関連しそうだ。

 2つ目は、「集中力・緊張感」である。飲み会での会話であっても、ノレる環境には、集中できる環境があること、適度に緊張感があることが必要になる。緊張感がまったくないと、気を遣わず楽かもしれないが、だらだら飲むだけになってしまい、ノることなどできないことを想定すると理解しやすい。

 オンラインの飲み会であっても、これらの条件を主催する側と参加者たちで環境をうまく作ることは重要だ。

 筆者自身は、若者のコミュニケーションの研究を行っている。若者たちは、日常生活のなかでとにかくノリを重視する。彼/彼女たちの考えるノリにも、共感や緊張感など小川の言う面が確かに含まれていそうだ。それに加えて、若者たちのノリには、大多数の意見やその場の勢いを衰えさせない協調性が重要だと筆者から付け加えたい。

 この点は、ノリの注意点につながる。若者たちは、仲間内の誰かの意見に対して脊髄反射のように多数の側につき共感する。また、周りから浮かないように協調性を示す。こうした姿勢は、必ずしも若者の友人関係だけに見られるのではなく、日本の組織にも散見するのではないだろうか。また、協調性についても、同様だ。筆者は、マジョリティを重視する考えや協調性を一方的に批判するつもりはない。コミュニケーションのなかで、誰かの意見に対して反対したり、自分の意見を主張できる余地があり、別の意見を選択できるのであればで問題はない。しかし、それができにくい空気もあるはずだ。以前の連載で、オンラインでは空気を気にしすぎるべきではないことを主張した。ノリという名の空気も維持をするためだけにあるのではなく、ときには壊すことや誰かが新しいノリを作り出すこと、さらに、それらを許容できることも大切なはずだ。

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