不安1 実質的な給与カットになる恐れ
しかし、いっぽうには懸念や不安もある。
第1に、給与の減少分を補えるだけの副業ができる人がどれだけいるかである。
副業で稼げるだけの専門能力や特技を持った人は一握りである。コロナ不況で人件費を削りたい会社から週休3日制への移行を迫られ、渋々受け入れたものの休日を活用できるような仕事がなく、結局は給与が減少しただけ、というようなケースが出てくるのではないか。
不安2 フリーランスへのしわ寄せ
第2に、フリーランスへのしわ寄せである。
実際に仕事を発注する側からは、副業者は本業があるので安価で受注できるし、本業で得た知識や能力も発揮してくれるのでフリーランスに発注するよりトクだという声が聞かれる。当然ながら、それは結果としてフリーランスの仕事を奪うことにつながる。
副業者が会社から有形無形の利益を得ているとしたら、何らかの形で副業者とフリーランスのすみ分けを図るか、フリーランスの収入を底上げするような社会的支援が必要になるかもしれない。
不安3 忠誠心、帰属意識は保てるか
第3に、会社の側からみて懸念されるのは社員の忠誠心や帰属意識の低下である。
会社を離れる日がそれだけ増えるだけではない。かりに休日増と引き換えに給与を減らすとしたら、本業に直接悪影響が生じるなどの理由がないかぎり、副業内容に制約を課すことは難しい。そうなると会社と社員の関係はドライになることが避けられない。
留意すべき点は、週休2日と3日はまったく意味が違うということである。週休3日制の導入が社員を抱え込む日本型の雇用システムに風穴を開けるきっかけになるのか、単なる絵に描いた餅で終わるのか、注目しておきたい。
同志社大学政策学部・同大学院総合政策科学研究科教授。神戸大学大学院経営学研究科修了。経済学博士。専門は組織論、とくに「個人を生かす組織」について研究。元日本労務学会副会長。組織学会賞、経営科学文献賞、中小企業研究奨励賞本賞などを受賞。『「承認欲求」の呪縛』(新潮新書)、『「ネコ型」人間の時代』(平凡社新書)、『公務員革命』(ちくま新書)、『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)、『個人尊重の組織論』(中公新書)、近著に『「超」働き方改革』(ちくま新書)など著書多数。