日経SDGsフォーラム

SDGs実現へ 生活者とともに 倫理的な課題解決、共感がカギ

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 私たち、生活者の消費活動の集積をマクロ経済では「家計最終消費支出」と呼ぶ。大半の商品やサービスは「最終」である生活者に向かうからだ。最終的に手に取ってくれるかの生殺与奪の権は生活者にあり、厳しい視線に堪えられるモノしか価値はない。持続的、社会的、倫理的なような今日的な課題に向き合い解決できるものなのか。生活者が共感を得る施策がカギを握る。小売業の責任は重く、同時に自らを律する力も養わないといけない。

社会革命を先導 変わる存在意義

 小売業は目利きとなり、生活者の代理人の役割を担う。高度経済成長期は庶民の「豊かになりたい」という欲望を満たす商品を取りそろえ、大衆消費社会の実現の舞台装置となった。衣食足りて礼節を知る今、生活者は将来を強く意識した消費活動に軸足を置き始めている。世代間で不平等にはならないのか。地球環境に負荷がかかりすぎてはいないか。消費そのものが社会の役に立つのか。少子、高齢社会では小売業の存在意義も変わり、社会インフラとしての機能も求められる。

 国内で2万2500店、1日の来店客数約2500万人、海外を含めたグループ売上高は約12兆円となるセブン&アイ・ホールディングス。生活者、コンビニのオーナー、取引先、従業員、株主、地域社会など極めて多くのステークホルダーに目配りした経営に取り組まなくてはならない。極めてナローパスに違いないが「対応できない企業は生き残れない」と井阪隆一社長は強調する。ここ数年、セブン&アイが立て続けにSDGsを視野に入れて施策を打ち出しているのはそのためだ。

 小売業には強みがある。生活者に極めて近い存在だからだ。生活者と接点を持つ小売業は、生活者を巻き込む形で倫理的な社会作りと資源の持続可能性を向上させる素地がある。セブン&アイの創業者、伊藤雅俊名誉会長とも親交のあるマーケティングの大家、フィリップ・コトラー氏の持論は「社会をよい方向に導くのがマーケティング」。生活者の意識をより倫理的に変えていくことで、取引先へも影響を与える。「最終」の川下だからこそ、川中、川上へとよりよい方向の連鎖が実現する。小売業は裾野から社会を変えていく力を持つ。

 一方で変革の場となる店舗やそれを支える物流などは環境に負荷をかけている側面もある。食品ロスは生活者からみても分かりやすい問題だ。イノベーションにより食品加工、包装材、温度管理、物流などを一気通貫で解決しようと試みる。

 経営学者のピーター・ドラッカーはセブン―イレブン・ジャパンによる生産性、利便性の向上を「偉大な社会革命」と称したことがある。セブン&アイにとってSDGsと向き合うことは新たな社会革命への挑戦なのだ。

(編集委員 田中陽)

柔軟な組織体制、「5つの重点課題」に挑む――

 セブン&アイは2014年に社会課題解決として取り組む5つの重点課題(「高齢化、人口減少時代の社会インフラの提供」「商品や店舗を通じた安全・安心の提供」「商品、原材料、エネルギーのムダのない利用」など)を策定しました。翌年、SDGsが発表され、重点課題と照らすと17の目標すべてにあてはまったのです。グループで世界一の店舗ネットワーク(約7万店)を持つ私たちの事業活動が未来に対して重い責任を課せられていることがよくわかります。
 生活者に直接関係するところでは買い物弱者解消のネット通販の充実や移動販売車の導入、生活習慣病のリスクを抑えるための分かりやすい栄養成分の表示などがあります。
 環境の負荷低減として19年に「GREEN CHALLENGE 2050」を策定し、50年までに二酸化炭素(CO2)排出量の実質ゼロ、プラスチックを使っている独自商品の容器を環境配慮型にして、その割合を30年は50%、50年までに100%とすることなどをお約束しました。
 生活者との接点の場である店舗は循環型社会を一層進めるにはうってつけです。ペットボトルを回収し、サプライチェーン全体でリサイクルを推進することにつながるからです。回収の動機づけとして、マーケティングの手法を生かして電子マネー「ナナコ」のポイントを付与しています。
 新型コロナウイルスによって生活者の行動、意識も大きく変わり、新しい経済社会の模索が続いています。これまでもセブン&アイグループは変化に対応して社会課題の解決に挑んできました。利便性や豊かさを提供する持続的で柔軟な組織であり続けたいと思います。

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