SDGs時代のパーパスブランディング

パタゴニア・ラッシュ…未来見据えたパーパス共感呼ぶ ブランドストラテジスト 大橋久美子

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NOW & “ME”とFUTURE & “US”がつながるコンセプトを見いだそう

 いくつかの成功ブランドを見てきたが、どれも共通して、未来を見据えたブランドのパーパスがきちんとあることは感じられただろう。しかし、もう一方で、忘れてはならないのは、消費者が共感したり、やってみたいと思わせるようなものになっているということ。企業側が崇高なパーパスを作ったからと言って、それを一方的に発信したからと言ってうまくいかないということだ。これらのブランドはロングセラーでありながら、常に新しい時代の中で消費者を見つめて、今の時代にふさわしい発信を行っている。

 例えば、Z世代で海洋ゴミに取り組んでいるUMINARIの伊達さんの発言が象徴的である。彼はいくつかのメディアの中で海洋ゴミに興味を持ったきっかけとして、アディダスが環境保護団体パーレイと共同で海洋ゴミから作った靴に出合ったことを上げている。そのデザインのカッコよさに引かれたことで海洋ゴミの問題に出合った。

 もちろん、彼の中にはどこかには地球環境の問題に対する認識はあったはずだ。潜在的に持っていた課題意識を顕在化する気づきを与えられただけなのだろう。しかし、真面目なメッセージだけだったら気付きになっただろうか?

 レゴのツリーハウスも、イノセントのbig knitキャンペーン、ラッシュのKnot Wrapも同じだ。どちらも「あ、かわいい」「センスいい」というきっかけからかもしれないが、社会的な課題に気付き、そして自分自身もその問題に向き合っているのだという充実感をもたらしてくれた。

 前回パーパスの説明でも書いたのだが、極端に社会価値だけをフォーカスし顧客価値やそのブランドの独自性を追求しないものはブランドとは言えないのだ。

 今の消費者は、今の自分が楽しむ生活(NOW & “ME”)が、未来の私たちの生活(FUTURE & “US”)を傷つけているのではないかという葛藤を抱えている。よって、未来の問題に対処する誠実な企業を求めているのは確かだ。だが、決して未来のために今を楽しむことを犠牲にしたいわけではない。未来を強調しすぎると、ブランドの独自性も失われ、消費者も自分ごとできなくなってしまう。

 地球やコミュニティの未来というFUTURE & “US”の思いと、今の自分自身を自分らしく生きていくというNOW & “ME”の思いが重なるものとしてブランドが位置づいた時には、彼らがファンとなってブランドを熱狂的に支持していってくれる。ラッシュの場合は、その未来の地球環境と今を生きる顧客を重ね合わせた「新鮮(フレッシュ)で有機的(オーガニック)なLUSH LIFE」というコンセプトを見いだしたことで、再び支持されるブランドとなった。

 消費者のニーズやインサイトをきちんと把握するというマーケティング2.0時代のブランディングの上で、それに加えて“未来”と“今”を重ねていくということ(つまり未来すぎてもいけない、今だけでもいけない)が、SDGs時代のブランディングに求められていることなのだ。

大橋 久美子(おおはし・くみこ)
Office Story Branding(ストーリーブランディング)代表。博報堂、J. Walter Thompson(JWT)、LIFULLを経て、ブランド戦略立案を行うブランドストラテジストとして独立。 JWT時代にはブランディングモデル“Brand Nurturing”を開発、多くの日本企業のブランド戦略構築に導入した。 現在は消費者インサイトと未来創造をつなき企業価値を上げるための新たなモデル開発や戦略立案活動を行っている。女性エンパワーへの活動により、2019年campaign Asia誌 Women leading change Vision leader部門のシルバーを獲得。

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