SDGs時代のパーパスブランディング

パタゴニア・ラッシュ…未来見据えたパーパス共感呼ぶ ブランドストラテジスト 大橋久美子

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1.ベン&ジェリーズ(BEN&JERRY'S)

 1978年創業以来人気のアイスクリームブランド。素材の調達過程でフェアトレードや貧困層支援の姿勢を貫くとともに、貧しい移民の問題でイギリス政府にかみついたり、黒人の人権問題(Black Lives Matter)の意見を述べたりと、ベン&ジェリーズは政治的な話題もツイートしては、「本業に専念すべきだ」(イギリス政府からは「あのやたら高いジャンクフード」と反論された)と言った批判も浴びるが、彼らは製品のミッション(最高に美味しいアイスクリームを提供すること)・社会的ミッション(革新的な方法で地域の、国内の、そして世界の人々の生活を向上させること)・経済的ミッション(安定した収益を創出し、継続的な成長を実現すること)という3つのミッションを掲げている会社として、常に話題を喚起するアクションを起こしている。

 2020年は上記のような政治的アクションの一方で、ネットフリックスとコラボして、おうちでまったりテレビを見るときにぴったりなアイスクリームフレーバーをローンチしたり、おいしさや楽しさの観点でユーザーを幸せにするイノベーションも大切にしている。

2.パタゴニア(Patagonia)

 アウトドアブランドのパタゴニアは、自然との共生の問題に対して創業以来熱心に取り組んでいる。ターゲットとなる消費者たちも、自然を愛し自然と過ごす時間を大切にしている人々であるだけに、熱心なファン・支持層が多いブランドである。

 パタゴニアといえば、よく取り上げられるのが、2011年、冬のショッピングシーズン幕開けとなるブラックフライデーに出した広告 “Don’t buy this jacket (このジャケットを買わないで)”だ。企業のメッセージとしては意外すぎるが、どんどん新しいものを購入し廃棄していく消費主義が地球環境を悪化させていることへ消費者の自覚を高める啓蒙とともに、パタゴニアがこの問題に真摯に取り組み、長続きする商品・長く使っていただく仕組み・再利用の取り組みを行っていくということの宣言でもあった。

 パタゴニアは最近ではさらに踏み込んだ目標を設定した。単に環境への害を減らすのではなく、カーボン・ポジティブになること、つまり排出量以上の二酸化炭素を大気中から取り除くことを目指しているというのだ。常に他のブランドの先を行く指針を出し続け、そのためのイノベーションに投資を行っていることで、ブランドとして独自のポジションを確立し続けているのだろう。

3.イノセント(innocent)

 イノセントは忙しい都会人のために、時間をかけずに簡単に健康にいい食品を摂取するために作られたスムージー。しかも売り上げの10%を寄付に回すことで世界が良くなることに貢献できる。

 イノセントが毎年冬にやっている “big knit”キャンペーンは、ユーザーがイノセントの容器にかぶせるための小さなニットの帽子を編んで送ると、一つあたり25ペンスの寄付が極貧の高齢者たちを救済するために送られるというものだ。厳寒で亡くなる高齢者が多いという社会問題に対して、厳しい現実を乗り越える方法はシリアスなだけじゃなくて、楽しくてもいいはず、みんなでハッピーになる方法を考えよう、そんなポジティブで明るいブランドのキャラクターを感じさせる。

4. ラッシュ(LUSH)

 ラッシュは日本にも数多くの店舗があるので、カラフルなせっけんや化粧品が芳香を放つフルーツのように並んでいる楽しいショッピング体験をしたことがある方も多いだろう。ラッシュが提供する価値は「A LUSH LIFE」。常に新鮮(フレッシュ)で有機的(オーガニック)なLIFEを目指し、素材や製造方法、そして商品だけでなく店舗体験・使用体験に至るまでそのこだわりを追求している。フレッシュでオーガニックなLIFEは、作る人も使う人もハッピーであるべき。ユーザーに我慢を強いるのではなく、レジ袋の削減のためにカラフルなKnot Wrap(「結んで包む」という意味―日本の風呂敷にヒントを得たもの)を発売。昨年からはこのKnow Wrapをリユースする仕組みであるKnot Swapプログラムも開始している。

 実は一時期ラッシュは売り上げが伸び悩んだことがあった。カラフルで楽しいだけのブランドと思われてしまったのだ。その反省からブランド価値を再度見直し、エシカルな部分と顧客に感じてほしいハッピーな部分をつなぐ、もともとあったけれど見失われていたミッシングリンクを探し出した。それが「新鮮(フレッシュ)で有機的(オーガニック)なLUSH LIFE」というものだった。

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