日経SDGsフォーラム

脱炭素 エネルギー会社の責任 SDGsとの両立 突破口探る

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 世界が一斉に温暖化ガスの排出ゼロへ踏み出した。実現には排出量が多いエネルギー部門の脱炭素化が欠かせない。一方、SDGs(持続可能な開発目標)が掲げる貧困の解消や飢餓の撲滅には、経済成長を促す安価で安定したエネルギーの供給が必要だ。JERAはこの両立にどう挑もうとしているのか。

ゼロエミ火力で経済成長後押し

 台湾の台北から南西へ90キロメートル。苗栗県の海岸からは沖合に並ぶ風力発電機が見える。2019年12月に商業運転が始まった洋上風力発電プロジェクト「フォルモサ1」だ。

 JERAがデンマークのエネルギー大手エルステッドなどと進める。沖合では別のプロジェクト「フォルモサ2」が建設中だ。準備中の「フォルモサ3」も加わるとJERAの発電持ち分は110万キロワットに達する。

 日本政府は50年に温暖化ガスの排出実質ゼロを目指すと宣言した。石炭や液化天然ガス(LNG)など化石燃料を使う火力発電は電力需要の8割をまかなう一方、二酸化炭素(CO2)排出量の約4割を占める。排出ゼロはこの削減がカギを握る。

 東京電力ホールディングスと中部電力の火力発電事業と燃料事業を統合して発足したJERAは国内の火力発電設備の半分を持つ。小野田聡社長は排出ゼロを目指すのは最大手の責任だと言う。

 挑戦は国内にとどまらない。JERAの事業領域は世界中に広がるからだ。そのためのアプローチが、相互補完にある再生可能エネルギーと「ゼロエミッション(ゼロエミ)火力」の活用だ。

 ゼロエミ火力とは燃焼させてもCO2を出さない水素やアンモニアを燃料とすることで火力発電を使い続ける手段だ。再生エネは脱炭素時代の主力電源だ。JERAは台湾などの経験をいかして案件を開拓し、25年までに再生エネを500万キロワットへ伸ばす計画だ。

 しかし、再生エネは時間や天候で出力が変動する。一方、経済成長が続くアジアはエネルギーを必要とする。再生エネを十分確保できず、まだ火力発電に頼らざるをえない国も少なくない。

 そこでJERAが考える解決策がゼロエミ火力だ。足元では石炭より温暖化ガス排出が少ないLNG火力の導入を促し、将来は水素などに転換して脱炭素を進める。環境対策に目配りしながら経済成長を止めない突破口となる可能性を秘める。

 小野田社長は昨年2月、バングラデシュを訪れた。JERAは同国最大の独立系発電事業者(IPP)であるサミット・パワーに出資する。同社を通じて多様なエネルギー・インフラ事業に参画する考えをハシナ首相に伝えた。

 環境対策を講じながら、国の事情に応じた最適のエネルギー・ソリューションを提供する。それが脱炭素時代のエネルギー会社の役割だ。

(編集委員 松尾博文)

2050年CO2ゼロ グローバルで実現――

 JERAが発足してもうすぐ6年になります。東京電力ホールディングスと中部電力の燃料事業や火力発電事業が一緒になったことによるシナジー効果は相当出ています。今後はこれをいかしてさらに飛躍していかねばなりません。
 昨年10月に「JERAゼロエミッション2050」を発表しました。50年時点で事業からの二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロにするためのビジョンです。
 グローバルでの事業展開がJERAの設立以来の目的です。地球温暖化問題への取り組みは欠かせません。日本の火力発電設備の半分を持ち、発電量の3割をまかなう電力会社としてリーダーシップを発揮する責任があります。
 具体的なアプローチはまず、国内では30年までに効率の低い石炭火力発電設備をフェードアウトさせます。高効率設備については燃焼させてもCO2を出さないアンモニアを燃料の石炭に混ぜます。
 実際の発電所でアンモニアを20%混ぜる実証試験の準備を進めています。30年代に全国の発電所で展開するとともに、アンモニアの混焼率を高めていきます。
 さらに太陽光や風力などの再生可能エネルギーでつくる水素をガスタービンの燃料として使うことを目指します。そのうえでどうしても残るCO2は回収して地中に埋めたり、再利用したりするCCUS(回収・利用・貯留)の技術を組み合わせることで50年ゼロは達成できると考えています。
 アジアなどの新興国は産業を興し、経済を発展させるエネルギーを必要としています。JERAはこうした国々に再生エネとCO2を出さないゼロエミッション火力が相互に補完する最適な組み合わせを提案できると考えています。

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