日経SDGsフォーラム シンポジウム

日経SDGsフォーラム(下) 今こそ新常態生かし持続可能な経済探れ

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 日本経済新聞社と日経BPは昨年11月26、27両日、国連のSDGs(持続可能な開発目標)の達成へ企業を支援する「日経SDGsフォーラム」を都内で開催、会場の模様を日経チャンネルで中継した。政府関係者や企業経営者らは新型コロナウイルスとの戦いで生まれた「新常態」を社会のエコシステム構築に生かしつつ、持続可能な経済活動を探る姿勢を示した。

■パネルディスカッション 社会貢献 インパクト大きくコロナ禍 好機に転換を
・パネリスト
WELLNEST HOME 代表取締役社長 芝山 さゆり 氏
ヘラルボニー 代表取締役社長 松田 崇弥 氏
READYFOR 代表取締役CEO 米良 はるか 氏
ビビッドガーデン 代表取締役社長 秋元 里奈 氏
・コーディネーター
慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授 蟹江 憲史 氏

コロナ禍 好機に転換を

 

 蟹江 国連のSDGs(持続可能な開発目標)には「変革」「目標ベースのガバナンス」「進捗の評価が唯一のメカニズム」「総合的目標」といった特徴がある。コロナは世界にネガティブな影響を与えた一方で変革へのチャンスともいえる。

 芝山 当社は高松市で創業した住宅会社だ。日本の一般的な住宅は約80年かけて育てた木で家を建て、30年程度でリフォームや建て替えをして木を廃棄する。住む人と地球環境を考え「未来の子どもたちのために やがてこの子を守る家」という理念の下、長持ちすることにこだわった家づくりをしている。

 今は戸建てにとどまらず、北海道ニセコ町でのまちづくりプロジェクトに参画するなど、社会課題の解決に向けて当事者意識を持って取り組みを行っていく。

 松田 アート活動の社会福祉法人とライセンス契約を結び、知的障害者の作品を世に出す事業を展開している。知的障害ゆえに描ける世界があると考え50人以上の作家・作品データを管理している。他企業で数字を扱っていた社員が福祉領域の事業拡大に挑んでいる。

 ネクタイやエコバッグなどを製造・販売するアートライフブランド事業は知的障害者の作品だから、でなく売れる製品をプロデュースしようと創業した。ライセンス事業では2000作品をホテルの壁紙や家具に使い、宿泊料が作家に還元されるモデルや、建設現場の仮囲いに展示するソーシャル美術館も展開している。

 米良 2011年に日本初のクラウドファンディング「READYFOR」(レディーフォー)」を始めた。社会課題の解決、持続可能な社会の実現へお金の流れを変える必要がある。コロナ禍で中止イベント支援プログラムや企業や商工会議所と共に飲食店支援もしている。医療機関やエッセンシャルワーカーへの支援でクラスター班の専門家と組み、コロナ拡大防止活動基金も創設。2万人以上から8.7億円超の寄付が集まり、国内企業の支援やプロ野球選手会の広報支援もあった。

 今後社会課題に取り組む会社の価値が上がる。ビジョンや熱意に加え、社会をどう変えるかを伝え、多くの人を巻き込むのが大事だ。

 秋元 ウェブ版ファーマーズマーケット「食べチョク」は3000以上の生産者が登録している。IT(情報技術)企業に勤めていたが、耕作放棄地になった実家をみて小規模生産者でも選べる販路をつくりたい、と思ったのが契機だ。価格は生産者が決め、登録は無料。厳しい声も含め消費者の意見が届き「モチベーションが上がる」と好評だ。

 自治体とも連携強化している。規格外野菜も出品できるため食品ロス削減にもつながる。産直サービスは以前からあったが、個人間売買アプリの浸透もあり、ビジネスになると確信した。

 蟹江 SDGsを考えるうえで変わったことは。

 米良 社会課題のゴールが定められたことで多くの人が関与しやすくなった。

 松田 つながりのなかったメディアや大企業と連携できることに価値を感じる。

 芝山 技術伝承の意味も持つ20年に1度の伊勢の式年遷宮のように、日本では古くから持続可能な社会をつくる文化がある。ステイホームで今は家族の触れ合いや個々を見つめる好機。多くの人が快適な住まいについて考えるようになった。

 秋元 コロナで法人顧客や飲食店頼みだった生産者が「食べチョク」に登録し、販路の選択肢を増やそうという意識になってきた。消費者も在宅時間が増え、時短食品よりも食材に目が向くようになっている。

 蟹江 テクノロジーによって自律分散や協調が可能になり、社会貢献ビジネスが大きなインパクトを及ぼすようになった。コロナ禍をチャンスに変えるという示唆に富んだ話を聞けた。

障害者アート 事業拡大に挑む 松田 氏

産消、双方で意識の変化が加速 秋元 氏

「持続可能」は日本古来の文化 芝山 氏

多くの人巻き込む取り組み重要 米良 氏

社会貢献ビジネス 影響力増す 蟹江 氏

■講演
丸紅 代表取締役社長 柿木 真澄 氏

取引先との協働・発展探る

 SDGsに貢献するビジネス拡大は、丸紅のDNAに基づく企業活動だ。丸紅グループにとって普遍的で変わらない価値創造は「人」が源泉になる。市場価値の高い人材、揺るがない経営基盤、社会と共生するガバナンスの3つが重要課題だ。

 環境・社会の課題としては「気候変動対策への貢献」「持続可能な森林経営・森林保全への貢献」「人権尊重によるコミュニティとの共同発展への貢献」「持続可能で強じんなサプライチェーン構築と取引先との協働」の4つを掲げている。気候変動対策では、グループ全体の事業活動に伴うエネルギー由来の直接・間接の温暖化ガス排出量を2030年度までに18年度比で25%削減することを目指す。これは丸紅新電力の活用で購入電力の二酸化炭素(CO2)をフリー化することなどで達成したい。

 社会課題への取り組みでは中小規模の水力発電事業がある。急流が多い日本の地形は小規模水力発電に適しており、三峰川電力では国内21カ所の発電所を稼働させている。気候変動対策と地域発展を両立するものとしては海外の植林・パルプ製造事業がある。木材やバイオ燃料を提供しながら森を育て続けるというもので、地域の雇用創出にもつながる。

 農業分野では、土壌を改良しつつ雑草をブロックするカバークロップという作物の研究・開発も進めている。アパレル事業では大量廃棄からの脱却をにらみ、使用水の大部分を再利用して繊維素材を再生させる技術による事業に、米国のスタートアップ企業サーク社が取り組んでいる。アジアにもこのビジネスモデルを展開したい。

 今後は環境を破壊してまで競うという今までの意識を変えるべきだ。世の中は有事の連続だ。たとえ明日が今日より良くなくても、感謝して明日を迎えられるようになりたい。

■講演
大和ハウス工業 代表取締役社長・CEO 芳井 敬一 氏

3つの「Re」で新常態実現へ

 当社はハウジング、ビジネス、ライフの分野で事業展開している。事業領域が広く、多くの社会問題に向き合う責任がある一方、問題解決に深く貢献できる。

 当社は1960年代に郊外型戸建て住宅を「ネオポリス」と名付け、全国61カ所、6万区画以上を開発した。住宅不足という当時の社会課題に対応したが、50年以上を経て多くの課題を抱えている。SDGsの「住み続けられるまちづくりを」「つくる責任 つかう責任」は当社グループの一丁目一番地であり、街をつくった責任として目下「ネオポリスの再耕」に取り組んでいる。

 横浜市の「上郷ネオポリス」では高齢者と若い世代が共に働くコンビニエンスストア併設型のコミュニティー拠点を開設。地域巡回の移動販売車の導入で、遠出できない人や高齢者に買い物の場を提供している。

 兵庫県三木市の「緑が丘ネオポリス」では、ミニコチョウランを高齢者や障害のある方と共に栽培。雇用も生み、地域と新たな関係を築いて住み続けられるまちを目指す。近くに関西国際大学があり、学生の栽培支援など若い世代の力も活用している。

 再生可能エネルギー利用も不可欠。当社は2030年までに電力使用量以上の再エネ発電を実現し、40年までに自家消費に切り替え100%再エネ化を図る。風力、太陽光、水力など全国278カ所での発電量は現在、使用量の96%に達している。千葉県船橋市では再エネ発電と郊外型大規模複合開発を組み合わせたまちづくりも始めた。

 できることをすぐに実現するリアリティー、リニューアブル・エナジー(再生可能エネルギー)、災害からビジネスや生活を維持・回復するレジリエンスの3つの「Re」を合言葉に、今後求められる「ニューノーマルな未来の暮らし」を実現する。

■講演
アサヒグループホールディングス 専務取締役 勝木 敦志 氏

産業の枠越える連携を

 ビールの製造過程で発生する酵母エキスは古くから活用されてきたが、エキス抽出後の酵母細胞壁はあまり活用されていなかった。当社では約10年の研究を経て酵母細胞壁を加工処理する独自技術を開発し、安全な農業資材として球場やゴルフ場等で活用している。

 環境、人、コミュニティー、健康、責任ある飲酒という5つの重要課題を設定し、SDGs達成への貢献も目指す。環境では長期目標「環境ビジョン2050」を策定し、温暖化ガスの排出量をゼロにする「アサヒカーボンゼロ」、持続可能な水資源の利用では「ウォーターニュートラル」を掲げた。これは水使用量削減だけでなく国内ビール工場の使用水と同量の水を社有林で育む取り組みになる。

 微生物活用技術からは、抗生物質の使用量削減につながる飼料添加物「カルスポリン」等が生まれている。ビール工場の排水処理工程で得られるバイオガスを燃料電池発電に活用する研究も進み実証実験を開始。実用化へ最終試験を始めた。この技術は2018年の日経地球環境技術賞で優秀賞を受賞した。バイオガス生成等の技術は特許を取らず、情報公開する予定だ。物流の領域では競合他社との共同配送により、効率化促進、二酸化炭素(CO2)削減に取り組んでいる。

 海外では、ポーランドのビールブランドLechを風力発電のみで醸造し、オーストラリアでは飲料水ブランドで100%リサイクルのペットボトルを使用。国内ではアサヒスーパードライの缶の製造に木材チップを燃料としたグリーン電力を使っている。18年からは一部のペットボトルのケース販売専用商品でラベルを省き環境負荷低減に貢献している。

 SDGs達成に貢献するために、企業や産業の枠を越えて連携し、地球上の皆と一緒に社会課題の解決に取り組みたい。

主催:日本経済新聞社、日経BP 
協力:日経ESG経営フォーラム   
特別協力:三井不動産
メディアパートナー:FINANCIAL TIMES 
後援:内閣府、外務省、経済産業省、環境省、日本経済団体連合会
協賛:住友林業、キリンホールディングス、東京センチュリー、三菱UFJフィナンシャル・グループ、野村アセットマネジメント、AGC、
サントリーホールディングス、アサヒグループホールディングス、大和証券グループ、MS&ADインシュアランスグループホールディングス、
セブン&アイ・ホールディングス、大和ハウス工業、三菱地所、ソフトバンク、セールスフォース・ドットコム、丸紅、NTTフィールドテクノ、JERA

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