日経SDGsフォーラム シンポジウム

日経SDGsフォーラム(上) 今こそ新常態生かし持続可能な経済探れ

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■鼎談
環境相 小泉 進次郎 氏
東京大学未来ビジョン研究センター 教授 高村 ゆかり氏
三菱UFJリサーチ&コンサルティング 経営企画部副部長/プリンシパル・サステナビリティ・ストラテジスト 吉高 まり 氏

コロナと温暖化 共に克服

 吉高 ESG投資が増えている。リーマン・ショックで金融システムの不安定な状況が露呈した頃から発展してきた。新型コロナ禍の状況でも進んでいる。低金利、マイナス金利で市場では資金が余っている。この資金が流れている。こうした中で欧州連合(EU)ではグリーンリカバリーの政策が台頭してきた。コロナ禍からの復興へ、景気刺激策としてグリーンとDXを強調している。

 小泉 菅義偉首相が2050年までのカーボンニュートラルを宣言し、グリーンリカバリー政権になったと考えている。首相の所信表明は1に新型コロナ、2にデジタル、3にグリーン。コロナとの戦いの中で経済社会の復興をデジタルとグリーンで考える。これがグリーンリカバリーだ。我々が直面している気候変動とコロナの2つの危機に対し脱炭素社会への移行、循環経済への移行、そして分散型社会への移行という3つの移行を加速して経済社会を再設計する必要がある。

 高村 「グリーンリカバリー」は、コロナでダメージを受けた経済・社会を脱炭素でレジリエントな経済・社会に、そして生態系、生物多様性を保全する、そしてグリーンな方向に復興していこうという考えを示す象徴的な言葉だ。気候変動による自然災害から国民の命とくらしを守る防災・減災策、レジリエンスを高める施策もその一環だ。

 小泉 実現するには実効的な施策が重要だ。環境省では法律改正を目指して議論している。新たな脱炭素市場と、脱炭素技術の世界的な大競争時代が始まった。再生可能エネルギーへ投資を呼び込む、ガソリン車を禁止してEV(電気自動車)化を進めるという2つの動きが出てきた。世界市場の流れに遅れず先行者利益を得られるよう迅速に対策を講じていく。

 高村 菅首相のカーボンニュートラル目標表明のインパクトは非常に大きい。エネルギー基本計画の見直しも、その観点からエネルギー分野の課題の検討も始まった。もう一つは今、小泉大臣が指摘した「市場」だ。日本は環境分野の技術力がある。グリーン分野の特許数は非常に多い。その普及・市場化に課題がある。

 吉高 各国の監督当局、中央銀行が気候変動リスクに対するネットワークをつくり「グリーン」への金融の関わり方を議論している。グリーン市場をつくるには金融機関と市場、政策のコンビネーションが重要だ。

 小泉 ESG投資を機関投資家や大手金融機関だけでなく地域の金融機関と個人投資家にも普及させたい。環境省でもESG投資の発展版であるインパクトファイナンスのタスクフォースをつくっており、普及を後押ししていく。

 吉高 再生可能エネルギーや温暖化対策だけでなく海洋資源など生態系全体も無関係でない。投資家もそう考え始めており、投資を呼び込む策が必要だ。

 高村 コロナ禍からの経済・社会の復興に大きな財政を出動する機会に可能な社会システムの変革がある。環境対策は地域の産業振興、雇用創出、食料自給率向上などにもつながる省庁横断型の施策が求められる。

 小泉 政治の最大の使命は国民の生命と財産、そして文化を守ること。コロナ危機と気候変動危機で問われているのは、まさにこの部分だ。カーボンニュートラルへの歩みというのは、政治と2つの危機を直結し、克服するという最大の使命に向き合っているということだと考えている。

■講演
日本経済団体連合会 企業行動・SDGs委員長/第一三共 常勤顧問 中山 譲治 氏

持続可能性とDXを同時に

 SDGs達成へ世界中が行動する中、新型コロナウイルス感染症まん延で2つの課題が顕在化した。1つはサステナビリティーの重要性。経済社会が甚大な被害を受けた今、世界各国が協調して持続可能な社会の実現を目指す必要がある。

 2つ目はデジタル改革、すなわちデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。ソーシャルディスタンシングが求められる中でも、テレワークやオンライン診療など時間や場所を越えて人と人、人と社会をつなぐデジタル技術は多くの可能性を示した。日本はデジタル化の遅れをばん回すべくデジタル庁が発足するなど、今後デジタル技術が急速に社会に組み込まれ、新たな変革の起点となるだろう。

 持続可能性、DXに同時に取り組み、新たな成長を遂げる戦略がSociety5・0によるサステナブルな資本主義の確立だ。SDGs達成にはSociety5・0の実現が重要な役割を果たす。多くの企業が多様な組織と連携した価値共創の経営へとかじを切る中で、Society5・0やDXへの一般的な認知不足がイノベーション創出の課題である。

 ESG(環境・社会・企業統治)投資の進化も大変重要なファクターだ。目指す社会像に共感が得られれば、新たなESG投資を生み出す好循環にもつながる。

 例えば医療分野ではDXを活用した様々な実例があるが、健康医療のビッグデータを収集・連携・活用できる環境がなければDXは実現しない。民間企業もデータを利活用できる環境整備を官民一体となって進めるべきで、政府の強いイニシアチブが必要だと考える。

 DXは人々の健康やSDGsに不可欠なインフラだ。DX、Society5・0が多くの人々の命を救い、健康をもたらすことを常に思い描き、皆様と共に明るい未来を実現したい。

■講演
ソフトバンク 代表取締役社長執行役員 兼 CEO 宮内  謙 氏

デジタルシフトで幸福追求

  当社は「情報革命で人々を幸せに」を経営理念に掲げる。SDGs達成に向けた重要課題は「DXによる社会・産業の構築」「人・情報をつなぎ新しい感動を創出」「オープンイノベーションによる新規ビジネスの創出」「テクノロジーのチカラで地球環境へ貢献」「質の高い社会ネットワークの構築」「レジリエントな経営基盤の発展」だ。

 「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中を」の実現も狙う。人工知能(AI)、あらゆるモノがネットでつながるIoT、次世代通信規格5G、ロボットなどを活用しデジタルシフトでゴールを目指す。

 新型コロナウイルス感染拡大でスマートフォンなどモバイル活用の重要性が高まった。当社は2008年のiPhone発売後すぐに全社員に配布。クラウド環境と組み合わせて完全ペーパーレス化を実現した。営業活動もマーケティングからセールスまでオンライン化を進める。

 主軸の通信事業は数年前から全国23万サイトある基地局の消費電力の再生可能エネルギーへの転換を進め、今年度の再エネ利用目標30%は達成の見込み。22年度は70%までに高める予定だ。無人飛行機で成層圏から広域に通信を提供するHAPS事業も手掛けている。

 他にもトンネル工事の安全性向上へ、5Gの多数同時接続による有毒ガス検知や作業員の健康状態確認、建機の遠隔操作などの実証実験を大成建設などと共同実施。ヘルスケア分野では医療機関や企業と連携し、スマホアプリによる健康相談や一般用医薬品の配送サービスの提供基盤をつくった。トヨタ自動車などとの共同出資会社、MONET Technologiesでは移動診察車によるオンライン診療を開始。当社は今後も様々な業界のデジタルシフトを共創パートナーと進めていく。

■講演
セブン&アイ・ホールディングス 代表取締役社長 井阪 隆一 氏

循環経済を重視、他社とも連携

 セブン&アイグループでは2014年、これから取り組むべき5つの重点課題を特定した。その翌年にSDGsが制定され、我々が取り組む社会課題とSDGsの17のゴールをシンクロさせて、具体的な活動に落とし込むアクションをスタートしている。

 19年5月には環境負荷低減への方針「GREEN CHALLENGE2050」を発表した。50年までに二酸化炭素(CO2)排出量の実質ゼロを目指す。プラスチック対策としては、オリジナル商品の容器で30年までに環境配慮型素材を50%に、50年までに100%とすることを目指している。食品ロス、リサイクル対策、持続可能な調達でも高い目標を設定した。再生可能エネルギーのみで営業できる店舗や、水素ステーションを併設した店舗、物流センターの展開など、様々な環境問題への取り組みも行っている。

 最も重要な活動と位置付けているのがサーキュラーエコノミーの取り組みだ。グループ各社の店舗に約千台のペットボトル回収機を設置し、19年度は約3億6千万本の使用済みペットボトルを回収した。不足が懸念されるリサイクル工場への出資も行う。

 グローバルな取り組みとしては19年TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同し、20年6月にTCFDの提言が求める項目を開示。企業の自然エネルギー100%を推進する国際ビジネスイニシアチブRE100にも参加している。

 我々は世界ブランドとして、持続可能な未来のためにSDGsを推進する。環境や社会課題をリスクからチャンスに変えるため、既存のシステムや技術にとらわれずにイノベーションを進化させ続け、ステークホルダーや他企業と連携しながらSDGsのゴールに向けて進んでいきたい。

■講演
大和証券グループ本社 取締役 兼 執行役副社長 田代 桂子 氏

コロナからの社会復興を支援

 新型コロナウイルスの感染拡大で、これまで当たり前のように営んできた経済活動の見直しを余儀なくされている。同時に社会インフラとして、経済活動を支えてきた金融がその真価を問われている。証券会社は資金の出し手である個人のお客さまや機関投資家と、資金を必要とする国際機関や国、企業などをつなぐ役割を担う。資金調達手段、または資金運用方法の選択肢をいかにタイムリーに提供できるかが重要だ。

 近年、個人や機関投資家がESG投資と呼ばれる手法をより意識するようになっている。金銭的なリターンだけではなく、社会的意義も求める投資家が増えているというわけだ。ESG投資は中長期でリターン最大化を目指す投資手法であり、人生100年時代に適したものと考えられるうえ、投資することにより、国連の持続可能な開発目標SDGsの達成や社会課題解決にも寄与する。

 社会的意義のある投資が増え、社会課題の解決に向けた施策も拡大している。両者のニーズをマッチングさせ、社会がよりサステナブルな形でコロナ禍から復興するよう支援するのが、我々の重要な存在意義だ。

 社内のSDGs推進体制を構築して活動を加速するため今年度から指標を設定し、モニタリングも始めた。社員の行動や意識が変化している。来年度以降は新たな中期経営計画の中で定量的な目標値も含め、SDGs達成への施策を公表する。

 SDGsを起点としたビジネスでは、SDGs債の前身ともいうべきインパクトインベストメント債への取り組みに注力。2020年3月末時点で個人投資家向けSDGs債の累計販売実績は、国内全体の約49%と業界トップだ。コロナ禍に関連したSDGs債や再生可能エネルギー分野の投資やアドバイザー業務にも力を入れている。

主催:日本経済新聞社、日経BP 
協力:日経ESG経営フォーラム   
特別協力:三井不動産
メディアパートナー:FINANCIAL TIMES 
後援:内閣府、外務省、経済産業省、環境省、日本経済団体連合会
協賛:住友林業、キリンホールディングス、東京センチュリー、三菱UFJフィナンシャル・グループ、野村アセットマネジメント、AGC、
サントリーホールディングス、アサヒグループホールディングス、大和証券グループ、MS&ADインシュアランスグループホールディングス、
セブン&アイ・ホールディングス、大和ハウス工業、三菱地所、ソフトバンク、セールスフォース・ドットコム、丸紅、NTTフィールドテクノ、JERA

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