SDGs時代のパーパスブランディング

御社はなぜ存在するのか?いまパーパスが問われる理由 ブランドストラテジスト 大橋 久美子

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 日本企業は良い製品を作っているのにも関わらずインターブランドやWPPが発表している世界的なブランド評価ランキングでは上位にトヨタやホンダなどの車メーカーのみという状況が続いている。SDGs(持続可能な開発目標)にも真剣に取り組み始めているが、ものづくりの観点が強く、ブランド戦略という観点からうまく取り込めているとは言えないのではないだろうか。この連載では、ブランド戦略の文脈でSDGsを捉えていく。SDGs時代にブランディングにおける変わらないもの・変わるものは何か。新しいブランディングに関して考えていくことで、最終的な目的としては、日本企業のブランディングでの成功・ブランド価値向上へ貢献していくことができればと願いながら、書き進めていきたい。

企業への信頼度、NGO上回る

 1999年11月、シアトルには世界貿易機関(WTO)に反対する5万人の市民・活動家たちが世界各地から集まってきた。グローバル貿易協定に反対し会議の実行及び協定の批准を阻止するとともに、一部暴徒化した若者たちが、マクドナルド、スターバックス、ナイキなどのグローバル企業のブランドを標的として襲撃したのだ。グローバル企業こそが労働搾取の元凶とされたからである。

 こうした大きな不信感に直面したグローバル企業は、これを解決し信頼を回復するために何をなすべきかというテーマに取り組まざるを得なくなり、企業の社会的責任に真剣に取り組む企業が増えて行った。

 グローバルPRエージェンシーのエデルマンによるトラストバロメーター(信頼度を表す指標として広く用いられているグローバル調査)は「シアトルの戦い」への直接的な対応として2001年からスタートした。先ごろこの20年の推移をまとめた“20 Years of Trust”というリポートが発表されたが、興味深いことに、ビジネス(企業・ブランド)への信頼度はこの20年間で17ポイントもアップしNGOへの信頼度を抜いた。特にビジネスへの信頼度の2015年以降の伸びが顕著。これは、シアトルで与えられた宿題を企業が真剣に取り組んで行った成果として企業の社会的責任のあり方が大きく進化したことを表している。

CSRからCSVへ、そしてSDGsへの変遷

 社会的責任の概念も変化してきた。ハーバードビジネススクールのマイケル・ポーター教授が2011年に提唱したCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)はイノベーションによって社会的課題の解決を行い、社会もよくし企業側はビジネスにも結びつくというWin-Winを目指そうという考え方だ。本業を離れた社会貢献やリスク回避といった限定的なCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)よりも、コア事業として取り組むことで継続的で大きな社会的インパクトを引き起こすことが期待できる。

 2015年には、国連が地球の喫緊な社会課題を具体的に上げ、2030年までにあらゆる力を結集して目指すべき共通目標としてのガイドラインを示した。これがSDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」である。国連が企業のイノベーション推進力に期待したのだ。CSVに取り組む企業が増えてくる中、社会的価値を追求する信頼できる存在へと企業の捉え方が変わってきたことの表れとも言えるだろう。

 こうして、企業は経済的な利益追求という目的から、社会的な価値を作るという高次元の存在理由を打ち出す存在へと変化していった。

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