SDGs時代のパーパスブランディング

御社はなぜ存在するのか?いまパーパスが問われる理由 ブランドストラテジスト 大橋 久美子

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そして、ブランドパーパスへ

 「最近よくブランドパーパスという言葉を聞くけれど、分かりにくい」という声も多いので、少しここでこの言葉について触れておきたい。

 企業やブランドが社会的な存在価値を持つべきであるという時代の流れの中でパーパスという言葉が広がってきたため、パーパスといえば「企業・ブランドの社会における存在理由」というニュアンスで解釈されることも多いが、より広い意味で用いることもあるために混乱しやすいのだと思う。「世の中をよくする」「環境と地球を守る」など社会的な意義を強調するものがパーパスだと考える人もいるし、一方では、「ユーザーの生活をよくする」などのユーザー自身の自己実現に近づくためのものもパーパスに含まれると考える人もいる。

 私自身がしっくり来る定義は、「このブランドがなぜ(WHY)この世界に存在するのか、その存在理由」というものだ。今の時代、ブランドは、ブランドパーソナリティーや生活ベネフィットの提供だけでなく、より高次元の信念や哲学を持つべきだ。そのことによって、ブランドに共鳴し応援してくれるファンも生まれてくる。極端に社会価値だけをフォーカスし顧客価値やそのブランドの独自性を追求しないものはブランドとは言えない。アップルの「違う考え方に価値があると信じる人たちを勇気づける」、パンパースの「我が子の健康で幸せな成長を望む親たちの力になる」などの独自性あふれる顧客価値と社会価値が両立できるブランドパーパスを生み出すことにつながることが理想だ。

 ミッションやビジョンとの違いという点でいうならば、パーパスはWHY(存在理由)、ビジョンはWHERE(目指す先)、ミッションはWHAT(何をなすのか=使命)と考えれば分かりやすいだろう。

企業と社会のサステナビリティ

 企業側がここまで真摯に社会の課題解決に取り組んでいるのにはさらに理由がある。それは地球環境が持続可能でなくなってしまったら自分たちのビジネスが持続可能ではなくなってしまうという切迫感だ。つまりサステナブル(持続可能)という言葉は企業にとっては2つの意味がある。地球環境のサステナビリティとビジネスのサステナビリティ。きれいごとだけでは続かないビジネスサイドの真剣さは、このサステナビリティという言葉のダブルミーニングによる。(経済産業省も(1)「稼ぐ力」の持続性・強化と(2)社会のサステナビリティを経営に取り込む、この相互作用をサステナビリティトランスフォーメーションという概念として提唱している)

 例えばイケア。マス向けのリーズナブルな家具・日用雑貨製品を扱ってきているイケアにとって、これらのグッズが手ごろな価格だからとどんどん売れ、どんどん廃棄されていったら、資源は足りなくなり、商品を製造することすらできなくなってしまう。だからこそイケアは来るべき資源不足に対して賢く向き合う必要があるという覚悟のもと、今、100%再生可能な製品づくりのイノベーションに注力している。

 例えばアディダス。世界で販売されるランニングシューズ10億足のほとんどがリサイクルされずに廃棄されている。なぜなら、シューズを張り合わせている合成接着剤をはがすのが難しくリサイクルが困難だから。こうした不都合な真実はもはや隠すことはできない。だから今、アディダスは「LOOP CREATION PROCESS」により、完全に再生可能なシューズを生み出し「同じシューズを何度も繰り返して履き続けること(LOOPさせること)」を目指している。

 プラスチックブロックブランドのレゴにとってもこの問題は非常に重要だ。このままだとレゴを躊躇(ちゅうちょ)なく子供に買う親はいなくなってしまうだろう。そこでレゴは2030年までには主製品のほとんどをサステナブル素材に代替すると宣言、「持続可能な素材センター(LEGO Sustainable Materials Centre)」を設立するとともに、昨年は、サトウキビ由来のプラスチックを使ったツリーハウスも発売している。

 アウトドア用品のブランドのパタゴニアは、自然に身を置くことを愛する人々のためのブランドである。自然環境がサステナブルで美しくあることがブランドの存在にとって必要不可欠であるからこそ、自然を荒廃させる原料を使うことをやめオーガニックコットンや再生ポリエステルにこだわり、すぐに廃棄しなければいけない製品ではなく耐久性のある製品を作り、そしてさらに地球環境にポジティブな影響を与えられることを目指すという方針を打ち出しているのだ。

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