アフターコロナの働き方

「ジョブ型=成果主義は誤解」は本当か? 同志社大学政策学部教授 太田 肇

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 コロナ禍のもとにおけるテレワーク導入がきっかけとなり、「ジョブ型」雇用導入の機運が一気に高まった。ところが一部には「ジョブ型」雇用と成果主義とを結びつける議論があり、専門家は「ジョブ型=成果主義」ではないと釘(くぎ)を刺す。たしかに「ジョブ型」の手本ともいうべき、欧米の雇用システムを成果主義と決めつけるのには誤解がある。しかし「成果主義ではない」という指摘もまた正確ではない。欧米の働き方やジョブ型雇用がほんとうに成果主義的なのかどうかは、今後の日本人の働き方や日本企業のマネジメントを考えるうえでも重要なポイントである。そこで正しい認識を共有するため、あらためてこの問題を整理しておきたい。

欧米の一般社員に査定はないが、管理職には成果主義

 「ジョブ型」にしても「成果主義」にしても、まずその概念を明確にしておかなければ混乱を招く。議論の前提として、「ジョブ型」を文字どおりに解釈し、一人ひとりのジョブ(職務)を明確に定義したうえで契約する欧米型の「職務主義」を意味するものと理解しておこう。

 混乱をもたらす第1の原因は、組織のどの階層に焦点を当てるかによって話が違ってくるところにある。

 しばしば指摘されているとおり欧米では非管理職、とりわけ現場労働者の場合、原則として査定は行われない。成果主義の一般的なイメージに基づいて、どれだけ成果主義的かというなら、人事評価によって処遇に差がつけられる日本企業のほうがむしろ成果主義的だといえよう。

 いっぽう管理職の場合、各部門の目標達成などに応じて報酬が決まる。とくに幹部クラスになると、日本とは比較にならないほど報酬に大きな差がつく。その意味で「欧米は成果主義だ」といってもあながち的外れではない。

積極的成果主義と消極的成果主義

 議論を混乱させている第2の原因は、「成果主義」の定義にある。

 成果主義を「成果を重視するマネジメント」と定義するなら、成果主義には2種類あると考えられる。一つは個人またはチームの成果に応じて給与や報酬が決まる制度であり、もう一つは個人が決められた役割を果たし、成果をあげているかどうかが問われる制度である。私は前者を「積極的成果主義」、後者を「消極的成果主義」と呼んでいる。

 欧米企業では一人ひとりの職務が明確に定義され、果たすべき役割や期待される成果が職務記述書に明記されている。したがって成果をあげることがある意味で絶対なのである。そして求められる成果があげられない場合には、報酬が減額されたり、最終的には解雇につながったりする。

 だからといって必ずしも成果がすべてというわけではなく、仕事によってはプロセスも重視される。しかし、そこでいう「プロセス」は日本企業のように成果はあがらなかったが努力したとか、遅くまでがんばったというレベルではない。研究開発部門なら開発がどれだけ進捗しているか、営業なら取引先との交渉がどこまでまとまりかけているかというように「成果につながるプロセス」が評価される。その点でも日本企業より成果が重視されているといってよい。

 要するに成果主義を「成果に応じて報酬が決まる制度」ととらえれば欧米企業が成果主義だとは言い切れないが、「成果を重視する制度」と理解するなら間違いではいない。

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