2030年の自動車産業

自動車ニューノーマル 6つのポイント 中西孝樹・ナカニシ自動車産業リサーチ代表に聞く(1)

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デジタル化に遅れた自動車業界、大きな変革期に

 公共交通機関の依存度低下、脱都市化という2つの流れを基軸に、在宅勤務の定着、社会的距離の規制、リモート学習の普及――などから、各国市場で売れ筋車種が大きく異なってくると中西氏は読む。ニューヨークなどの米国タイプや中国タイプ、東京などの先進国型などに分かれるという。「各国とも共通するのは高級車と足代わりの小型車、パーソナル及びレジャーユース、自家用車とMaaS型と二極化が進む。特徴のない中間的な車種が苦戦する」と中西氏。

 2030年に向けて車両走行距離は年率2%程度で安定成長すると中西氏は予想する。その中でMaaS型へのシフトは、ヒトの移動も物流も急ピッチで進むとみている。

 「コロナ禍でデジタルトランスメーション(DX)が一層加速する」と中西氏。自動車はフル・コネクティッド化とソフトウエア化へと突き進むという。各地域での自動車の流入規制、都市道路の低速度化が実施されれば、MaaS領域で一部自動運転の社会実装も早まると予想する。SDGs(持続可能な開発目標)への社会的な関心の高まりから、2030年の電気自動車の普及率は予測より高まるだろう。新車販売ディーラーの顧客接点のオンライン化も不可避になり「自動車販売界の待ったなしだ」(中西氏)。

 トヨタは静岡県裾野市でスマートシティの建設、実証実験を進める。「ウーブン・シティ」と名付けたプロジェクトで、約70.8万平方メートル(東京ドーム約15個分)の旧工場跡地に完全自動車専用の道路などの設計から始め、エネルギー源としての燃料電池発電などのインフラ施設は全て地下に埋設する。中西氏は「自動車技術を突き詰めていくと、走行する街や道路から設計しなければ、運転する楽しさは確保されないという発想だ」と高く評価する。クルマと暮らしを組み合わせた事業領域はメーカーに非自動車の事業拡大につながる。

 「実はデジタル化が最も遅れていた産業のひとつが自動車業界だ」と中西氏は言い切る。やや意外に聞こえる指摘だが、時速100キロを走る1トンもの鋼鉄車両を、安全確実に右折させる技術は、生易しくはない。スマホに搭載する新技術のように、ソフト開発だけでは十分ではないのだ。培った生産現場の知識や経験、綿密な擦り合わせが欠かせない。ものづくりの強みが、産業全体のデジタル変革を遅らせてきた面があるという。しかし「コロナ禍で作ってもうけ、売ってもうけ、直してもうける自動車産業のビジネスモデルは通用しなくなる」と中西氏は指摘する。

(松本治人)

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