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日本型イノベーション、シリコンバレーの歴史にヒント 「新常態のマネジメント」武藤泰明・早稲田大教授に聞く(2)

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 新型コロナウイルスの感染拡大で、企業の「成長の種」を探し出すことが厳しくなっている。人々の移動は制約され、政治・経済が混乱する中で、これまでのような研究開発の方法では効果が期待できない。それでも企業が生き残るためにイノベーションは欠かせない。マネジメントの進化史を研究する早稲田大学スポーツ科学学術院の武藤泰明教授は、米シリコンバレーの軌跡などに日本企業が目指すイノベーション開発のヒントが潜んでいると指摘する。

「イノベーション=技術革新」は歴史的誤訳

 ――新型コロナ感染でイノベーションをどのように進めれば良いのか、技術革新を担う企業の研究現場で試行錯誤が続いています。

 「1958年の経済白書で、イノベーションを『技術革新』と訳したのですが、歴史的な誤訳と言ってよいでしょう。この言葉の生みの親であるシュンペーターは『新・結合』と説明しています。テクノロジーに限定しません。新しい財貨、生産方法、販路、原材料・半製品の供給源、組織形態の組み合わせを掲げています。現代の身近な一例が回転寿司でしょう。すし職人と工場のベルトコンベヤーという、出合うはずのない両者が結合し、注文される前から握っておくという新しい生産方法も同時に生み出しました」

 「英国の産業革命で、蒸気機関車(SL)は蒸気機関の進化形ではありません。鋼鉄レール、重量に堪えられる車体と車輪の実用化など製鉄技術の飛躍的な進歩が不可欠でした。実用を目的として開発された製品は、技術者によって改良されていきます。イノベーションの結合が新たなイノベーションを生み、改良が『破壊的イノベーション』をもたらすのです」

なぜシリコンバレーにイノベーション型企業が集積したか

 ――かつてイノベーションを担っていたのは、優秀な研究者、最新の実験施設などをそろえた大学機関や巨大企業の研究所などの「イノベーション・プール」でした。現代のイノベーション・プールを代表するのは、米シリコンバレーになります。

 「米国のクルーグマン教授は『集積しているところはさらに集積する』と指摘しています。しかし、なぜそれがシリコンバレーだったのか、という点が重要です。恐らくスタンフォード大学に対して軍事予算が投下されたことが出発点で、狭隘(きょうあい)な地域に密集し、近接した企業間で非公式な交流が行われたことが発展のカギとなったと考えています」

 「研究開発型企業ばかり集めてもうまく機能しません。シリコンバレーにはベンチャー企業や研究機関ばかりでなく、工場や卸売業も多いのです。ベンチャービジネスには試作品を小ロットで請け負う近所の工場が欠かせません。新しい取引を仲立ちする情報媒介者も必要です」

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