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常識通用しない? グーグルも陥った「激動期トラップ」 楠木建・一橋ビジネススクール教授に聞く(4)

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 新型コロナウイルスの感染流行が収束せず、現在の我々は大きな転換期に直面しているようだ。変革の時代は明日をも見通せぬと同時に、革新的なイノベーションが生まれたケースも少なくない。しかし、冷静に。一橋ビジネススクールの楠木建教授は「これまでの常識は一切通用しないという『激動期トラップ』が、経営判断を誤らせる」と指摘する。時代の変化に淘汰されかねないという危機意識が、新技術などへの過剰な期待を抱かせると戒めている。

自動運転の技術進む、カギはインフラ整備

 ――新型コロナの流行は100年に1度の非常事態とされ、約5億人が罹患(りかん)したという1918年におけるスペイン風邪の世界的な流行と比較されたりしてきました。

 「21世紀に入ってから『100年に1度』とメディアで言われる事態が起きたのは、リーマン・ショックなど十数回あるそうです。約2年に1度の割合で、100年単位の大変革が起きているわけです。振り返ると、人々はいつも『今こそ激動期』と言っていることに気づきます。将来の事業展開を考えるにも、いったん近過去に遡って人と世の中の思考と行動のありようを冷静に見極める『逆・タイムマシン経営』の思考が欲しいところです」

 ――しかし人工知能(AI)や自動運転などの技術革新は文字通り日進月歩です。米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)ら先駆的な激動期リーダーの動向には目が離せません。

 「自動車とエレクトロニクスの融合は、遅くとも1960年代後半から予測されてきました。即時制御など自動運転の構成要素の進歩はめざましいものがあります。しかし『できる』と『する』のギャップが生じるところに同時代性のワナが待っています。自動車の要素技術の革新に対し、自動車を走らせるインフラ構築の難しさが課題です」

 ――2015年前後には「FCV(燃料電池車)」が急速に普及するとみられていました。

 「燃料としての水素に注目が集まりました。トヨタ自動車は水素自動車『ミライ』を発表し、経産省も水素社会実現のためのロードマップを作成しました。ガス商社である岩谷産業はFCV事業を本格化し、液化水素のプラントの能力増強を打ち出しました。しかし2020年の現在から見るとFCV普及も水素ステーションの整備もあまり進んでいません」

 「自動運転の要素技術が開発されても、車という上位システムに統合されなければなりません。さらに上位のインフラというシステムに載らなければ、人々の生活を変えるようなインパクトは打ち出せません。免許制度や道路交通法などの法整備も必要です。要素はシステムに先行するのです。自動運転のセンサーや制御ソフトの技術革新は大いに激動を予感させますが、システム全体としてのイノベーションはまだ当分先でしょう」

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