楽しい職場学

オンライン会議 キャラ立てて距離縮めよう 西武文理大学サービス経営学部専任講師 瀬沼文彰

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 コロナウイルス禍によって私たちの職場では、テレワークをする機会が増えた。オンライン会議や打ち合わせ、セミナーなどにもだいぶ慣れてきた人も多いと思われるが、対面に比べて、コミュニケーションがしにくいことは確かだ。それでも、私たちは、日々、誰かとコミュニケーションをする。むろん、仕事では、まじめに話すことが前提だが、いつでも重い雰囲気で、深刻に話をしていては精神衛生上よくない。コロナの状況は改善に向かっていないが、そういう環境下でも何か楽しさを見つけることは精神面や将来の希望という意味では重要なはずだ。特に、誰かとコミュニケーションをする上では、楽しくすることは必要不可欠なことではないだろうか。

コスパ重視のコミュニケーションのまん延

 近年のコミュニケーションの特徴として、ビジネスの場では、労働生産性を重視するなかで、どちらかといえば、雑談は避けられがちで、主題を端的に話すという効率が重視される傾向があった。この傾向はコロナ禍のテレワークで加速度を増した。

 社内の知り合いや上司・同僚など相手のことをよく知っている人であれば、コミュニケーションは効率重視でいいのかもしれない。しかし、初対面やクライアント、親しいとは言えない関係では、相手のことはほとんど分からない。次々と新しい人と仕事を進めていくような場合はなおさらで、相手の印象は残らず、会議やプレゼンの数をこなしても、ことごとく忘れていってしまう。それは、自分にも当てはまることでもろ刃の剣となり、自分も面識のない人には覚えてもらえないことを意味する。

 短時間に極力無駄を省き、最低限伝えなければならない内容で、その効果を重視するコミュニケーションはある意味、コスパ重視のコミュニケーションと言えるのかもしれない。コスパを重視するコミュニケーションでは、覚えてもらえない、印象に残らないだけではなく、楽しさや笑いなど生まれる要素はほとんどないと言わざるを得ない。

日本人の笑いは身内ウケばかり

 私は笑いについての研究を行っているが、日本人の笑いの特徴としてしばしば指摘されること――それは、「日本人は身内ウケが圧倒的に多い」である。私たちは、家族や友人、同じ職場の人同士であれば冗談を言い合ったり、笑ったりできるものの、見知らぬ誰かとはそれをすることが苦手だ。知り合いであれば、お互いに距離感が近いので、共有していることが多い。その場合は、そこから笑いや冗談を言い合える。一方で、共有する前提がない初対面や赤の他人には、笑いや冗談は言えない。日本では、お笑い芸人たちでさえ、テレビを介して、まずは身内空間を作り、自分のキャラを知ってもらうなかで、その後、笑いを作ることが多い。

 コロナ流行以前には、対面で私たちは、名刺交換を行い、何らかの雑談や世間話などをして徐々に相手のことを知り、自分のことを知ってもらい、共有した前提を作ってから一緒に笑っていた。むろん、笑いだけが私たちのコミュニケーションを楽しくするわけではないが、笑いは、相手との距離感を近づけるだけではなく、親しさや絆を深める効果がある。また、笑いのツボは、その人自身を知る手がかりになると同時に、自分の紹介としても機能していたはずだ。

 にもかかわらず、コスパ重視のコミュニケーションでは、それらの「いい意味での『無駄』」は省略されがちだ。テレワークでは、仕方がないと割り切られてしまいがちだが、少人数で打ち合わせや会議、プレゼンをする機会などがあれば、短くても自分を知ってもらう何かを用意しておいてもいいのではないだろうか。それは、自己紹介でもあるし、自分のキャラ紹介とも言えるだろう。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。