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参天製薬・コマツ…ERP導入でわかる経営センス 楠木建・一橋ビジネススクール教授に聞く(3)

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 行政、ビジネス、医療、教育など日本社会の幅広い分野でIT(情報)化が急がれている。非接触型ビジネスが急拡大するであろう2020年代に、企業にとってIT力の優劣はそのまま業績の差に直結しそうだ。しかし旬の新情報を追い求めるあまりに、バイアスがかかった「同時代性のワナ」を見過ごしてはいないか。一橋ビジネススクールの楠木建教授は「ITツールの導入の意思決定には経営センスの有無がはっきり表れる。戦略が先、IT化を後とルールを決めなておかないと失敗する」と指摘する。企業間で明暗が別れたのが、ERP(統合基幹業務システム)導入のケースだと分析している。

 ――経営資源を計画的に管理・運用し、財務などホワイトカラーの業務効率を高めるERPは1990年代後半から業務改革の秘密兵器として捉えられてきました。

 「バブルが崩壊し、企業がコスト削減を強く求めていた時代背景があります。人員削減は最後の手段で、まずシステム運用など固定費のカットが目標でした。さらに自社内の各部門に分散したシステムの連携が取りにくい点の改善も課題でした。安定した技術基盤の上にシステムの標準化が進み、部門横断的な基幹業務を連携させるERPのような汎用ソフトを活用する素地が整っていました」

 「パイオニア的存在のSAPジャパンは93年度からERPの主力アプリケーション販売を推進し、山之内製薬(現アステラス製薬)、日本リーバ(現ユニリーバ・ジャパン)、松下電器産業(現パナソニック)など大手6社に納入しました。大手がこぞって導入するようになり、日本のERP市場が急拡大しました」

 ――いち早くERPパッケージを導入して経営効果を上げた企業のひとつが参天製薬です。

 「社員の人海戦術で伝票のやり取りをするなど前近代的・非効率な同社の業務を改革したのが、当時の森田隆和社長です。中期経営計画の策定に自ら表計算ソフトを活用するなど異色の経営トップでした。売り上げが増加しても購買に関わる人員は抑えられ、経理でも以前より少ない人数で必要な情報を提供できるなど、さまざまな点が大きく改善しました」

 「一方で国内最大級のERPを導入したコマツは、97年のプロジェクト開始から全面稼働まで5年かかりました。導入が混乱した一因は、独自システムで一部業務を対応するようにしたことでした。当時の経営トップは『我々の勉強・経験が不足していたことは否めない』との言葉を残しています」

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