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GAFA批判が示す独占の系譜 日米で競争戦略に違い 「新常態のマネジメント」武藤泰明・早稲田大教授に聞く(1)

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日本は「レッド・オーシャン」 米国は「独占」

 ――米国の企業社会が中間管理職を生んだと分析していますね。

 「大会社は経営者1人では管理できません。米国では専門的な経営者より中間管理職の方が先に生まれています。ハーバード大が早くも大学院にビジネススクールを設置したのは1908年です。ケースメソッドというユニークな教育は、架空の企業を学生に提示して経営方針などを策定させる実務的な内容です」

 ――日本企業が今日でも最も影響を受けているのは米企業のありようですね。

 「ただ日米では基本的なスタンスが異なる点も少なくありません。日本企業が競争で目指すものは、『レッド・オーシャン』戦略です。ライバル企業に打ち勝つのが最終目標です。このため品質を向上しコストを下げ、より良質なサービスを提供する――。経営者の視線は、ライバル企業に働きかけるよりも内側に向いています。自らを高める経営です。でも競争はなくならないので、レッド・オーシャンはレッドのままなんですね。ブルーにならない」

 「競争の目的が、競争しなくて済むようになることは米国でも同じです。ただ米企業の手段は『独占』です。19世紀末の米国は企業合同を進め、競争回避によって大きな利益を獲得しました。かつて米ゼネラル・モーターズ(GM)は自社のバス事業拡大のために路面電車会社を買収しました。目的は廃業させることでした。ゼネラル・エレクトリック(GE)など世界の白熱電球会社は談合で電球の寿命を1000時間以内に抑えるという談合をくみました。『ポイボス・カルテル』と呼ばれています」

 「21世紀の現代でもフェイスブックがインスタグラムを買収しています。買収は競争の代替的な戦略なのです。各産業に少数の巨大企業が存在して寡占的な状態を生んでいるのが、米企業の基本的な特徴です。ハーバード大のマイケル・ポーター教授が唱える競争戦略論が有効だとされるのは、このためです。相手がどう動くかが重要なのです。逆に日本ではあまり人気が無いのですが」

グーグル提訴、スタンダード・オイル分割から100年超

 ――米司法省はグーグルを反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで提訴しました。政権奪取が確実なバイデン前副大統領の民主党も、GAFAがデジタル分野を独占していると強く批判しています。

 「約100年前の米国でも似たような光景が見られました。1911年のスタンダードオイル分割です。USスティール、GM、AT&T…現在のGAFA批判は100年ぶりに再現した状況ではなく、反トラスト法を巡る企業分割と再統合が続いてきた結果です。ただGAFAがこれまでの決定的にケースと違うのは、影響が米国内だけではなく、全世界に及んでいる点でしょう」

 ――日本企業のマネジメントはどう改革されていくのでしょうか。

 「かつて企業別組合、終身雇用、年功制を日本型経営の特徴と位置づけられました。3点とも人事・労務政策で企業内の長期的な能力向上が可能になります。日本独特の『ワイガヤ』は企業の知識を高めて創造的な経済活動を可能にしたとの指摘もあります。ただ人材も知識も容易に移転可能な現代では日本型経営も転換期にあります。イノベーションを喚起する新たなイノベーション・プールを作り出せるかどうかがカギになります」

(聞き手は松本治人)

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