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GAFA批判が示す独占の系譜 日米で競争戦略に違い 「新常態のマネジメント」武藤泰明・早稲田大教授に聞く(1)

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 新型コロナウイルスの第3波が到来している可能性が高い。企業は感染状況を注視しつつ、きめ細かく対応していかねばならない。限られた経営リソースをどう生かし収益に結びつけるか、マネジメント力の優劣がそのまま業績の差にあらわれそうだ。コロナ禍を乗り切る新常態(ニューノーマル)の経営ヒントは、歴史の中にあるのかもしれない。早稲田大学スポーツ科学学術院の武藤泰明教授は、マネジメントの進化史を研究する第一人者。GAFA批判の高まりが示すように、同じ先進国の日米でも、企業のスタンスには異なる点が少なくないという。

米国の強みは技術革新でなくマネジメント力

 ――持てる経営資源をどう効率よく動かせるかは、昔も今も大きなテーマです。人類は「企業」を生み出すはるか以前に「マネジメント」を発達させていたのですね。

 「マネジメントの文明史は約5000年前のピラミッド建設まで遡ることができるでしょう。現場の担い手は、これまでの通説だった奴隷の労働者ではなく、エジプトの農民でした。ファラオ(王)は農産物の生産活動を妨げないように農閑期に労働させていました。農繁期は栽培・収穫に専念させることで、エジプト王朝は税収を確保したのです。工事の季節を限定し、仕事のない農民に副業収入を提供しました」

――古代ギリシャ都市の「交易」や「分業」は現代のグローバル経済にも通じていそうです。我々の知る「会社組織」が生まれたのは中世に入ってからでした。

 「代表的なのは17世紀の東インド会社でしょう。海路による東アジアや中南米との交易はかなりリスクが高く、会社はリスクテイクの量を減らすための仕組みなのです。イノベーションの同時伝播(でんぱ)で、オランダや英国だけでなく、フランスなどにも会社組織が普及しました。現在では日米欧とも株式会社を採用しています。しかしワクは同じでも、歴史や文化の違いでマネジメントの運用はかなり異なります」

 ――2020年時点のグローバル経済では、GAFAをはじめとする米国企業が、やはり圧倒的な存在感を示しています。

 「米国は『移民による植民地』というまれな成り立ちです。さまざまな業種で同時に進む途上国型の産業革命を一気にまとめて経験しました。これは日本の明治維新と変わりません」

 ――広大な国土と豊富な資源を背景に、エジソン(1847~1931年)らのイノベーションの伝統も併せ持って、経済超大国を実現したように映ります。マネジメントの巧拙は、あまり影響しなかったのではないでしょうか。

 「米国は技術革新というより、実はマネジメントの国なのです。エジソンの発明は蓄電器や白熱電球など商品化・実用化が中心でした。初期の米企業の得意分野は、互換性部品の生産やミシンの割賦制などといったものでした」

 「19世紀後半から巨大な国内市場をカバーするため、統合された大企業が出現しました。米国のマネジメントを創出したのが、太平洋側と大西洋側の東西を結ぶ鉄道会社でした。地域別事業部制、階層組織、経営管理、ラインとスタッフの区分――などが生まれました」

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