アイサム&トランザム 2020より

 AI/SUM(下)ソーシャルグッドのためのデータサイエンス&AI

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 人工知能(AI)研究・開発において世界をけん引し続ける英国は、AIを通じた社会課題解決にも意欲的だ。2018年からは、英アラン・チューリング研究所と一般財団法人トヨタ・モビリティ基金が人工知能を活用した都市計画と交通流最適化に向けた共同研究を開始。複雑化する都市の交通課題解決のためのソリューションを提供している。

 ウィリアム・チャーニコフ博士 トヨタ・モビリティ基金 シニアマネージャー グローバルリサーチ&イノベーション トヨタ・モビリティ基金は、より移動のやさしい社会を創造するために2014年8月に設立された。モビリティに関するトヨタの知見を活かし、また大学や研究機関、企業などと連携しながら、モビリティの課題に対するソリューションを提供することを目的として活動している。目指すのはより多くの人たちが、より多くの場所に行ける社会だ。

デイモン・ウィシック アラン・チューリング研究所チューリング・フェロー/ケンブリッジ大学 講師 アラン・チューリング研究所はイギリス政府によって、データサイエンスとAIの発展を目的に設立された。最先端の研究を通じた課題解決に寄与し、社会的利益の向上や次世代の科学者の育成などを目指して活動している。つまり、データサイエンスや機械学習をソーシャルグッドのために活用することを旨とする組織だ。

 チャーニコフ 我々とアラン・チューリング研究所はテクノロジーをソーシャルグッドのために使いたいという理念が共通しており、そこにシナジーがある。18年以降、AIを活用した都市計画と交通流最適化に関する共同研究を開始したのも自然な流れといえる。

この研究の目的は、AIが組み込まれた交通信号制御システムの構築や、渋滞や高濃度大気汚染地域の共有をはじめとする、交通事業者や都市計画者が利用可能な様々なメカニズムの解明などだ。

 今日、都市交通をとりまく事情は複雑化している。その背景には大都市圏の人口増加やライドシェアリングの普及、自転車利用者の増加などがある。我々は、都市部で暮らす人が、安全かつ健康に暮らすためのソリューション提供を目指している。

 テクノロジーは日々進化しているが、交通管理の課題には対応しきれていない面もある。混雑や渋滞、天候や事故の有無など、刻々と変化する状況をリアルタイムで把握し、都市交通の管理者などが状況を改善するための意思決定をスムーズにできるようなシステムが求められている。

 ウィシック 都市交通が抱える課題をAIで解決するにあたり、我々は大きすぎる問題と小さすぎる問題に同時に対応しなければならない。

 大きすぎる問題とは例えば次のようなことだ。ある交差点で混雑が生じ、解消のために管理者が信号を赤にしたとする。するとバスが信号にひっかかり、乗客は「バスは遅い」と認識する。翌日、乗客の多くは自家用車を利用するようになり、道路の混雑はさらに悪化する。都市交通は様々な要因が複雑に絡み合って成立しており、一つの判断が意図しない波及効果をもたらし得る。

 また小さすぎる問題とは、都市交通課題解決のためのソフトウェア開発者は、現場のルールや文化的背景などを理解しなければならないということだ。交通には様々なローカルルールがあり、それらに対応できなければ、いかに技術的に優れたシステムといえど課題を解決することは難しい。

 大きすぎる問題と小さすぎる問題を解決するには、そのエリアの交通をガバナンスする人や組織と、そのコミュニティー、研究者をつなぐ必要がある。この点においても多様なプレーヤーと連携してモビリティや交通インフラへの知見を有するトヨタ・モビリティ基金と我々が一緒に研究を進める意義は大きいと実感する。

 チャーニコフ 研究成果の一つであり、今後の都市交通課題解消に向けて期待できるのが、モビリティデータツールキットだ。このキットはAIによる機械学習を活用し、都市交通やあらゆるモビリティの管理者がしっかりとミッションを果たせるように支援する。

ウィシック モビリティデータツールキットは、モビリティデータ版のエクセルともいえるものだ。専門知識がなくても操作可能で、かつ交通管理に必要な情報を瞬時にわかりやすく把握できる。例えば、地図上に走行中の電気スクーターやアイドリング中の電気スクーターをリアルタイムで表示でき、管理者は混雑状況などを瞬時に把握できる。エリアごと、あるいはスクーターの所有者ごとなど、様々な項目ごとのデータを表示することも可能。ものの数分で、今何が起きているかを俯瞰(ふかん)して捉えることができるので、交通状況を改善するためのスムーズかつよりよい意思決定に貢献するだろう。

チャーニコフ データサイエンスは、今後も都市交通の在り方に劇的な進歩をもたらすだろう。人々の安全性の向上や移動の自由の拡大に向け、今後も歩みを進めていく。

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協力:(一財)貿易・産業協力振興財団、英国市場協議会

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