中小企業のためのオンライン採用学

変わる採用手法 中小企業ができる3つの工夫 ビジネスリサーチラボ代表 伊達洋駆

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■3. 伝わった感覚が得られにくくなった → 遠回りでも求職者の企業選び支援

 オンライン採用による第3の変化は、求職者の「伝達感」が減ったことです。リアルとオンラインのコミュニケーションを比較した興味深い研究があります。

 その研究によれば、リアルの方が情報が伝わった感覚を得られやすいものの、オンラインの方が実際に情報は伝わるとのことです(※4)。要するに、オンラインになると客観的な「伝達度」は増すが、主観的な「伝達感」は減るということです。

 この影響は採用にどう現れるでしょう。オンライン化によって求職者は、企業からの情報が十分に得られていないと感じやすくなります。その結果、内定を得ても「本当にこの会社に決めて良いのか」と不安になることが予想されます。

 実際に、ビジネスリサーチラボの内定者アンケート調査によれば、ある企業において昨年よりも今年の方が、内定保留の期間が長くなっていました。同じく実施したインタビュー調査の中では「この会社に入ることに踏ん切りがつかない」との声も聞かれました。

 もともと、中小企業は採用予定者に対する内定者の割合(内定充足率)が大企業よりも低い傾向にあります(※5)。加えて、踏ん切りがつかないとなると、中小企業にとっては採用数をいつ充足できるか一層読みにくくなり、苦しい状況です。

 そこで有効なのは、求職者の企業選びを支援することです。各人の適性やニーズに合った企業がどこかを一緒に考えます。それが自社であれば自社をアピールすれば良いですし、そうでない場合は他社をすすめます。

 そんな遠回りをしている暇などない。そう感じる方もいるかもしれません。しかし、採用がうまくいっている企業の多くは、候補者に寄り添い、候補者のキャリアを支援するような関わり方をしています。

 更に、候補者が就活時に自分や企業についてしっかり考えた上で企業を選ぶと、入社後にも良い影響が生まれます(※6)。伝達感が不足する求職者の企業選びを支援することは、入社後にも効果をもたらすのです。

伊達洋駆(だて・ようく) 株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了、修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、11年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、HR領域を中心に調査・コンサルティング事業を展開し、研究知と実践知の両方を活用したサービス「アカデミックリサーチ」を提供。13年から採用学研究所の所長、17年から日本採用力検定協会の理事を務める。共著に『「最高の人材」が入社する 採用の絶対ルール』(ナツメ社)、『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム)

※1:Gati, I. (1986). Making career decisions: A sequential elimination approach. Journal of Counseling Psychology, 33, 408-417.

※2:株式会社学情・株式会社クオリティ・オブ・ライフ(2017)『「地域中小企業の人材確保・定着に関する調査」報告書』(最終閲覧:2020年11月2日)

https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/jinzai/data/jinzaikakuho_chosa.pdf

※3:深田博巳(1998)『インターパーソナルコミュニケーション:対人コミュニケーションの心理学』北大路書房。

※4:杉谷陽子(2008)「インターネット上の口コミの有効性:情報の解釈と記憶における非言語的手がかりの効果」『産業・組織心理学研究』第22巻1号、39-50ページ。

※5:例えば、株式会社ディスコ(2019)『2020年卒採用内定動向/2021年卒採用計画調査:新卒採用に関する企業調査(2019年10月調査)』を参照。

※6:例えば、竹内倫和(2012)「新規学卒就職者の組織適応プロセス:職務探索行動研究と組織社会化研究の統合の視点から」『学習院大学経済論集』第49巻3号、143-160ページを参照。

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