アフターコロナの働き方

知識より知恵 努力より快楽 非優等生採用が中小を救う 同志社大学政策学部教授 太田 肇

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 前回、テレワークは中小企業にとって有利な点が多く、経営や人材活用にそれを生かすことが大切だと述べた。

大企業とは違う採用基準で

 社員の採用においても、中小企業の有利さを最大限に生かすことがポイントになる。そのためには大企業とは違う基準で社員を採用すべきである。

 まず個人の志向や能力の性質によって、人材を2つのタイプに分けてみよう。

(A)組織人型/(B)起業家型】
組織人型:組織に対する忠誠心が厚く、組織のなかで職業生活を完結することを想定している。
起業家型:いずれ独立し起業することを視野に入れている。

【(A)グローバル型/(B)ローカル型】
グローバル型:居住地にこだわらず、社命があれば国内はもとより海外への転勤もいとわない。
ローカル型:地域への定住を重視する。

【(A)知識型/(B)知恵型
知識型:豊富な知識を備え、知識を用いて仕事をこなすことを得意とする。
知恵型:知識より勘やひらめき、創造力などが優れている。
それぞれ「形式知型」「暗黙知型」と言い換えることができよう。

【(A)オールマイティー型/(B)一芸型】
オールマイティー型:幅広くバランスのとれた能力を備えており、多様な仕事をこなせる。
一芸型:得意・不得意がはっきりしていて、特定の分野に秀でている。

【(A)刻苦勉励型/(B)快楽追求型】
刻苦勉励型:コツコツと努力し、着実に物事を成し遂げるのが得意。
快楽追求型:楽しいこと、面白い仕事にだけ没頭する傾向がある。

非・優等生タイプが活躍する時代に

 容易に想像がつくとおり、(A)は伝統的な大企業に多い優等生タイプである。キャッチアップ型経済、そして工業社会、とりわけ少品種大量生産型システムのもとでは(A)のようなタイプの人材が求められた。しかも組織の論理に適合しやすいため、大企業は(A)のような人材を好んで採用してきた。たとえ異質な人材を求めたとしても、いわゆる高学歴の新卒者を採用する以上、(A)のようなタイプに偏るのはやむをえなかった。

 しかしポスト工業社会、AI社会への移行、そしてコロナ禍の洗礼を受けた働き方の革命的な変化によって、逆に(B)タイプの人材が求められるようになり、また活躍できる条件が整ってきている。

 第1に、日本企業、日本経済の地盤沈下が続くなか、イノベーションの起爆剤となる起業家型人材が必要になっている。そして情報・ソフト系の業種では、設備や機械に多額の投資を要する製造業と違い、資金面でも起業・独立がしやすくなった。

 第2に、インターネットなどの普及により、地方の中小企業に勤めていてもグローバルな競争にハンディなく参加し、最先端の仕事に従事できるようになった。有能だが何らかの理由で地元から離れられない人、地域に定住することを望む人は少なくない。そこにターゲットを絞るのも一つの採用戦略である。

 第3に、インターネットやAIによって知識や情報は容易に入手可能になった。いっぽう、人間特有の勘やひらめき、創造性といった広い意味での知恵がますます求められるようになっている。そして、このような知恵は学歴や偏差値とほとんど関係がない。しかし、周囲も自分自身も能力の価値に気づかないまま、埋もれている人材は多数存在する。

 第4に、付加価値の源泉として個性が求められる時代になり、何でも無難にこなせる人材より、一芸に秀でた人材に活躍できる機会が広がってきた。

 第5に、ユニークなアイデアやひらめきは精神的な「フロー」の状態、すなわち興味を引かれ没頭しているときに生まれやすい。遊びの延長からビジネスの芽が生まれるケースもあり、いわゆる「オタク族」がヒットメーカーとして活躍している職場もみられる。

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