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コロナ禍で戦う 世界の日本人起業家 カギはピボット戦略 都留文科大学教授 佐脇英志

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 コロナ禍が企業活動に打撃を与えている。日本企業の多くが今年度減収減益見通しだ。影響は大企業より中小・ベンチャー企業のほうが大きいだろう。こうした状況は海外でも同様だ。特に海外で日本人が起業した場合は外国企業ゆえにその国の支援を得られないことがある。しかし、こうした逆境に負けない起業家もいる。共通しているのは、ピボット(事業転換)戦略。小回りの利くベンチャー企業のメリットを生かし、海外で事業を拡大させている3人の起業家を紹介することで、コロナ禍に打ち勝つ事業戦略を探りたい。

■ケニア 農家組織し直接販売―――薬師川智子氏

 ケニアの貧困・食糧問題解決に取り組む農業サプライチェーンマネジメント会社「Alphajiri Ltd.」(アルファジリ社)の CEO 薬師川智子氏は、貧困に苦しむケニア・ミゴリ郡の小規模大豆農家に対し、種子や肥料の貸与・農業指導などの生産量と品質を向上させるシステムを提供することで、収入向上をサポートしている。約500人の会員農家を約30人ずつのグループに編成し、活動を支援。収穫された高品質な大豆など農産品を一定水準の価格で買い取り、現地の加工メーカーやレストランに販売している。

 ケニアでは、3月13日に最初のコロナ感染者の確認が発表され、数日のうちに、全国の学校の休校やバーなど夜間営業の停止が決定された。1週間後には、空港の完全封鎖、2週間後には夜間外出禁止が出され、3週間後の4月6日にはナイロビ首都圏のロックダウン(都市封鎖)が施行された。

 コロナ禍により、アルファジリ社では、農作物の販売先であるレストランが閉鎖し売り先を失ってしまった。1日平均20軒の顧客にデリバリーしていたのが、1軒まで減少した。4月の売り上げは、前月比82.2%減まで落ち込んだ。

 こうした状況を打破しようと、小売店舗を作り、一般消費者に直接販売に乗り出した。6月、首都ナイロビに「greengrocer」という新鮮・健康をコンセプトとした有機農産物の小売店をオープンした。さらに、防腐剤と砂糖なしの天然ジュースとピーナツバターやココナツオイル、グラノーラ、はちみつ、ローストカシュー等の高品質製品の加工販売を始めた。これにより、業者によって安く抑えられていた販売価格を自分でコントロールすることができ、一気に業績が改善した。

 社会起業家である薬師川智子氏は「業績を挽回する」という考えより、むしろ「農村の農家のために何ができるか?」を常に考えて行動した。小売店で色々な作物を農家から買えるようになり、農家に貢献できるようになってきた。さらにアルファジリ社の売り上げ、利益も上がり、理想とするエコシステムが徐々に作らてきたという。

■ミャンマー 現地の人向けにオンライン授業――山浦康寛氏

 ミャンマーでは、3月24日に最初のコロナ感染者が政府から発表された。全ての学校と官公庁が閉鎖され、3月31日からは国際線が着陸禁止となり、ロックダウン状態となった。最大都市ヤンゴンで日本人を中心にした外国人向け事業から現地の人向け事業に転換したのが山浦康寛氏だ。

 山浦氏は2015年ヤンゴンでFINAL sec Co., Ltd.を設立し、シェアハウス事業、外国人向け英語・ミャンマー語家庭教師、ミャンマー語検定事業等を行っていたが、コロナ禍に直面し、大きな打撃を受けた。家庭教師事業に関しては、半分以上の日本人が日本に帰国し、残っている日本人に対しても対面で授業することが難しくなり、授業自体を一時的にストップした。主力の家庭教師事業は、売り上げは激減し立ち行かなくなった。

 ちょうどそのころ1対1の現地の人向けのオンライン学習を開始した。ロックダウンで家にいることが多くなったことで、生徒数、売り上げが増えた。当初、講師数4人、生徒数32人が、8月時点では、講師数62人、生徒数1760人となり、既存事業の打撃をカバーしている。オンライン授業を始めるにあたり、(1)1対1の授業(生徒とのインターラクションを重視)、(2)オンライン専用コンテンツ(オンラインで受ける前提で開発)、(3)教師にオンライン向けの授業方法を徹底的にトレーニング、などの取り組みが、功を奏した。粗利は低いものの、授業の質が向上し、生徒の客満足度も高く、今では、売り上げ自体は、現地の人向けのオンライン授業が事業の柱になったとという。

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