アフターコロナの働き方

仕事を「自分ごと」化  テレワーク時代の人材戦略は中小優位 同志社大学政策学部教授 太田 肇

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 テレワークが広がるこれからは、経営の面だけでなく人材マネジメントの面でも中小企業に有利な点が多い。

 第1にデジタル化のもとでは「規模の経済」が働きにくく、むしろロットが大きいことにともなうムダ、すなわち規模の不経済が生じやすい。逆に中小企業は、規模が小さいことがハンディになるどころか、プラスになる場合もある。モノも、サービスも、人も、そのときに必要なだけ動かせばよいからだ。

管理職を「中抜き」

 第2に、大企業は制度のしがらみや伝統、それに乗っかった既得権が重荷になって大胆な改革が行いにくい。

 たとえばテレワークのもとでは会社や部署の内外を隔てる壁が薄くなり、容易に外部とコミュニケーションがとれるようになる。また管理職もたくさんいらなくなる。管理職の役割のうち大きな比重を占める情報の伝達、仕事の配分・調整といった仕事が当事者どうしで容易に行えるようになるからである。しかし伝統的な階層型組織を崩すのは至難の業で、既得権者である管理職層が強く抵抗することも目にみえている。

 その点、中小企業は組織が身軽で柔軟だ。とりわけオーナー経営の場合、トップのリーダーシップで思い切った改革ができる。

 第3に、後述するような理由から、社員の高いモチベーションを引き出せる。

中小企業に「ジョブ型」は適さない

 ポイントは、これらの利点を生かせるかどうかである。

 コロナ禍における経営や人材マネジメントの議論は、そのほとんどが暗黙のうちに大企業を前提にしている。マスコミなどで紹介される先進事例も、その大半が大企業のものだ。このように偏った情報に影響され、先進的な大企業に追随することだけを考える中小企業経営者がいる。いっぽう中小企業向けの新鮮な情報が乏しいため、どんなシステムを取り入れるべきか戸惑っている経営者も少なくない。

 代表的な例が、いわゆる「ジョブ型」雇用である。ビジネス界ではいま伝統的な「メンバーシップ型」から欧米式の「ジョブ型」への転換が叫ばれており、名だたる大企業がジョブ型の導入をつぎつぎと発表している。

 しかし大半の中小企業経営者は、ジョブ型への切り替えなどとうてい無理だという。少ない人員にそれぞれ特定の職務だけを担当させるのは非効率だし、業種によってはいつその仕事がなくなるかもわからないからである。

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