日経SDGsフォーラム

ひと味違うリース会社 SDGsで人と社会に喜びを

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 公園を再生して地域の絆をよみがえらせ、自社で手掛けるショッピングセンター内に母親が子供の世話をしながら働けるスペースを設ける――大和リース(大阪市)はひと味違う建築リース会社だ。こうしたSDGs(持続可能な開発目標)の実践が企業価値を高め、ひいては会社の存続を確かなものにすると判断したのだ。

大和リース 新規事業の公園再生、笑顔咲く場に

 「公共用地の中で最も有効活用の可能性を秘めているのが公園」と大和リースの森内潤一取締役は説く。完成直後こそにぎわうが、メンテナンスが滞って利用客が減り、やがて雑草が生い茂る。これを立て直すのがパークソリューション事業だ。今年7月にオープンした「泉南りんくう公園」(大阪府泉南市)は全長2キロ、広さ11ヘクタールの土地にグランピング、アスレチック、温泉、飲食店、サッカーグラウンドなどを備える。

 公園用地として塩漬け状態だったのを泉南市が大阪府から無償で借り受け、大和リースが総事業費約23億円を投じて整備。30年間、事業者として管理・運営する。

 コロナ禍でインバウンド(訪日外国人)が消滅したにもかかわらず、グランピングエリアは2021年2月末まで予約が満杯だ。「隣接するスーパーで食材や酒を買えて、土・日曜日には地元の岡田浦漁業協同組合がマルシェを出店し、新鮮な魚介類を提供する」と担当の本田考周課長代理。大和リースや店舗だけが収益を得るのではなく、地域経済も潤す仕組みを設け、地元と良好な関係を築いた。SDGs目標11番目の「住み続けられるまちづくりを」だ。

 大阪城公園や鶴見緑地(大阪市)、鳥居崎海浜公園(千葉県木更津市)などでも同様の事業に取り組む。競輪場跡地を再開発した「ブランチ大津京」(大津市)では敷地約6万4800平方メートルのうち天然芝の公園が約1万5000平方メートルで2割強を占めた。「ショッピングセンター(SC)の中の公園ではなく、公園の中にSCを置く感覚」と森内取締役は語る。自粛期間中、SCの一部は閉めていたが公園部分に大勢が集まり、ポテンシャルの高さを証明した。

 ブランチ大津京には業務提携先のママスクエア(東京・港)が出店している。母親は子供と一緒に出勤し、職場に隣接する託児スペースに子供を預ける。母親は仕事をしながら、子供に食事を与え、おむつを替え、泣いていたらあやすこともできる。仕事は大和リースが受託した図面作製やオペレーターなどのアウトソーシング業務だ。これは目標8番目の「働きがいも経済成長も」にあたる。

 19年11月にはSDGsに準拠したまちづくりのプロジェクトを公募した。103件の中から採択した6件の資金は一般からのクラウドファンディングで集め、目標額を達成した。同じ額を大和リースが寄付して支援した。担当の田中沙耶香上席主任は「スタートアップの事業化につなげたい」と話す。

 福岡市で展開する自社SCには企業や家庭から廃棄前の食材を集約し、必要とする福祉活動などに提供する「フードバンク」用の食材保管コンテナを設置した。

 「食品ロス」が解消でき、SDGsの目標1番目の「貧困をなくそう」と2番目の「飢餓をゼロに」につながる。大和リースの様々な領域にSDGsの要素が浸透するようになってきた。



まちづくり・環境緑化「何をしたら役立つか」自問――

 9月9日、大和ハウス工業グループを興した石橋信夫氏の生誕100周年記念式典が故郷の奈良県川上村であった。会場には「創業100周年(2055年)で売上高10兆円のグループを作ってくれ」という夢を石橋氏から託された大和ハウス本体とグループ各社の首脳らが集った。
 大和リースが建築リース事業だけにとどまらず、公園再生や環境緑化などに間口を広げることができるのは、グループの目標が売上高10兆円と明確で、こまごまとした制約がないからだ。ただ、この目標だけでは単純な売り上げ至上主義に陥る。石橋氏はさらに「何をしたらもうかるかではなく、何をしたら世の中の役に立つか」を考えるよう後継者たちに求めた。まさにSDGsの発想だ。
 官民連携の豊富な経験がある。ただ、それだけでは不十分だ。コンペで他社と競った場合、SDGsにカウントできるような実績の多寡が採択を左右するという。SDGsへの取り組みでビジネスチャンスを開拓しているのだ。
 日本ではボランティア活動を大げさに考える傾向がある。余裕のある範囲内で自らの余った時間を提供すれば十分なのに、手弁当で滅私奉公をするのがボランティアと思っている人さえいる。けれど我慢だらけの手弁当ではいずれ息切れする。
 SDGsの活動も同様で、一方的な企業の持ち出しでは継続できない。森内取締役は大和リースを「新しい生活様式へのチャレンジの真っ最中、当社が果たせる役割とは何か。変化を求めて、挑戦する会社でありたい」と話す。基幹事業の自社運営SCに対し、SDGsに則した様々な機能を付加し、魅力と収益力を高めるのが大和リースの戦略である。

(編集委員 竹田忍)

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