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ふるさと納税、課題解決型に関心 職人育成や新薬開発

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 新型コロナウイルスの感染が止まらない中、企業や雇用支援を狙いとした「ふるさと納税」が目立ってきた。同制度は、菅義偉首相がかつて主導し実現させた政策で、新内閣の目標である地方創生とも結びつきが深い。返礼品に新鮮な農産物や特産品などに加え、地元中小の製品を押し出す自治体もあるが、返礼品のないケースも出てきている。日本総合研究所調査部の星貴子・副主任研究員は「寄付する人々も返礼品の魅力から社会問題の解決という視点でふるさと納税に関心を向け始めている」と指摘する。

若手育成訴え寄付金が2倍以上に

 高級洋服店・英国屋(東京・中央)の小林英毅社長は、返礼品としてオーダースーツ仕立て補助券を供給している埼玉県北本市のふるさと納税額に目を見張った。6~9月期の仕立て券の合計が約6000万円と前年と比べ倍以上に伸びたからだ。同社は日本のノーベル受賞者が授賞式用の夜会服を仕立てることなどで知られ、北本市に子会社の縫製工場を持つ。典型的な首都圏のベッドタウンである北本市では、返礼品の約9割が英国屋の仕立券で占める。

 伸びたきっかけはふるさとの納税サイト上で「6月から若手の縫製職人育成の支援を強調した」(小林社長)こと。商品内容を変えたわけではないものの、若手育成を訴えたことが「寄付する方々の心に刺さった」(同)。縫製職人の高齢化が進んでおり「このままではテーラー文化が消えてしまいます」といったセリフも追加した。同社では返礼品での売り上げを地元工場における熟練職人の雇用維持、ベテランと若手をバディで組み合わせた教育態勢の強化、縫製練習用の服地・副素材支給に充てるという。

 豪華な返礼品を規制した影響もあって、寄付総額には頭打ち傾向が出ているものの、ふるさと納税の魅力は、やはり「お得感」。コロナ禍でトイレットペーパーなどを返礼品とする岩手県北上市などが昨年度に寄付金額を伸ばし、「ステイホーム」の生活経験から岐阜県関市の刃物製品なども注目度が高い。他方、星氏は「医療・介護者支援といった緊急性の高い社会問題にも関心が高まっている」と話す。

 神奈川県が3月に実施した、新型コロナ治療薬の開発や関連情報システムの開発に向けて募集した期間限定のふるさと納税は、1カ月足らずで1000万円以上の寄付を受けた。同県は現在、使い道を医療や介護従事者向けと具体的に示した納税プランも提供中だ。地元の雇用維持につなげる。

 地元中小の製品を、返礼品の目玉のひとつに据えたのが川崎市。ふるさと納税による財源流出の大きい自治体の中では、常に全国上位だ。同市は巻き返しのため10月に返礼品を大幅に拡充し、市内音響メーカー「S`NEXT」のヘッドホンなどを新たに採用した。振動板制御に独自の技術を開発し、伸びやかで繊細な高域と自然で広がりのある低域の両立を実現したとしている。

 愛好家向けの高級品だけに、ただちに寄付金の大幅増につながるとはイメージしにくい。しかし川崎市の中小企業の技術の高さについては絶好のPRになるだろう。星氏は「中小企業は自治体と密接な情報交換でふるさと納税制度を経営に生かし、次のステップに向けた戦略を立てるべきだ」と指摘している。

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