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ハイブリッド車・介護…日本、非ハイテクで国際ルール主導を 国分俊史・多摩大大学院教授(ルール形成戦略研究所所長)に聞く(5)

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中国にはEV比率を低減させる選択肢も

 ――習近平・国家主席は国連へのビデオ演説で2060年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする脱炭素社会を目指すと表明しましたが、具体的な道筋は見えていません。

 「中国の産業政策として、2030年時点での新車販売量におけるEV比率を目標の50%にするというものがあります。しかしこの比率を切り下げ、ハイブリッド車を増やすという選択は、十分に有効でしょう。燃費の悪い中古車を戦略的に廃車し、製造にEV製造よりも人員を要するうえに環境性能に勝る超低燃費ガソリン車の新車需要を強制的に創出すれば、雇用と環境の両方にプラスを生み出せます」

 「中国がEV化を加速させているのは、自国が強みを持つ産業を育成し、石油消費量を削減して米国が支配するシーレーン依存を軽減させたい両にらみの狙いが考えられます。これがEV普及戦略の真意であれば、日本との協力を通じた超低燃費ガソリン車の生産大国化は中国にとって理に適う政策になるはずです」

介護、抗菌、スポーツ…広い非ハイテク分野

 ――デジタル革新が急ピッチで進む今日では、ハイブリッド車に関する技術も安全保障に関わるようなハイテク技術ではないのですね。

 「ハイブリッド車を含む超低燃費ガソリンエンジンの製造技術は、もはやハイテクではありません。トヨタは中国でハイブリッドに関する特許を開放しています。それでもハイブリッド車に必要とされる金属部品の擦り合わせ技術などは日本が断然リードしています。実は走行車両から出るCO2の約70%は中古車によるものです。中国が燃費の悪いガソリン中古車を段階的に削減し、超低燃費ガソリン車への移行を加速させるならば、世界の環境問題で大国としてのリーダーシップを発揮できることになります」

 「日本は技術的な支援をする一方、超低燃費ガソリン車に中古車を置き換えさせる環境ルール形成を世界規模で日中が進めれば、非ハイテク分野での巨大な市場創造につながります。また、こうした取り組みであれば、米国も議論への参画を働きかけることが可能です。これこそが、日中の連携による新たな秩序での世界市場の創造です」

 「非ハイテク分野は紙おむつやゴミ問題も含めた介護産業、新型コロナウイルス対応にもつながる抗菌産業、医療費抑制も視野に入れたスポーツ、健康食品産業など多岐にわたります。日本は非ハイテクを能動的に定義し、米中を巻き込んで社会的課題を解決するルール形成の議論でリーダーシップを発揮すべきでしょう。こうした姿勢が結果として日本の産業基盤、雇用を守り、日本の安全保障にプラスに働きます」

(聞き手は松本治人)

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