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1000年企業「村上水軍」 コロナ時代の中小経営の羅針盤 園尾隆司・事業再生研究機構理事に聞く

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「けん制」を忘れ、腐敗・倒産した流通企業も

 ――民事裁判官として40年間務め、現在は弁護士として企業救済を手掛ける立場からの現場経験で、村上水軍の哲学が効果的だったケースはありますか。

 「効果的に運用しているのは、伯方島に本拠を置く当主の会社である村上石油や、家老の会社である日鮮海運、因島の因島ガスや一条工務店など少なくありません。小規模な企業が集合体を作ると、好調不調の波が企業ごとに違い、浮き沈みに強くなります。さらに、けん制し合うため腐敗もしないのです。わが国には中小企業が多いので国際競争力に欠けるという見方は、日本の歴史と産業構造を理解していない意見でしょう」

 「これと対照的なのは、かつて民事再生事件で、取締役に対する損害賠償査定を担当した流通企業の例です。トップの決断が独断的になり、腐敗を招いて倒産に至りました。支配力は強いが、けん制が働かない組織となって弱体化するのです」

 「合併で業界トップの新会社を誕生させながら、旧組織の違いを引きずった対立で体力を失っていく例もあります。ある大企業に関与したとき、経営トップの地位を巡る旧A社と旧B社の派閥争いを間近に経験しました。合併当初こそシナジー効果とブランド力の強化を期待されながら、単純な一体化を図り、互いに他の組織の独立性を尊重しなかったがゆえの弱体化といえます」

 ――1000年に及ぶ村上水軍は歴史の表舞台には登場しても主役級ではありませんでした。

 「現在の今治市の海事企業群にも上場企業はありません。『足るを知る』も連綿と続いてきた村上水軍の経営手法のひとつでしょう。日鮮海運は排ガス対策に最大300億円を投じます。浮き沈みを予測した投資です。地元地域へのてこ入れも忘れていません。伯方島内にできる予定の市役所支所跡地には、リモート勤務ができるビジネス棟などを建設する計画です。地元からすぐに撤退する組織は、いずれ移転先の住民・消費者にも見捨てられるといった哲学も、長い歴史の中から得たものでしょう」

(聞き手は松本治人)

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