日経SDGsフォーラム シンポジウム

持続可能性への挑戦 コロナ下でも手緩めず(上)

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■企業講演
東京センチュリー 代表取締役社長 野上 誠氏

17ヵ国に低炭素技術

 当社は環境に配慮した循環型経済社会の実現への貢献を経営理念としている。2018年にサステナビリティ委員会を創設し、SDGsと事業の関連づけを行った。低炭素社会への貢献、技術革新に対応した新事業創出、社会インフラ整備への貢献、持続可能な資源利用への対応、人材力強化につながる職場環境整備を重要課題に据えている。

 2国間クレジット制度(JCM)は、途上国向けに優れた低炭素技術を導入して二酸化炭素(CO2)削減が実現された際、その一部を日本の排出削減量として計上できる仕組みでタイ、インドネシア等17カ国をパートナーとしている。京セラとの共同出資で太陽光発電事業も日本全国で展開。タイでも現地財閥と共に大規模太陽光発電事業を開始する。

 法人向けオートリースの日本カーソリューションズが開発した通信型ドライブレコーダー「ドライブドクター」を活用して危険運転等を抽出し、顧客企業の交通事故削減にも貢献している。温暖化ガス削減効果が高い電気自動車(EV)も導入。昨年、千葉県で発生した大規模停電時には、複数の社会福祉施設にEVを送り非常用電源として活用した。EV車のリースの引き合いも増加している。

 今後の課題は使用済み太陽光パネルの廃棄だ。今から再利用の道筋を立て、サーキュラーエコノミーを確立する必要がある。EV電池の二次利用も有効な方法が確立できていない。ビジネスパートナーと知恵を出し合いながら活動し、道をみいだしていきたい。

■対談
TCFDコンソーシアム会長 一橋大学CFO教育センター長
伊藤 邦雄 氏
南カリフォルニア大学 医学部 教授 メディシノバ 社長
岩城 裕一 氏
● モデレーター 日経ESG 発行人 酒井 耕一

市民と共創するデジタル化必要

 酒井 新型コロナウイルスの影響で社会や経営はどう変わるか。

 伊藤 台湾などコロナ対策で比較的成功した例では、高度なデジタル技術を使って個人の移動や体調という多様なデータを即時に収集、対応していた。今後はIT(情報技術)の高度利用で感染症の発生を抑え込めるようになるだろう。だがデジタル化が進むと市民権とぶつかり、監視資本主義に陥る可能性がある。SDGsの目標16「平和と公正をすべての人に」を推進し、今までの資本主義と民主主義を統合すれば、デジタル社会が負の側面をあらわにせずに済むのではないか。

 岩城 ITの高度利用という点では、医療現場の仕事内容がロボット技術の導入などで大きく変化している。創薬の分野でも、どんな化合物がどのような病気に使われ始めているのかなど、情報を取捨選択する能力が経営者に求められるようになった。今後はエコシステムを使いながらITの力を借り、リポジショニング(既存薬再開発)という形で新薬を開発することが大きく取り上げられるのではないかと思う。

 伊藤 データを蓄積してうまく活用することで我々の未来が開けるという側面もある。一方で、GAFAと呼ばれる4社がデータの独占などを理由に公聴会で追及されている現状がある。情報を集める側と提供する側の双方でお互い良い方向に情報を使っていく共創型デジタリズムが必要だ。監視資本主義ではなく、どういう用途で用いるのか、情報開示することが大切になる。

 酒井 今後SDGsに賛同する人が増えると、資本主義とも民主主義とも違う第3の新たな考え方が出てくるだろう。新しいベンチャー企業が自らの力で独占を打ち破ることが肝要だ。岩城先生は医薬系ベンチャー企業のCEOとして、ベンチャーのあり方についてどう考えるか。

 岩城 ベンチャーで企業を設立した場合、バイオでは製品や製品を作るための機械やシステムを作り、利益の上がる会社に育てて「あがり」となる。その中で様々なすばらしい会社が生まれてきたが、創薬ベンチャーの人々の原動力は「新薬を作って世界中の患者さんに提供したい」ということだ。ベンチャーは、そういう夢と共に働いていける面白味があるが、資本主義との折り合いをつけるうえでは、どこかで別の仕組みが必要になるのではないかと思う。

 伊藤 資本主義は確かにわれわれに繁栄をもたらしてくれたが、ある種の限界がある。資本主義に民主主義を持ち込んだのがSDGsではないかと思っている。GAFAと市民権が対立しているようでは、SDGsの目標17である「パートナーシップで目標の達成を」はかなえられない。SDGsがこれほど世界的な広がりを見せているのは、皆が暗黙のうちにそのことを感じ取っているからではないかと思う。データや気候変動の問題もそうだが、共有財産に対して自分の利益だけを考えて行動するといびつな社会が生まれるということをよく考えておく必要がある。

 岩城 コロナ禍で分かったことは、強い政府のリーダーシップが必要だということだ。しっかりした国立機関を作ってデータを集め、開示してくれといわれたら黒塗りではなくて全てを開示できるような、責任をもって自分の意見を言える人が政府と一緒になって動くことがコロナ禍への対策では重要だ。今こそ皆が健康で幸せになる社会をつくるために、医療問題でもワクチンの政策でも、政府と国民が協力して専門家を育てていくことが国の使命ではないか。これを契機に日本でも官民一体となって頑張っていってほしい。

(つづく)

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