日経SDGsフォーラム シンポジウム

持続可能性への挑戦 コロナ下でも手緩めず(上)

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 日本経済新聞社と日経BPは9月1日、国連の持続可能な開発目標(SDGs)達成へ企業の動きを支援する「日経SDGsフォーラム」を無観客で開催、会場となった東京・大手町の日経ホールの模様をライブ中継した。登壇した企業関係者や識者は口々に、ウィズコロナの時代も手を緩めず取り組みを加速すべきだと訴えた。

■基調講演
大和総研 理事長 中曽  宏 氏

グリーン化で経済再生

 新型コロナウイルスの感染拡大で、世界経済がリーマン・ショックを上回る大きな打撃を受けている。復興には設備投資や技術革新を通じた潜在成長率の上昇が必要だ。気候変動対策、すなわち経済のグリーン化は、ポストコロナの経済再生のエンジンとなり得る。

 経済成長と低炭素社会の両立は、非常にチャレンジングな課題だ。だが、そうした困難を克服していく中に新たな成長のエネルギーが生まれ、機運も高まっていくのではないか。日本の重要な課題の一つはサプライチェーンの再構築だ。多くの中小企業が介在する中、生産・流通の各段階で気候変動に配慮した多様な設備の導入が必要になる。

 経済のグリーン化には膨大な資金が必要だ。国際エネルギー機関(IEA)はパリ協定の目標達成のため、2040年までに世界全体で60兆~70兆ドルもの投資が必要だと試算した。それには金融資本市場で資金をうまく循環させる市場メカニズムが必要だ。

 具体的な資金調達手段の一つがグリーンボンドだ。ESG投資が拡大する現在、環境関連プロジェクトの資金を手当てするグリーンボンドの発行も増加傾向にある。

 炭素税・排出量取引などのカーボンプライシングの活用も選択肢の一つだろう。慶応大学の吉野直行名誉教授は再生可能エネルギーを対象とした「ふるさと投資」と炭素税を組み合わせた構想を提案している。地域のクリーンエネルギーへの移行を促進して地域循環共生圏の構築を目指すことは、地方創生にも寄与するだろう。

■基調講演
国際連合 事務次長・軍縮担当上級代表 中満  泉 氏

「人」中心のアプローチで

 国連が創設75周年に合わせ世界の人々を対象に実施したUN75のアンケートでは、日本からも数万人が参加した。半数以上が30歳以下の若者で、不平等や気候変動、平和と安全保障などの達成目標が望ましい方向に向かっていないことが明らかになった。アンケート結果や提出された提言は、コロナ危機の中から持続可能な回復を達成する上で有効な指針となる。

 新型コロナウイルスは、SDGsの17の全目標へ甚大な影響を及ぼした。平和構築の努力や和平プロセス、対話が中断され、これまでの成果を脅かしている。そのため国連は最近、開発システムの改革を行い、現場でより統合された支援の提供強化に努めた。

軍縮と開発の切り離せない関係は“We the peoples” を基盤とする国連憲章に一致する。脆弱な制度は国家の安全保障だけではなく、人間の安全保障をも脅かす。SDGsの目標16として軍縮目標が具体化されており、国連事務総長の軍縮アジェンダに沿って、大量破壊兵器による脅威の排除、通常兵器の厳しい規制、新しい技術の責任ある開発・利用の強化を求めている。

日本はSDGsの交渉プロセスに積極的に参加し「誰ひとり取り残さない」という2030アジェンダの中心にある「人間の安全保障」の概念を盛り込むことに成功した。実現を最優先し、政治的に最も高いレベルで取り組んだことは注目と称賛に値する。今後も日本の民間セクターと市民社会から人を中心とした包括的なアプローチが広がることを願っている。


■企業講演
野村アセットマネジメント CEO 兼 代表取締役社長
中川 順子 氏

社会・企業統治も焦点

 ESG(環境・社会・企業統治)投資は、SDGsの社会的課題解決を目指す取り組みに貢献し、投資の好循環を支えるうえで効果がある。資産運用会社の役割にはESGインテグレーション、企業との建設的対話、議決権行使の3つがある。コロナ禍でESG投資も変化し、環境中心から、社会やガバナンスにも焦点が当たるようになった。

 インパクト投資とは、投資を通じて社会に良い影響を与え、社会的にも良いリターンを獲得する投資手法で、近年急速に拡大している。当社は気候変動、自然資本、医療問題、人権の4つをESG課題とし、6つのインパクトゴールを設けた。例えば気候変動抑制のために地球温暖化を2度以下に抑えることをゴールに設定。次のステップでは、グローバルな再生可能エネルギー発電量を目標として、関連する企業を特定する。投資先企業それぞれが目指すべき数値目標を定め、最終ステップでは投資先企業との対話、経過のモニタリングも行う。

 インパクト投資ではインパクトゴールを定量的に測定し、投資結果の社会に与える影響を可視化している。たとえば先進国と途上国の医療問題改善をゴールに設定したファンドでは、貧困層1800万人へ感染症治療を提供する結果となった。

 多様なESG運用戦略の商品も開発している。運用会社としてはファンドを通じた社会的インパクトや投資資金の好循環の創出、事業会社としては資産形成を通じた社会課題の解決を目指し、豊かな社会実現へ貢献していきたい。

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