日経SDGsフォーラム

社会の課題解決 金融で貢献 コロナ禍 トップバンクの真価今こそ

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 1日に発足15周年を迎えた三菱UFJフィナンシャル・グループが動き出す。未曽有の新型コロナウイルスの感染拡大は「社会」の安定が、企業の成長を担保する前提であることを再認識させた。国連の持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みを通じて「社会」の課題解決に金融から貢献する。トップバンクの真価が試される。

環境債や投融資 ESG理念徹底

 「サステナブル・ファイナンス目標」。三菱UFJは昨春、邦銀で初めてとなる長期目標を公約した。環境(E)、社会(S)とガバナンス(G)の視点を重視する、持続可能な成長に貢献する金融取引を具体的に列挙。2030年度までに累計20兆円(うち環境分野8兆円)分を積み上げる。

 新目標の対象に含まれるのは「環境」なら風力・太陽光など再生可能エネルギープロジェクト向け融資や、環境関連に資金の使い道をしぼるグリーンボンド(環境債)の引き受け・販売。「社会」分野では地方創生やスタートアップ向け与信、病院や学校といったインフラ融資が当てはまる。初年度の実績は3兆7000億円と滑り出しは順調だ。

 一方、国内外問わず石炭火力発電所への新規融資は原則やめる。危険な労働や児童労働を内包しかねない事業への与信も「ガバナンス」を利かせて排除する。攻めと守り。両面からESG対応を強化すべく、チーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSuO)を新設して中枢役員を指名した。

 取引先が発行する環境債の組成・引き受け(累計2400億円)では、グループの三菱UFJモルガン・スタンレー証券を通じてすでに国内首位に立つ。だが三菱UFJは取り組みを一歩進める。環境債やソーシャルボンド(社会貢献債)を自ら発行し、投資家の投資意欲に応える取り組みだ。新型コロナウイルス対策などに資金を回す新社債を発行。9月には世界で初めて個人投資家にも販路を広げた。

 金融のあり方をめぐる状況は近年激変し、邦銀は悩みも抱える。例えば石炭火力発電向け融資だ。アジア新興国の成長持続には、安価なエネルギー源が不可欠なはずだがハードルは一気に高まった。おのずとここから先は知恵と先見性が問われる。

 その点で注目したい案件がある。三菱UFJが2月、東南アジアの配車サービス大手グラブ(Grab)に800億円の出資に踏み切ったのは「若き創業者たちの理念に共鳴した」(亀沢宏規社長)からだ。

 Grabが掲げるのは、スマホを駆使した配車にとどまらない雇用や収入の創出、そして銀行口座など金融サービスの提供という「ファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)」。三菱UFJは傘下の現地銀行とGrabを連携させ、アジアの生活水準の底上げと成長に力を貸す。

(編集委員 佐藤大和)

社会の安定確保、SDGsが1丁目1番地――

 今も苦境に立つ大企業や中小企業がたくさんあります。グループ結束して金融面からの支援に取り組んで参ります。
 社会の安定確保が企業の成長と発展を可能にする前提。その厳然とした事実をコロナ禍で改めて思い知りました。つまりSDGsへの取り組みこそが、今後の金融経営の「1丁目1番地」なのです。
 コロナ禍以前からESG、あるいはSDGsをめぐる議論は盛り上がっていました。もちろん銀行としても、環境や社会問題は昔から意識してきました。
 でもこれからは根っこから発想を変える必要がある。経営戦略の構築や日々のビジネスと、ESGやSDGsの理念を近づけ、一体化していきます。
 サービスの提供、雇用、納税、株式配当など、企業は本業を伸ばして社会貢献するのが第一の使命です。でもこれから我々は個々の戦略を策定するに際して「これは何のためにやるんだ?」と、まず社会課題への問題意識を最初に置く。その課題解決にこんな対策があるし、こういうサービスやビジネスができるのでは――。思考の順番を入れ替えます。
 本業ではカバーしきれない領域は、寄付などに力を入れていきます。
 医療従事者の方々にはただ頭が下がります。そしていま苦しんでいる学生が大勢いる。先日、あしなが育英会にお邪魔し、そのことを実感しました。これまでの0.5%を倍増して本業利益の1%を寄付に充てたい。前年度の業務純益は約1兆円なのでざっと100億円です。
 当社の未来を担う若手社員は、私の世代に比べて社会貢献への問題意識が格段に高い。「三菱UFJに加わって良かった」。彼ら、彼女らの誇りと期待に経営トップとして応えていく決意です。

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