日経SDGsフォーラム

自然の力で驚きの価値創造を 楽しい生活文化 SDGsから

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 なぜ、生活者はモノやサービスにお金を払うのか。それは支払った以上の価値を見いだしているからにほかならない。でないと手に取ってもくれない。そんな人間が抱く驚きや感動の価値を自然の力を生かして創り出すことができたら、どれほど素晴らしいことだろうか。地球に負荷をかけることなく、自然体で。それこそが自然の恵みの好循環を生むはずだ。

 お酒は「必潤品」 環境守ってこそ

 お酒や飲料の世界には四則演算がある。足したり、割ったり、掛け合わせたり。引くには飲食の意味もある。例えば、アサヒビールの主力商品「スーパードライ」。誕生して30年以上になるが、ビールではトップの座を維持している。味のキレ、シャープさ、喉越しなどを追求して行き着いたのがマイナス2度で提供する「エクストラコールド」という飲み方だ。人工の加工物を混ぜることなく、自然界にある氷点下という世界で実現。マイナスを製品にプラスすることでおいしさを際立たせた。

 生活者は「マイナス2度のビールが欲しい」とは言っていない。調査をしてもマイナス2度にニーズがあることをうかがい知ることはできないだろう。だからこそそこに驚きがあり、価値が生まれる。アサヒグループホールディングス(HD)が掲げるミッション「期待を超えるおいしさ、楽しい生活文化の創造」とは独創的な取り組みによって潜在ニーズを顕在化することを指す。

 アサヒグループHDの事業は自然の恵みによってもたらされている。ビールの原材料のホップ、麦、清涼飲料水のコーヒー豆、果実、茶葉、乳酸菌などをはじめとし、そして水も例外ではない。品質をさらに良くするには自然の恵みへの目配りが今まで以上に大切になる。自然の恵みを後世につないでいくために限りある自然を守る。そして製品化には自然の摂理の底に潜む芽を探す。本業そのものがSDGsの指針に組み込まれ、事業活動をさらに発展させ、伝統と革新から未来を創る。

 アサヒグループHDがそれほどまでに自然を意識するのは異常気象などによって農産物の収穫だけでなく、消費活動にも大きな影響を及ぼし、事業基盤の存続にも関わるからだ。生活に潤いや心身のリラックスを与えるお酒は必需品とは言わないが「必潤品」と小路明善社長兼最高経営責任者(CEO)は位置づけ、環境対策への取り組みを必需活動と呼んでいる。よりよい文化が継承されて、持続可能な社会を形成するためだ。

 コロナ禍の今、健康への意識は非常に高まっている。本業で培った発酵や乳酸菌の知識は生かされるはずだ。楽しい生活文化の発展にはSDGsが欠かせない。

(編集委員 田中陽)

 健全な商品は健全な社会から――

 アサヒグループHDには広島県庄原市と三次市の大小15カ所に点在する「アサヒの森」と呼ぶ森林があり、水源かん養、山地災害防止に努め、6月からは隣接する国有林も管理、造林することになりました。人間が生きるための大切な水を守り、さらに創っていきます。
 健全な社会から健全な商品が生まれます。自然環境を維持、そしてよくしていくことは健全な社会をつくる前提です。欧州やオーストラリアなど海外で事業をしていると社員や市民、NPO(非営利組織)の環境に対する意識が高く、普通の生活の中で環境保全を実践しています。海外の投資家などステークホルダーからはアサヒグループHDが異常気象、環境問題についてどのように向き合っているのか頻繁に聞かれるようになりました。
 こうしたことを背景に昨年、中央銀行など国際機関が策定した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に賛同を表明したほか、中期経営方針では役員に対して環境への取り組みの達成度合いについては外部から評価していただき、報酬に反映させるようにしました。環境に関する特許技術は可能な限り公開し、どなたも活用できるようにしたいです。物流、容器など環境分野では他社や自治体との協業にも積極的に進めます。
 経営とサスティナビリティ(持続可能性)の完全な統合を目指し、わたしを委員長とする「グローバルサステナビリティ委員会」を設置しESG(環境、社会、企業統治)を進化させていきます。

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