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米中冷戦下のESG投資、Gは経済安保が肝 コロナ禍で激変 国分俊史・多摩大大学院教授(ルール形成戦略研究所所長)に聞く(3)

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 ESG(環境・社会・企業統治)投資の存在感が高まっている。世界全体で30.7兆ドル(約3200兆円、2018年)の資金規模で、日本への割合はまだ7%にとどまる。ただ急速に伸びており、新型コロナウイルスの感染を受けた社会貢献に対する意識の高まりが、さらに企業への影響力を拡大させている。しかし、死角はないか。外資系企業の戦略設計や欧米の経済安全保障政策に精通する国分俊史・多摩大大学院教授(同大ルール形成戦略研究所所長)は「日本企業は軽視しがちなガバナンス(G)に目を向けるべきだ」と説く。一番のポイントは、経済安全保障の視点をどうESGに取り込むかだ。

「G」を軽視すれば長期的な投資は呼び込めない

 ――ESG投資に注目した企業の動きが活発化しています。味の素や花王、日本生命保険なども共同で「ESG情報開示研究会」を立ち上げました。

 「コロナ禍で社会や経済の不透明感が強まるなか、E・S(環境・社会)に対する企業の貢献度が注目されています。しかし肝心のG(企業統治)を見落とすと、健全で持続的な成長手段としてのESG投資は呼び込めないでしょう」

 ――新型コロナ下の企業統治には、国際政治にも注意を怠るべきでは無いということですね。

 「投資先の企業が、各国の安全保障政策に疎いために入札資格を取り消されたり、調達基準を満たさないことで取引先から排除されたりするのは、大きなリスクです。ESG投資資金を預かる機関投資家にとっては、Gに該当する企業の安全保障政策の理解度が重要な判断基準になります」

 ――しかし自由な経済活動を前提とし、合理的に分析して蓋然性の高い未来に向け意思決定や投資を行う企業にとっては、経済安保の世界は非合理に映るケースも少なくありません。

 「原則、経済安全保障政策は『国防は経済に優先する』という理念にもとづいて推進されます。企業からみれば、経済安保のルールに対する情報収集力や、情勢が不透明な段階で判断を下す、インテリジェンスに基づく意思決定能力も、評価対象になります。ESG投資を呼び込むためには、経済安保に対する取り組みを積極的にアピールする必要もあります」

 ――具体的に国際関係をみると、米中冷戦がますます深刻化しています。

 「中国の華為技術(ファーウエイ)に関するケースは、日本企業にも多くの教訓を与えています。長期投資を前提とするESG投資家にとって米中に対する姿勢は重要な判断基準でしょう。米国はファーウェイに対する輸出規制を、米国製部品の割合が25%を占めるという条件を2020年早々に10%にまで引き下げて適用対象を拡大したうえに、2020年9月15日からは米国製の製造装置だけでなくソフトウェアーを用いて回路設計をした半導体まで規制しました。このように経済安全保障に関するルールはドラスティックに変化し続けています」

 「新型コロナを機に対中姿勢がガラリ変わったのが、欧州です。欧州委員会が公開入札で、ファーウェイなど中国企業からの入札を制限するガイドラインの検討に着手しました。中国が世界保健機関(WHO)に働きかけウイルス発生の報告を遅らせたと認識したからです。国際機関という公共財を自己利益に使おうとする中国は、ルールの根幹を成す価値観の共有ができないと考えたからです」

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