アフターコロナの働き方

見かけ倒しのチームワーク 仕事分担し真のチームに 同志社大学政策学部教授 太田 肇

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仕事の「スキマ」を減らす分け方

 ただ一人ひとりの分担を決めると、分け方によっては仕事にスキマ(すきま)が生じる可能性がある。

 私は仕事の分け方として、欧米で一般的な「職務型」(ジョブ型)、プロフェッショナルのように専門で分ける「専門職型」、それに製品やプロジェクトを丸ごと受けもつ「自営型」の3つをあげている(拙著『「超」働き方改革』)。

 これらのうち、会社全体の業務を細分化した「職務型」のもとでは、新たな業務が発生したとき担当者が見つからず、スキマができやすい。そのため欧米企業では、スキマの発生を防げるよう組織を緻密に設計している。それでもスキマが発生し、多少の不都合が生じるのはやむをえないと、ある程度割り切っているところがある。

 その点、「専門職型」や「自営型」ではスキマが生じる可能性は比較的小さい。

 たとえば「専門職型」のもとでは新たなプロジェクトが生まれたとき、メンバーがそれぞれ専門家としての能力を生かしながら協力してプロジェクトを遂行する。病院に急患がやったときのチーム医療に近いイメージである。

 また「自営型」は各自がまとまった仕事を受けもっているので、スキマは発生しにくい。そのかわりに各自の仕事そのものが膨らむ場合があるし、まとまった仕事が入ってきたら、新たに人を雇うか、委託先を探すことになる。

「スキマ」への対処方法

 それでも一人ひとりに仕事を分ければ、自分の守備範囲以外の仕事をしなくなる恐れがないとはいえない。そこで、あらかじめ対策をとっている企業もある。

 都内を中心にグループ展開しているある美容院では、一人ひとりの美容師に完全歩合制を取り入れる一方で、共同の仕事には細かなインセンティブ制度で対処している。たとえば洗髪、床掃除、電話対応などは1回いくらと手当の金額が決められている。この制度を取り入れてから、だれかが進んでこれらの仕事をこなすようになり、職場が円滑に回っているという。

 仕事の見える化で対処している事業所もある。一人ひとりがその日に行った業務をエクセルに細かく入力し、職場の全員がそれを見られるようにしている。担当外の仕事をしたら、他のメンバーから評価されるわけであり、無形の報酬で報われているといえよう。

 また「就業時間の2割はチームの仕事に当てること」と約束事を定めている職場もある。

 心がけや精神論を唱えたり、あいまいな形で人事評価に反映させたりするより、このように有形無形のインセンティブやルールで明確に決めておくほうが、実効性の面でも、人間関係の面でも望ましい。

 いずれにしても、「分けたらチームワークが損なわれる」と決めつけるべきではなかろう。

太田肇(おおた・はじめ)
同志社大学政策学部・同大学院総合政策科学研究科教授。神戸大学大学院経営学研究科修了。経済学博士。専門は組織論、とくに「個人を生かす組織」について研究。元日本労務学会副会長。組織学会賞、経営科学文献賞、中小企業研究奨励賞本賞などを受賞。『「承認欲求」の呪縛』(新潮新書)、『「ネコ型」人間の時代』(平凡社新書)、『公務員革命』(ちくま新書)、『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)、『個人尊重の組織論』(中公新書)、近著に『「超」働き方改革』(ちくま新書)など著書多数。

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