アフターコロナの働き方

見かけ倒しのチームワーク 仕事分担し真のチームに 同志社大学政策学部教授 太田 肇

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 テレワークをうまく定着させるためには仕事を「分ける」こと、すなわち一人ひとりの分担を明確にすることが必要である。しかし、その弊害を懸念する声もある。前回は弱肉強食、格差拡大につながるのではないかという懸念を取りあげ、「分ける」のはむしろ弱者にとってプラスであり、理不尽な格差が生じるのを防げることを説明した。今回は、しばしば指摘される「分けるとチームワークに支障をきたすのではないか」という懸念を取りあげてみたい。

意外に弱い日本人の連帯感

 わが国では昔から、集団主義が連帯感やチームワークを生み、それが日本企業の強みになっている、と信じられている。しかし、果たしてそれは事実だろうか。

 興味深い調査結果がある。佐久間賢・中央大学大学院教授(当時)がかつて、日本企業と欧米企業のホワイトカラー(回答数計1406)に対して行った意識調査よると、「職場の仲間が仕事に行き詰まったり、困っていたりしたら助け合いますか?」「あなた自身のノウハウ情報を仲間に進んで教えますか?」「いまの職場では同僚を信頼できますか?」という各質問に対してYESと答えた人の割合は、日本が欧米より顕著に低い(佐久間賢『問題解決型リーダーシップ』講談社、2003年)。

 意外に思われるかもしれないが、日本企業と欧米企業の両方で働いた経験のあるマネジャーたちに聞いてみても、人間関係やチームワークはむしろ欧米企業のほうがよいと答える人が多い。

 たしかに集団主義的な執務体制のもとではメンバーの規律がとれ、「一丸」となって働いているように見える。しかし、そこにある連帯感やチームワークはどちらかというと受け身であり、自発的だとはいいがたい。

 メンバーの間からはしばしばつぎのような本音が聞かれる。「上司が見ていないところで要領よくサボる人がいる」。「いつも私がミスした人の尻ぬぐいをさせられている」等々。また子育て中の社員からは、「早く帰ると同僚に迷惑をかけるので気が引ける」とか、「上司や仲間がよい顔をしないので休みにくい」といった声も聞こえてくる。

 上記の意識調査にあらわれた仲間に対する冷たい態度は、このような独特の不公平感や、運命共同体的な息苦しさと関係しているのかもしれない。

分担すれば協力し合う

 いっぽう外から見てもチームワークがよさそうな職場は、たいてい一人ひとりの分担がはっきりしている。分担が決まっていると、「自分の仕事」という意識が強くなり、自分の仕事をこなすために他人の協力を得ようとする。いっぽうで相手の仕事を手伝ってあげれば、それが相手の利益になるので感謝される。そのためお互いに助け合ったり、先輩が後輩に進んで仕事を教えたりするようになる。それは運命共同体型チームワークとは異質な、自発的チームワークである。

 定型的な業務や人海戦術的な仕事には、運命共同体的なチームワークが通用した。しかし、それらがITなどに取って代わられ、一人ひとりの個性や創造性を生かすことが大切な時代に突入し、自発的なチームワークが求められるようになったのだ。

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