BizGateリポート/営業

中国 新常態の旅行はオンラインで ライブコマースとも連動 JTB総合研究所主任研究員 郭玲玲

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 新型コロナウイルスの感染拡大でリアルの観光需要の減少が続く中、ウェブ上で観光を疑似体験するオンライン観光への関心が高まっている。コロナ禍収束を宣言した中国では観光地からのライブ配信やライブコマースとの組み合わせなど新たな試みが続々登場し、消費者の支持を集めている。オンライン観光はニューノーマル(新常態)時代の新たな旅行の1つとして定着するのか。中国の旅行市場に詳しい、JTB総合研究所の郭玲玲主任研究員に寄稿してもらった。

◇  ◇

 新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)によるパンデミックが長期化し、世界の観光産業は大きな試練に直面している。一方で、今回のパンデミックがきっかけで、オンラインを通じた交流が一気に加速し、オンライン観光という新しい観光スタイルが広がっている。

 中国では、他国より一足先に日常を取り戻し、現在、国内旅行が回復に向かっているが、新型コロナの緊急事態宣言(中国では「重大突発公共衛生事件一級響応」という。省ごとに発出)が最初に発出された1月頃から、旅行をあきらめた人が疑似体験で旅行を楽しむオンライン観光が広がっていった。以下の文では比較的早くに広がった中国の動きを通じ、オンライン観光について考えてみる。

1.コロナ禍で広がった中国のオンライン観光

 中国旅游研究院のデータによると、中国の年間の延べ国内旅行者数は、2017年に50億人を超え、一人当たりの年間平均旅行回数は約3.6回だった。海外への延べ旅行者数は2019年に1.5億人に上り、中国人にとって旅行はもはや日常生活と切り離せない存在と言える。ところが今年は、中国人の移動が最もピークとなる春節の時期に新型コロナが拡大し、外出自粛となってしまった。そんな中で、普段混雑している人気の観光地を、家でのんびりくつろぎながら時間や交通費をかけずに楽しめるオンライン観光が広がっていった。

 オンライン観光のことを、中国では、「雲旅游(クラウド上の旅行という意味)」と呼ぶ。インターネットを経由し、写真や音声、映像などを利用する観光は、全てオンライン観光に分類される。代表的なものは中国の大手OTA(オンライン・トラベル・エージェント)の「トリップドットコム」が、2月下旬から3月15日まで、中国国内外の約3000の観光地の画像に、7000以上の音声説明をつけ、サイト上に無料で公開したものだ。中国の旅行会社は新型コロナ拡大により大きく揺れたが、外出自粛となっても新規旅行マーケットの開拓を怠ることはなかった。その後まもなく、「トリップドットコム」をはじめ観光事業者はリアルタイムで疑似体験の旅行に参加できる「ライブ配信観光」も始めた。これも「雲旅游」の範疇(はんちゅう)になるが、広がった背景には、中国では以前からネットショッピングでライブ配信が利用されていたことがあるだろう。

 中国のオンライン観光を、ライブ配信と非ライブ配信に分けると図1のようになり、機能にも違いがある。現在、その「ライブ配信観光」が、中国では新たな観光需要として注目されており、オンライン観光を面白いものにしている。

図1 中国の「雲旅游」の分類

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。