ブロックチェーン・サミット2020特集

金融業界、フィンテックだけじゃない ブロックチェーンが支える産業のミライ

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 暗号資産ビットコインを支える基幹技術として世に出たブロックチェーン(分散型台帳)が、金融業界で期待されるフィンテックの世界から、他の産業での活用に使われ出している。「BG2C_FINSUMBB(ブロックチェーン・サミット)」(8月24、25日開催)でのパネル討論「ブロックチェーン Fintechの先」では、商取引、保険請求、自治体支援といった新しい取り組みに挑む3社の実例が紹介。米企業のR3社のブロックチェーン基盤「Corda(コルダ)」の仕組みがその技術を支えている。

■豊田通商システムズ 商取引のコスト減と迅速化

 豊田通商システムズが進めているのが商取引のデジタル化における活用だ。その第1弾として「2021年1月に電子契約サービスを開始する準備を進めている」と纐纈晃稔ブロックチェーンビジネス担当主幹は話す。電子契約から始める理由としては、(1)印紙や郵送代が不要とコスト減につながること、(2)契約締結の高速化、(3)新型コロナウイルス問題のなか、リモートワークの推進にもつながる――と短期的に効果を目に見える形で示すことができる点を挙げた。

 いくつかのブロックチェーンを試したなかでCordaを選んだ理由については、すべてのネットワーク参加者がデータを共有するブロックチェーンでは、情報の中身は見られなくても、誰と誰が取引しているのかなどの情報は、取引に関係のない会社にも見えてしまう。その点、Cordaでは取引主体の会社以外にデータが拡散しない点を評価したという。

 電子契約サービスに続くものとして、見積もり・請求書発行、受発注サービス、最終的にはスマートコントラクトを使った精算サービスまでを見据える。システムが実現すると「サプライチェーンにおけるトレーサビリティが自然にできてくる」と纐纈主幹は期待する。ただ、課題として初期のインフラ投資コストがかさむ点を指摘。「経営者が効果を納得して導入する必要があるだろう」と語る。

■住友生命保険 保険の給付金請求を自動化

 住友生命保険は、今年2月から3月にかけて実施した、生命保険における給付金自動請求システムの実証実験について説明した。複数の医療機関と生命保険会社の間をブロックチェーン上で結び、給付金請求の事前同意書や医療情報などを共有。スマートコントラクトの仕組みを使い、自動的に給付金支払いができる。つまり、これにより、患者自身が請求書類や診断書を取り寄せるなどの手間が省ける仕組みだ。説明にあたった同社デジタルイノベーション推進室の奥山裕司氏は「高齢化社会が進むなか、認知症患者や要介護者の増大により、利便性の高い保険請求手続きが不可欠になっている」と述べた。

 このシステムでもやはり重要となるのは医療情報の扱いだ。技術部門を担当する同推進室の阿部智英氏は「こうした情報は限定的なデータの開示と共有が必要とされるため、当事者間だけの共有と合意が可能なことからCordaを選択した」という。課題としては、データ共有する相手が増えるほど、処理時間がかかるため、当初の設計段階から、どの情報をどの範囲まで共有するのかをしっかり決めておく必要がある点、そして最初のデータ入力時の不整合や不正については排除できない点などをあげた。

 今回は3病院と3生保を結ぶ実験となったが、将来は「病院、生保に加え、他業者や公的機関、契約者やその家族までを含み、請求以外のこれまで提供できていないサービスにまで広げるよう検討していきたい」と阿部氏は述べた。

EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング 自治体と金融機関を結び給付金請求

 新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた、ブロックチェーン技術による自治体支援の仕組みについて説明したのがEYアドバイザリー・アンド・コンサルティングの村上陽子シニアマネージャーだ。コロナ禍を受け、海外でも給付金支給は実施している。米国では定型業務を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用して、新型コロナウイルスに関連する給付金プログラムPPP(給与保護プログラム)を実施、申請から約1週間で申請者の口座へ着金することを実現できている。一方で、日本は申請者の本人確認情報チェックが難しくデジタル化が進んでいないという問題があった。

 そこで、目をつけたのが、自治体の持つ給付対象者の情報と、対象者が口座を持っている金融機関をブロックチェーンで結ぶことだった。金融機関はすでに本人確認およびその口座が本人名義であることの確認情報をもっている。そこに自治体のデータを組み合わせることで、給付対象者が申請をした時点で、その対象者の本人確認を行い、給付前であれば給付金を支払い、その後で金融機関から自治体に支払額の請求をするというものだ。

 EYグループは独自のブロックチェーン基盤も持っているが、当事者間だけでデータの共有ができることから、このシステムではCordaの採用を協議している。プロジェクトが順調に進めば、「この冬にも関東の自治体および金融機関を結んで運用開始できる見通し」(村上シニアマネージャー)という。

 3社の説明を受け、モデレータ-を務めたSBI R3 Japanの山田宗俊ビジネス開発部長は、具体的なブロックチェーン技術の活用について、複数のプレーヤー間における高セキュリティ、高可用性という点でブロックチェーンが非常に期待できる技術であると言及。そのうえで、「解決できる問題もあるが、初期のデータ入力の不正に対応できないなど、決して100%ではないという点も実例を通じてわかった」とコメントした。最後に実例を通じ、「最終的に何を目的とするのかを明確にしたうえで、現場としては、まず効果のでやすいところから着手していく取り組みも特徴的だった」と感想を述べた。

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