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「パワハラ」と部下が言わない叱り方 叱れない上司の心構え 戸田久実・日本アンガーマネジメント協会理事に聞く(下)

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 「それってパワハラですよね? 」――。部下からこんな返し技を食らった経験はないだろうか。パワーハラスメント防止法(改正労働施策総合推進法)が6月にスタートして3カ月。未だ日本の職場でパワハラ被害が続くのと同時に、叱ることのできない上司の悩みも解決されていない。パワハラにならない正しい叱り方を日本アンガーマネジメント協会理事の戸田久実アドット・コミュニケーション代表に聞いた。

「パワハラ」を安易に使う部下への切り返し方

 ――叱ること自体を良くないと思っている経営者・管理職が増えています。上司が部下を指導し、時には叱ることも職務のひとつのはずなのですが。

 「叱らないデメリットもあります。叱るメリットには(1)行動の改善(2)相手の成長(3)本気度が伝わる――があり、デメリットには(1)人間関係の悪化(2)相手の萎縮(3)パワハラの疑い――が考えられます。叱ることが悪いのではなく、叱り方が重要です。メリットの効果を生じさせ、デメリットを回避するのがポイントです」

――ただ「パワハラです」と言い返されることを恐れて黙ってしまう上司はどの職場にもいるようです。

 「パワハラを言い立てる部下は、案外どこからどこまでパワハラなのか分かっていない人が少なくありません。『これは強制ではなく、お願いしたいと言っている段階だから、パワハラにはならないよ』などと諭すのが効果的です」

 「冷静に対応することが重要です。相手に巻き込まれて『こんなのがパワハラなわけないじゃないか! 』と感情的に言ってしまった時点でアウトになります。パワハラという言葉を安易に使う部下に、こちらも過剰反応しないことが肝心です」

 ――パワハラにならない叱責の要点はどこにありますか。

 「相手が理解できるように叱ることがポイントです。(1)どうすればいいのかを具体的に伝える(2)なぜ改善しなければならないのかを説明する(3)相手を信じて向き合う――を念頭に置いて指導すればパワハラの恐れはありません。『ちゃんと』『しっかり』『早めに』といった抽象的な表現は、相手の理解がずれて行く可能性が大です。なぜ改善して欲しいのかの理由で『こんなの常識』『上がうるさいから』もNGです。大前提として、信頼関係という土台の上に叱らないと何を言ってもムダになってしまいます」

 「思い込みや決めつけで叱るのは、不信感を与えます。『甘く見ていたに違いない! 』『やる気がないんじゃないか! 』と主観で決めつけることや、『いつも』しない、『必ず』言い訳、『絶対に』忘れるといった言葉もNGです。(1)人格攻撃(2)叱る基準・論点がブレる(3)人前で叱る(4)過去を引っ張り出す――が論外なのは言うまでもありません」

 「最近増えているのが激しい感情はぶつけずに、正論や詰問で相手を追い詰めていくパターンです。『社会人として基本が守れていない』『この仕事をする資格がない』と逃げ道をふさぐような言い方や、『なぜしなかった? 』と繰り返し問いただしたりすると、相手は思考停止に陥り、その場逃れの言い訳に逃げ込むだけになります。正論で相手を論破し、相手が悪いということを証明するのが、本来のゴールではないはずです」

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