日経SDGsフォーラム

経営基盤 SDGsで盤石に できること 社員一人ひとりが模索 大和証券グループ 「ハイブリッド型」で新たな価値創造

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 SDGs(持続可能な開発目標)を経営の中核テーマにする企業が増えている。大和証券グループはグリーンボンドの引き受け、販売など本業だけでなく、再生可能エネルギー、農業などこれまで縁遠かった分野でも、SDGsに関連したビジネスを手掛けている。同社でSDGs推進の中心となる3人に当面の目標や課題を聞いた。

 大和証券グループは現在、10年後のあるべき姿を追求する「2030Vision」と、来年度からの中期経営計画を策定中だ。いずれの計画でも中核となるのがSDGsだ。SDGs担当の田代桂子副社長は「マーケットの変動に左右されない盤石な経営基盤を作るために、SDGsへの取り組みは不可欠」と語る。伝統的なマーケットビジネスとは違うSDGs関連など新しいビジネスを、大和ではハイブリッド型ビジネスと呼んでいる。経常利益に占める同ビジネスの比率を、2023年度までに25%、28年度までに35%にするのが目標だ。

 実際、大和では様々なSDGs関連ビジネスが稼働している。再生可能エネルギーの分野では、国内外で太陽光発電、バイオマス発電に合計で10案件以上、取り組んでいる。この分野への投資残高を現在の600億円弱から将来、3000億円まで拡大する。農業にも参画しており、熊本県でのベビーリーフ生産、山形県、大分県でのトマト生産のビジネスに着手している。人生100年時代を踏まえて、介護施設の経営にも乗り出した。同社SDGs推進室長の川那部留理子氏は「SDGsビジネスにしっかり取り組まないと、市場や社会での評価が下がり、それが会社の収益力にも影響する」と分析する。川那部氏は「社員からこんなSDGsのビジネスをやりたいという提案が、社長直通メールを通じて、どんどん上がるようになってきた」と、長年のSDGs研修が実を結んできた手応えを感じている。

 本業でもSDGs関連は好調だ。これまでも独壇場だったグリーンボンドなどSDGs債では、個人向け販売額の48%を大和が占めている。デット・キャピタルマーケット部の副部長でSDGs債を担当する清水一滴氏は「(新型コロナウイルス対策の資金を確保するための)コロナ債でも、国内第1号は大和が手掛けたい」と意欲を見せる。グリーンボンドの定義も広がっており、台風や豪雨による堤防決壊の修復費用などを確保するための、地方自治体の起債も増えそうだ。「こうした取り組みはSDGsで規定する気候変動への取り組みに合致する」(清水氏)。

 コロナ対策では、音楽業界を支援する「♯音楽を止めるな」プロジェクトへ参画したり、大和グループの不動産投資信託(REIT)が保有するホテルを医療従事者向けに提供したりしている。田代氏は「コロナを契機に社員が、自分にできるSDGsは何か、これまで以上に考えるようになった」と語る。10年後、20年後を見据え、17あるSDGsの目標の中で、会社は何ができるのか。一人ひとりの社員が常に意識するようになれば、関連ビジネスのタネは尽きない。

■社会貢献は収益源になる――

 大和証券はSDGsへの取り組みが早かった。背景には鈴木茂晴氏が社長だった時代から始まった「女性が働きやすい会社」を実現するためなど、様々な試みがある。例えば育児休暇のほか、男性社員向けに育児サポート休暇制度を設けた。子供と一緒に遊園地に行くなどの申請は認めず、妻が美容院に行く間、子供を見ているなど、子育てする妻が助かるような申請でないと認めない。この3年間、育児サポート休暇の取得率は100%だ。ほかにも子供の学校行事に休みを取る「キッズセレモニー休暇」など、妻に任せきりだった育児に、男性社員の参加を促す仕組みが増えている。

 資本市場が格差を生む要因の1つならば、資本市場を活用し、その格差を少しでも埋める――。これが証券会社によるSDGsへの取り組みの原点だろう。いわば社会貢献的な色彩が強かったが、田代副社長は「SDGsへの取り組みはビジネスとして成立しないと意味がない」と断言する。社会貢献の位置づけでは、SDGsは会社にとってコストのままだ。これが収益源になれば、取り組みは継続できる。まさに持続的成長であり、大和がSDGsビジネスにこだわる大きな理由だ。

 日本の上場企業にも海外株主が増え、SDGsへの取り組みを問われる機会が増えている。こうした質問をかわすためだけの「取りあえずSDGs」や「なんちゃってSDGs」は長く続かない。それがビジネスとして成り立ち、新しい収益基盤に育つなら理想的だ。もちろん簡単ではないし、大和の試みも道半ばだが、将来、そんな会社が日本に増えればいい。今回のコロナ拡大や豪雨被害など突発的な事象にも早く対応でき、実効性ある企業発の対策が出てくるようになると思う。

(編集委員 鈴木亮)

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