アフターコロナの働き方

テレワークで女性の正社員化加速 男性の働き方も変える 同志社大学政策学部教授 太田 肇

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 政府は2020年までに指導的地位に就く女性の比率を30%まで引き上げるという目標を掲げていたが、2018年時点において管理的職業従事者になかで女性が占める比率は15%で、目標の半分にしか達しない。この現実を踏まえ、政府は目標達成を断念し、目標を先送りする方針を示した。

 わが国が「女性活用後進国」である現状はとても残念だ。女性が活躍する社会は女性自身にとって幸せなばかりでなく、企業や日本経済にとってもプラスだからである。たとえば女性活躍に積極的な企業は、財務面でも優れた実績をあげているというデータがある。また女性活躍推進は、長期的な人材不足を解消するうえでも重要だ。

再就職女性の大半が非正規という現実

 多くの女性にとって出産や子育ての時期に当たる20代、30代で女性の就業率が低下する「M字カーブ」。かつては欧米先進国でもみられたものの、現在は海外でほとんど見られなくなった。そして、わが国でもM字はだんだんとその形状が薄れてきている。子育てをしながら働き続けるのが普通になってきたのだ。

 しかし、重要なのは雇用の質である。M字の右側、すなわち出産後に再就職する際の雇用形態は、パートタイムなど非正規が大半を占めている。周知のとおり正規(正社員)と非正規(非正社員)とでは給与水準のほか、昇進や仕事内容、福利厚生などに顕著な格差が存在する。したがって不合理な格差を解消し、人材の有効活用を図るため、正規雇用で働く女性を増やしていくことが課題になる。

テレワークなら正社員として働き続けられる

 その実現を図るうえで、新型コロナウィルス対策としてテレワークが広がったいまは絶好のチャンスである。

 これまで出産後の女性が正社員として働くことを諦めてきた主な理由は、仕事と子育てとの両立が困難なことである。しかしテレワークなら通勤時間がかからないうえ、仕事中でも子どものそばにいられるし、手が空いたときには世話をすることもできる。たとえ全面的に在宅で働くことが難しいとしても、夫婦で順番に在宅勤務したり、フレックスタイムを利用したりすれば、保育園などへの送迎も容易になる。

 いずれにしても、テレワークの普及によって女性が正社員として働きやすくなることは間違いない。

不合理な「ガラスの天井」も消える?

 女性にとっての追い風はほかにもある。女性が男性と同じように働いても昇進を阻まれる現象は「ガラスの天井」と呼ばれる。とくに日本企業特有の共同体型組織では、付き合いや人間関係、組織への忠誠心といった不明瞭な要因が、あいまいな評価制度をとおして女性に不利な状況をつくりだしたと考えられる。

 ところがテレワークのもとでは、一人ひとりの能力や貢献度が客観的に見えるようになり、評価も必然的にアウトプット志向になる。そうすると、これまでのようにあいまいな理由で不利な扱いを受けるリスクは減るだろう。極論すれば、テレワークのもとでは男性か女性かを意識する理由さえなくなるはずだ。

女性の正社員化で変わる日本型雇用システム

 しかも女性の活躍は女性だけの変化にとどまらない。

 かりに女性が出産後も正社員として働き続けるのが当たり前になれば、雇用システム、あるいは社会システム全体が大きく変容するきっかけになるかもしれない。

 日本型雇用システムは男性が正社員として働き、専業主婦の妻と子を養うという戦後の「専業主婦モデル」を引きずってきた。一家の大黒柱である男性には、家族の生活を支えるため、何をおいても雇用の継続と安定して上がり続ける給料が必要だった。それと引き換えに長時間労働や一方的な人事異動、転勤命令を受け入れてきたのである。

 ところが男女がともに正社員として働き続けるようになると、男性は一家の生計を担う負担から解放される。

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