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「統合報告書」から読み解くSDGsに貢献する生き残り企業 ビジネスパーソンが統合報告書を読み解く5つのポイント

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 例えば、社会の動き(地域社会が抱える問題や、最近であればコロナ影響も含まれる)が自社にどのような影響を及ぼそうとしているのか(ビジネスチャンスとなるのか、あるいはリスク要因なのか)についての説明や、社会のなかでの自社の立ち位置、自社のビジネスの特徴や優位性についての説明が十分になされていることは重要です。さらにそれが「経営者自身、もしくは自社のビジネスを中心に据えるポジティブな文脈」で語られていれば、「統合思考」が経営トップに根付いていることを強く感じます。

 逆に、「世の中でESGやSDGsが注目されているから、あるいは行政からの要請があるから、それを受けて自社も頑張って取り組んでいる」とか「こういう社会課題が深刻化しているので、それを受けて自社も頑張ってそれに取り組んでいる」といった、「社会の動きを中心に据える、受け身の文脈」で語られているトップ・メッセージからは、「統合思考」に対するトップの意識の低さが透けて見えます。それが、良く知られる立派な会社であればあるほど、ひょっとすると経営トップの思いを反映することなく事務方が勝手に書いたメッセージなのではないかという疑いの目も向けたくなります。

[ポイント4] 「持続的成長」を見極める
⇒稼ぐ力や成長戦略が、リスク要因込みで語られているか?

 企業がESG/SDGsに力を入れようとする理由には、大きく2つに分かれるように思います。1つは、自社の持続可能性を説得するために、「外部から見えにくい魅力」をESG/SDGsを使って説明しようとしている企業、そしてもう1つは、(かなり言葉は悪いですが)自社の競争力の後退、業績の不振から目をそらすために「非財務の価値」を強調しようとする企業です。後者の企業の統合報告書では、多くの場合、中長期の成長シナリオが明確な形で示されていません。業績の悪化について必要以上に説明をしたくないからです。短期的な業績悪化、収益性の低下が見られるのであれば、その理由と今後の対応について、企業は任意の開示物である統合報告書を使って真摯に説明すべきです。そうした姿勢が読み取れる統合報告書を発行する企業であれば、今後、仮に何らかの理由で短期業績が悪化するようなことがあっても、企業経営への信頼は揺るぎにくいものだと思います。

 また前者の企業であっても、ESG/SDGsの取り組みの説明のみに過度に偏ることなく、「成長戦略」を語るセクションをしっかり設け、自社の中長期の成長シナリオ、そのシナリオを阻むリスクの存在をひっくるめて説明していることを確認すべきです。

[ポイント5] 「社会的な存在意義」を見極める
⇒事業を通じた社会・環境貢献が、説得力のある形で論じられているか?

 本当の意味で「長い目で見て、社会や環境のためになるビジネス」「社会や環境に与えるネガティブなインパクトの抑制に配慮したビジネス」を展開している企業であれば、その企業の将来には期待が持てます。ただ、それを企業の外側から見て判断するのは容易ではありません。

 例えば、医療サービスを提供する企業や社会インフラを担う企業であれば、社会に役立つ企業であることは一目瞭然なのですが、レジャー関連企業や素材メーカーのように、事業内容やビジネスモデルを深く理解しないと「社会にどのような価値をもたらしている会社か」がわからない会社も数多く存在します。こうした会社も最近では統合報告書を使ってESG経営に関する詳細な説明をしていたり、SDGsの諸目標と自社の事業とをヒモづけた説明をしっかりしていたりします。統合報告書においてESGや「SDGsと事業とのヒモづけ」が腹落ちするレベルで説明されていて、かつそのビジネスに将来性があることが読み取れるのであれば、その企業は持続可能な事業を展開している会社として評価できるでしょう。

 また、お酒やタバコの会社や石油メジャー、プラスチックのメーカーのような、社会や環境にネガティブなインパクトを与える印象を与えがちな企業も多く存在します。こうした企業であっても、自社の事業が持つネガティブな要素を将来に向けて改善・解消していこうとしている、あるいは別次元で社会・環境に大きく貢献し、社会に及ぼすネガティブなインパクトをオフセット(相殺)しようとしている企業もたくさんあります。自社のネガティブ要因に対して真摯に向き合い、自社の存在意義に対する理解を得ようとしていることが統合報告書から読み取れる企業は、持続可能な企業である可能性が高いと感じます。

 withコロナの時代を迎える今、これらの視点で統合報告書を読み込み、「頼れる企業」を自分の目で確かめてみてはいかがでしょうか?

(日経BPコンサルティング SDGsデザインセンター シニアコンサルタント 山内由紀夫)

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