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「統合報告書」から読み解くSDGsに貢献する生き残り企業 ビジネスパーソンが統合報告書を読み解く5つのポイント

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[ポイント1] 「企業風土」を見極める
⇒その会社が掲げる「企業理念」はホンモノか? 「変化を受け入れる企業文化」があるか?

 企業が発行する統合報告書の多くには「企業理念」が記載されていて、自分たちはそれを大切にしていると書かれています。そもそもそこにウソがないかを、あえて疑いの目をもって見ていくと、見えてくるものがあります。

 まず、「社名を変えればどこの会社でも通用するような一般的な言葉」で企業理念がつづられている企業には、それを本当に経営がよりどころにしているのか、また従業員の価値判断や行動レベルにまで落とし込まれているのかを疑いたくなってしまいます。また基本的な企業理念に加えて、従業員が日々、よりどころにしやすい形で表現されている「行動指針」が統合報告書に示されている企業には好感が持てます。行動指針がどのような場面でどう使われているかという点までの説明がなくても、まずはそれがあるだけで好感が持てます。さらに腹落ち感があるのは、「企業理念」と「行動指針」が見事に連動している会社です。こうした企業には信頼と親しみを感じます。

 逆に「行動指針」が自社ならではの「企業理念」とうまくつながっていない企業、「行動指針」が示されていない企業は、「経営のよりどころ」としての企業理念が機能していないのではないかと疑ってしまいます。

 企業のコロナ対応では、例えばホテルチェーンによる軽症者や無症状の方の受け入れや、電機メーカーによるマスクの製造・販売などを行った企業に対して多くの人々が共感しました。事業環境の変化を素早く察知したうえで、社会の全体最適を考え、柔軟かつタイムリーな対応をする企業であるという社会的な評価を受けたのです。このような「変化をいち早く感じとり、受け入れる企業文化」があるかどうかは、統合報告書の「自社の歴史を語るページ」などから確認できることもあります。

[ポイント2] 「ヒトの価値」への認識を見極める
⇒社員を大切に思い、育てようとしているか? 会社の外側の人たちの人権までしっかり考えているか?

 コロナの時代を迎え、新しいルールや価値観のなかで自らを奮い立たせて職務を全うする社員の存在を認め、重んじる姿勢は、統合報告書の事業特集などに登場する現場スタッフなどから読み取ることができます。こうした自社の人財に関する記事を数多く掲載する企業には、価値ある人財を評価し、活用することで企業価値を高めようとする強い意志が感じられます。

 またコロナショックを受けて多くの企業が働き方改革を進めていますが、統合報告書から読み取るべきポイントは、それがコロナショックの前からしっかり進められてきたことなのかという点です。常日ごろから社員の働きやすさ、生産性の向上にしっかりと向き合い、主体的に取り組んできた企業であれば、統合報告書においても「これまでの成果が実を結び、この非常事態にも適切に対応することができた」という文脈で説明されているはずです。

 またダイバーシティについても、障がい者雇用や(性的マイノリティーの)LGBT対応を含めた労働環境の整備、女性の活躍や女性管理職の増加といった個々の取り組みに対する説明にとどまらず、自社のダイバーシティの取り組みが従業員の生産性向上やイノベーションの創出に結びつくことを説明している統合報告書からは、地に足の着いたサステナブルな企業であることを読み取ることができます。

最近は人権の尊重についても多くの統合報告書で語られるようになりましたが、社員の健康・安全の維持や社会生活にかかる権利に加え、取引先やその先の生産者の人権にまで配慮し、改善に努めていることが説明されているかをチェックします。更にそのことが、自社にとっての「不都合な真実」を含めて真摯に説明されていれば、その企業に対する信頼は格段に高まります。

[ポイント3] 「経営者の優秀性・正しい目」を見極める
⇒経営トップの考え方が「経済利益至上主義」に陥っていないか? 上辺だけで、環境・社会・企業統治を重視する「ESG」を語っていないか?

 企業の進む道を決めるのは言うまでもなく経営トップです。持続的な成長のできる企業かどうかを判断するために、経営のトップに「統合思考」が備わっているかを見極める必要があります。統合思考とは、財務的な価値のみならず、価値ある社員の存在やお客様からの信頼といった「財務に表れていない価値」を増やしていくことも勘案して経営していこうとする考え方を指します。その際の有力な判断材料となるのが、統合報告書の「トップ・メッセージ」です。

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